ワイン会~ロマネコンティ1978~


ほぼ月イチ開催で安定してきた我が家でワインを飲む会。当会に参加したことがきっかけとなってワインスクールに通い始めたメンバーがいたり、グラスをワインによって使い分け厨を輩出したりと、私は日本の飲食文化に多大な貢献をしております。
今回は番長が、ワインを一切知らない40代半ばの佐々木という方をお連れ下さいました。立派な企業の立派な役職の方であり、飲み屋で身元がバレるのが嫌で「佐々木」と源氏名を名乗るようにしていたら、いつのまにか通称になったという佐々木です。
「佐々木だ。麻布にワイン飲みに行くぞって誘われたから、ビビって現金たっぷりおろしてきたぞ。ホームパーティで助かりました」と愛すべき自己紹介。
「ひとり1本以上のワイン」がお決まりのルールなのですが、番長の1本はいつだってマグナム。「今度はジェロボアム(ボトル4本分の大きさ)持ってくるね」とウインク。注げるのか、というかそもそも持ってこれるのか。
アミューズはウケ狙いでウニをそのまんま出しました。絵になるなあ。塩をふっただけなのにとにかく旨い。ウニは偉大である。
続いてジェームス・ボンドでおなじみのコチラ。やはり美味しい。複雑で奥行きがあり、泡が繊細。一口で食卓が華やぎます。と、余韻に浸っていると、佐々木が私に「なあ、あんた、何言ってるかわけわかんねーよ」と言い放つ。佐々木は灰皿テキーラでも飲んでいてください、と立ち上がりそうになりましたが、なるほど番長、今夜私に課された裏ミッションは、佐々木にワインの素晴らしさを伝えることですねわかりました。
サーモンのマリネ。オリーブオイルと酢とレモンと醤油でマリネ液をつくり、茹でたブロッコリーとサーモンを漬け込みます。みんな美味しい美味しいとつまんでいましたが、誰も醤油だと気づかなかったので、私の勝利である(何が)。
モツァレラチーズは奮発して水牛のもの。日進ワールドデリカテッセンはチーズのラインナップが専門店並みなのですが、品揃えが凄すぎて賞味期限ギリで投げ売りというパターンが非常に多く消費者にとっては大変ありがたい。今回も3割引き。やっぱり水牛製は乳脂肪分が多くてチーズの悦楽にはっきりと浸ることができます。
グリーンサラダ。パクチーと菜の花主体で意図的にクセのあるものにしてみました。「あー、オレ、パクチー死ぬほど無理なんだわ」と佐々木。
春満開のロゼの泡。女子が持ってくるに100点の酒。その横で佐々木が「この前もキャバクラで10万円使ったわ。若い衆に3次会までつき合わせて悪いから、全部オレがおごったわ」と武勇伝を披露。それって誰が得するんですか?と素朴な疑問を投げかけると、「そうだな、、、誰も得しないな、、、」と少し背中が小さく見えました。
チーズはスイスからのハンドキャリー直輸入品を数種類。意外にもエメンタールが人気でした。私はどうにも味わいに乏しく好きじゃないのに好みって色々で面白いですね。
日本酒は好きなものの、ワインには詳しくないというメンバーがブラインドで出した酒がコチラ。彼女の日本酒会で「これはワインじゃないか!?ラベルもそんな感じだし!」と大騒ぎになったらしく、自信満々でのご提供。

なのですが、今日の参加者は香りだけで「え?どう考えても日本酒なんだけど、あえてこの場で出すということは、何か裏があるのかううむ」と無駄なシンキングタイムが生じてしまったので、彼女にとってはある意味地獄でした。
シイタケ嫌いから頂いたイタリア土産のポルチーニを使ってパスタを披露。お湯で戻して生クリームで煮詰めてチーズを入れるだけで絶品ソースの出来上がりです。問答無用で美味しい。
蒐集癖のある番長が繰り広げるお宝ワイン。ジャン・ラフェ最後のヴィンテージです。すぐさま飛びつこうとすると制止され、代わりに2杯の赤ワインを目の前に並べられる。

「品種、産地をまず当てて、ヒントはふたつとも同じ。それから、このふたつがどういう点で異なるのかもコメントして。外れたらラフェ飲んじゃダメ」。なぜ私だけに意地悪するんだと色めきだつと、「だってタケマシュラン、ワインエキスパート様なんでしょ?
真剣にグラスに向き合い、みんながニヤニヤと私を取り囲む。このタイミングに遅れて来たメンバーは「な、何かあったんですか?」と目を丸くする程の異様な光景。

5分間悩み抜いた末、メルロと迷ったけどカベルネソーヴィニョン主体、産地はボルドー、違いは樽、と回答。その時の番長の「おっ」という表情を私は見逃しませんでした。結構良いセン行っている?
正解は、品種はメルロで産地はボルドー、違いは新樽比率と樹齢、醸造段階での亜硫酸塩の添加の有無でした。ほほう、悪くない回答じゃないですか。

「メルロと迷ったけど」と事前に言い訳したのが通ですよね。「カベルネと迷ったけどメルロ」「甲州と迷ったけどミュスカデ」何にでも使える魔法の言葉です。それにしても、レストランで飲めば3万円は下らないワインを遊びで使うとはバチがあたりますよ。
番長より飲んでも良いとの許可を得たので、ブルゴーニュ用のグラスを持ち出し悠々と頂きます。花束を手渡されたかのような複雑で華やかな香り。アルコールを感じさせないテクスチャー。ううむ、美味しい。
佐々木に意見を求めると、「なんかグミみてーだな!いつまでも口の中でグチュグチュしてられるぜ!」
トマト缶にタマネギのみじん切りを入れて炒める。新鮮なアジにトマトを絡めてパン粉を塗してあとはオーブンにお任せ。素材が良ければ後は何とかなるのが料理です。
ド本命のボルドーと比べてみる。うあー、確かにカベルネ主体ってこういうのだわー。さっきのメルロと骨格が全然違う。いきなりポンと「さてこれは何でしょう?」って出されるのは、私レベルでは本当に難しいのです。
ナスとマッシュルームとアスパラと鶏肉をオーブンにぶち込んで、仕上げにシュレッドチーズに焦げ目をつけるだけ。肉と野菜の旨味が溶け合い実に美味しかったです。
〆の食事は鶏肉としめじのおこわに、イタリアンパセリとトリュフオイルをたっぷりとふりかける。キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレのような和洋折衷をイメージしてみました。
みんな大好きモンペラちゃん。妙にボルドーが多い会となってしまったので、もはや食事のマリアージュとはかけ離れる。
「ワインなんて普段飲まねーから」と言いつつも、佐々木は非常に会を満喫しています。「ここんところの濃いやつらは全部似たような味だけど、さっきのグミみたいのが、やっぱ一番好きかもな~」なるほど番長のゲストだけあって、何だかんだ言って酒に対する審美眼は確かなのかもしれません。
今夜はお越し頂きありがとうございました、と佐々木の肩を揉んでみるとチーズ蒸しパンのように柔らかい。「オレは何も仕事してねーけど、みんなが助けてくれっからなガハハ」これはこれで素敵な兄貴分。
と、ここで我々の最終兵器、24歳の新入りが到着。「さっきまで九州に居ました!お土産に"めんたらこ"買って来ました!」

ちなみに彼女は神咲豊多香の隠し子であり、ワインについてのエピソードには事欠かなく、今まで飲んだワインで一番美味しかったのは?と問うと「ロマネ・コンティ1978年」と即答するお嬢様。ありとあらゆる英才教育を受けているため、まさかこんな初歩的な過ちを犯すとは思えず、ひょっとしてギャグかもと思いながらも勇気を出して、これは「めんたらこ」じゃなくて「めんたいこ」と読むんだよと恐る恐る伝える。

「え?そうなんですか?どうしてそう読むんですか?」と素直に質問されると逆にこちらが困ってしまう。明太子は"めんたいこ"と読むんだ、応仁の乱ぐらいからそう決まってるんだと突き放し、話題を打ち切りました。確かにどうして"めんたいこ"と読むのでしょう。
即席でめんたらこパスタ。海苔を切らしていたのが悔やまれますが、深夜の酔っ払いたちには炭水化物と塩気だけで充分であろう。
デザートワインを飲んでごちそうさまでした。「竹内まりやさんのお誕生日会で貰ったものなの」と次元が一般人とズレています。
今夜も楽しかった。佐々木が最終的にはワインに興味を示してくれたのが何よりも嬉しい。ご自宅はかなり遠いというのに、終電ギリのギリまで居てくださったことが何よりも会の楽しさを証明してくれていると思います。
これがワインの力。ビールや焼酎で、こうはならない。


(本文中に登場するウサギさんはLINEスタンプの「私たちは佐々木である!」というシリーズです。佐々木さんが使うと必ずウケるのでオススメ)


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私の参加するワイン会は、ヲタクが集まるというよりは、ワイワイふざけながら飲む形式です。全くの素人もウェルカム。ワインはみんなで飲むものだ。下記にテーマ別にまとめておきました。
ワイン会で料理を提供する際に参考としています。ワイン会の主役はワインであり料理は場が華やぐ程度の彩りさえ確保できればOKと割り切る。あえるだけ、焼くだけ、のせるだけ、ちぎるだけ、混ぜるだけなど、とにかく簡単に作れるレシピがたくさん載っています。