スイス vol4~明日は別々に行動にしないかい?~

チーズとハムだけのシンプルな朝食ですが、明らかに美味しい。シャルル・ド・ゴールが「365種類ものチーズを作り出す国を統治する事などできない」と悲鳴をあげ、ウィンストン・チャーチルが「300のチーズを提供する国は、滅びよう筈がない」と唸ったフランスほどでは無いかもしれませんが、ここ酪農王国のスイスのチーズにも絶対的な安定感があります。
オレンジジュース絞り機が豪快な仕組みで楽しい。
ヴェルビエを離れる。バスを待っていると、「あれ?もしかして山を降りようとしてる?ここじゃなくて、そこ右に曲がったとこのバス停だよ」と、通りがかりのおっちゃんが声をかけて下さる。と、その時、まさに我々が乗ろうとしていたバスが出発。愕然としていると、そのおっちゃんが猛然とダッシュしバスの前に立ちはだかり、我々のためにバスを止めて下さいました。

その後、乗車した電車において、何らかのトラブルで到着が定時より数分遅れることが決定した際に、車掌が全ての乗客の行き先を確認し、乗り継ぎに問題がないように手配をしてくれました。

また、妻はその身体に似つかわしくない大きさのスーツケースを転がしており、それを持って階段を登り降りする際には私が2往復するという試練が必ず待ち受けているのですが、それを見かねた見ず知らずの他人は、妻のスーツケース運びを手伝ってくれるのです。

これが、スイス人のおもてなし。

いつの間にか日本は「おもてなしのプロ」と言い張るようになりましたが、全くの他人に対しては欧米人のほうがよっぽど親切なような気がします。旅館の入り口で土下座して迎え入れるのは単なるパフォーマンスであり、おもてなしとは本質的に違うんじゃないか。

ちなみにバス停の件につき、私が停留所を間違えたわけではなく、ホテルのスタッフの説明が誤っていたことを私の名誉のために付け加えておく。
また、スイス人みんなが我々に優しくしてくれるのは、妻の爪が一翼を担っているのかもしれません。人に会うたびに「ワオ!イケてる爪!」と喜んでもらえます。
ツェルマット着。ホテルの予約はホストに全てお任せしていたのですが、たいそう立派なホテルで小躍りしました。詳細は別記事にて。
ベッドに寝転がってしまいたい誘惑を快晴が撥ねつけ、すぐにコルナグラードへと出発。コルナグラードとは、マッターホルンがカッコよく見える、すごく高い所にある展望台のことです。
列車が急勾配を吸い込まれるように登っていきます。ケーブルカーでなければ上がれないような坂道を電車が走っていて超違和感。マッターホルンを携えて軽やかに滑りゆくスキーヤーたちが車窓に映る。

妻はウィンタースポーツはからきしダメなので、今回の旅行においてはハナから諦めていたのですが、さすがにこの光景を見てしまうと、明日は別々に行動にしないかい?と喉元まで出掛かってしまいます。
コルナグラード着。何なんだこれは。マッターホルン、イケメンすぎだろう。富士山は思わず見惚れてしまう美しさなのですが、マッターホルンは兎にも角にもカッコいい。めちゃくちゃオフェンシブな独立峰です。圧倒的な存在感と迫力に気圧されます。やっぱり自然にはどうやったって勝てないなあ。摩天楼や偉人が建立した立派な建物も良いには良いのですが、やっぱり自然にはどうやったって勝てないなあ。
驚くことに、3,000メートル超にホテルがあり、レストランのテラス席でビール飲むとか最高か。
浮かれる私の笑顔をご想像下さい。奥二重でウインクしています。満面の笑みからこぼれる歯の並びが結構良いです。
下山して街を散策。墓地はたいへん立派な山岳ガイドが眠っているそうな。
古くからの穀物倉庫にはネズミ返しが装備されています。高床式倉庫ぶりですネズミ返しなんて。どの国でも思いつく工夫は似通ってくるのですね。
日が暮れるとスキーヤーたちが一斉に山を降り、街全体がお祭り騒ぎ。ツェルマットの街はガソリン車は全て締め出されており、電気を動力源とした小さなバスとタクシーしか走行を認められていません。なのですが、それらが音もなく結構なスピードでビュンビュンと走り回るから結構怖い思いをします。
部屋に戻ってマッターホルンを眺めながらシャンパーニュを丸々1本開け放つ至福のひととき。
シャンパーニュだけでは飽きたらず、食前酒とかこつけてラウンジでのウェルカムドリンクパーティに参加。品の良い客が多く、クルーズ旅行を想起します。
夕食はミシュラン1ツ星の前衛的なレストランへ。詳細は別記事にて。面と向かって支配人に苦情を言い、コースの途中で切り上げて帰ってきたという哀れな逸話つき。

「スイス」シリーズ目次

スイス関連の本は手当たり次第に読みましたが、やはり地球の歩き方が最も上手くまとまっていました。Kindleに入れて持ち歩けば旅行でも荷物になりません。この情報量で1,700円は安い!


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旅行が好きです。油断するとすぐに旅に出ます。楽しかった大型旅行の先頭記事をまとめました。リンクに飛んでから、順々に次のページをめくって頂ければ幸いです。