六本木の瀬里奈のもうちょい奥、「瀬里奈ヴィレッジ」という建物2階の奥まったところにバブルの遺産ともいうべき中華料理屋があります。
狂乱の時代に六本木で遊んだ方々に「〆は何食べてました?」と尋ねると、必ず当店の名前が返ってくることでしょう(電通調べ認知度98%)。
平日昼の3時というヘンな時間帯にお邪魔したのですが、なんとも言えないレトロな内装に独特の薄暗さ。客のほとんどが愛煙家であり当然に紫煙が漂うという、なんとも前時代的な中華料理屋です。
「香妃園は間違いなく旨いが、旨いのはポークカレーと鶏煮込みそばだけ」という先人のアドバイスに従ってその両方を注文。
すぐに出てくるポークカレー。なるほど旨い。中華スープがベースとなったカレールウに、大雑把にカットされた存在感のある豚肉たち。ポークカレーと言いながら細切れの端しか入っていないカレー屋が多い中、豚肉とはっきり認識できるのは嬉しい限り。ルウの味わいはインドカレーのような香辛料に基づく奥行きや深みなどは一切なく、そば屋の平板なカレー丼のカレーに近い味わいですね。したがって、1,000円は高すぎ。600円が妥当。
来店客の120%が注文すると言われる鶏煮込みそば。スープは博多水炊きのそれをもっと濃くした感じです。つまり、非常に美味しい。やや塩気が強く、完飲すると一生喉が渇くかもしれません。
麺はにゅうめん、すなわち素麺を煮込んだものに近く、酷く柔らかい。麺硬め強いコシ原理主義の私にとっては好きなタイプではありません。また、先ほどのポークカレーと打って変わって、鶏肉の量が思いのほか少なかったです。とはいえ、スープが鶏の味しかしないので気にならないけれど。
油断していると、鶏の脂かゼラチン質か何かの膜が張り始める。それだけ色々な何かが溶け込んだスープなのでしょう。量は極めて膨大であり、女性ひとりで完食は難しいはず。
美味しいけれど高いよなあ、が率直な感想です。カレーと鶏煮込みそばだけで2,500円ですからね。やるかどうかは別にして、すぐ近くの天下一品だとラーメンとチャーハンのセットで1,000円ぐらいで済みますからね。そういう意味で、美味しいけれど高いよなあ。
当店の取り得は「六本木の〆は香妃園で鶏そばだよね」と悪友同士で笑いあうところにあるのかもしれません。数十年前に六本木界隈における〆の炭水化物業界で先行者利益を獲得した家督が今も続いている、そんなお店です。ニュートラルな外人がフラリと訪れれば、美味しいけれど高いよなあ、まさにコレだと思います。
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