良くも悪くも話題が耐えない山田宏巳シェフ。絶頂期に交通事故で死者を出して料理界から姿を消したと思いきや、TV番組「料理の鉄人」で復活。なのにドラッグに手を出して
「大麻の鉄人」として終了。なのですが近年再起を図り、なんやかんやで多店舗多業種展開に成功するなど不屈の経歴です。
本日は青山本店へ。意外にも地階の小箱でした。勝手に大規模路面店を想像してただけに肩透かし。
ちなみに私はヒロ系列に思い入れがあるんですよね。22歳の夏に初めて自腹できちんとしたレストランに行ったのが丸の内の「リストランテ・ヒロ・チェントロ」。新卒の初任給でランチ7,000円は中々頑張ったほうだと思うのですが、とても満足したことを今でも鮮明に記憶しています。
事情があって昼の2時から飲み続けており、連れもそれほど飲まないタイプだったので、泡1本で通すことに。
先日のワイン会でマグナムしたフランチャコルタを注文。
まずは血統書つきの30日熟成牛を公開。最近のミーハーな客(私のこと)はこういう絵を欲しがることを理解してくれています。
お肉だけでなく、その他の食材も。手元にメニュー表は無かったので、これらの食材から一体何が創造されるのだろうと期待が高まります。
前菜盛り合わせ。おお!これはどれもきちんとした食材を使っていて美味しそう!
カブのムースにキャビア。カブの苦味とキャビアの塩気のシナジー効果。前菜として最高。話は逸れますが、いい歳して「シナジー効果」「ソリューション」「ウィンウィン」などの就活用語を連発する人はすげーヤバいと思います。
愛くるしいフルーツトマトに円やかブッラータ。素材が素晴らしいですね。シンプルなのにうっとりするほど美味しい。
桜マスに何かのジュレ。これはまずくはないが、うまくもない。全然印象に残らなかったです。
サバのサンドイッチ。上品に〆られたサバの酸味を柔らかく味わう。これも素晴らしい出来。普通サイズでお弁当に持っていきたい。
オマール海老のコロッケにアイオリソースとアメリケーヌソース。再強か。
エビ好きの私としては食べる前から結論は出ています。
コロッケというかオマールのほぐし身がギッチギチに詰め込まれており、間違いなく本日一番のお皿です。アメリケーヌソースのリゾットを混ぜ込んでライスコロッケ風にするもの良いかもしれませんね。
フォアグラにトリュフ。これはちょっと脂っぽくてクドい。胃にグっときてイマイチ。味は悪くないのですが、若干うんざりするコッテリ感でした。個体差かもしれませんが。
チャパタはごくごくシンプルで食事の邪魔をしない味わい。
と、ここまでは高級レストランとして完璧だったのですが、ここからが長丁場で非常に退屈しました。我々を含めて4テーブル8人しかゲストは居ないのに、このテンポの悪さは何だったのでしょう。
連れも手持ち無沙汰だったのか、「この前の飲み会でね、若い男の子がいっぱいいてさ、『男が女に言われて嬉しい台詞ランキング』とかくだらないことやってるわけ」と、くだらない話を始める。
「3位:わあ!、2位:こんなの初めて!、1位:すごい!なんだって。どう思う?」。僕の周りにはそんなに語彙が貧弱な女の子はいないからわからないよ、とだけ返すと、「じゃあ、キミが言われて嬉しい台詞って何?」と食い下がる。
そうだね、
3位:今夜は私にご馳走させて、と言うや否や「やめて、聞いたアタシがバカだったわ」と何故か私が呆れられました。何この2次災害。全部皿出しが遅いせいだ。
20分以上待って到着したグラタン。白子にジャガイモ、百合根がてんこ盛り。濃厚なバターと白子の粘り強い味わいが高次元で絡まりあい、出色の一皿。本当に美味しかった。
フォカッチャは品が良すぎるというか、優等生です。もっとローズマリーバリバリのこってりしたほうが私は好きです。
さらに20分以上待って出てきたのがロワールのホワイトアスパラガス。春も近い。ただし、チーズや生ハムが乗っかったりマカデミアナッツを削ったりと、構成要素が多すぎて最終的には何を食べているのかよくわからなかったです。
これまた20分近く待ち、ようやく登場のお肉ちゃん。
ヴァッカロッサのようにきちんと薪で焼いたトスカーナ風。肉塊を目の前で取り分けて下さいます。
なのですが、これがあんまり美味しくなかったです。妙に脂身が多い割に熟成もそれなりに進んでいてややこしい。連れもお気に召さなかったのか「もういいわ、残りは食べて」と丸投げ状態。一方で付け合せのタマネギは2時間近く火入れしたものらしく、焦げ目の香りが食欲をそそり、シンプルで美味しかったです。
〆の「パスタの量を調整できますが、いかがしましょうか?通常は30グラムでお出ししていますが…」との問いかけに対し、80グラム、と即答で返す。すると、スタッフからギョっとした表情を浮かべられる。ええー80グラムぐらい余裕でしょ。
サローネ2007では150グラムをお願いしても、特に驚かれなかったのに。
連れは30グラム。いや、これ30グラムじゃないでしょう。もっと全然多い。
そして私の80グラム。いや、これは80グラムとしては少ないでしょう。どうなってんだ。2分とかからず完食。ギョっとした表情で辱めを受けた割に大した量じゃなかったので、何だかなあ。
味はややニンニクが強すぎるきらいがあるものの、それに応じたカラスミの量であり、シイタケの旨味もハッキリしていて旨かった。ただ、フォーク一本で食べさせる割にはシイタケがデカすぎで、ナイフが欲しくなりました。
ドルチェということで、瑞々しい静岡の紅ほっぺを目の前で潰す。イチゴの華やかな香りがテーブルを満たし幸せな気持ちになります。
イチゴを耐熱容器に移し替え、液体窒素を投入し、
一気にかき混ぜるとこの通り!なのですが、我々にとっては今さらこんなプレゼンテーションに付き合わされるのは面倒でしかなく、バックヤードでやってきて欲しいなあと思いました。
隣のテーブルで同じことが演出されていた際、そのテーブルの女性が
「わあ!こんなの初めて!すごい!」とはしゃいでいたので(実話)、これは我々がひねくれているだけです面倒とか思ってごめんなさい。
シャーベットと化したイチゴそのものは極上品。ずっと食べ続けていたい。ただ、税サ込み酒抜きで20,000円近くするコースのドルチェとしては力不足かもしれません。
小菓子はいずれも手が込んでいてレベルが高い。名古屋コーチンのロールケーキは卵黄比率が非常に高く飛びっきりの伊達巻のようです。キンカン、コナコーヒーのクッキー、リンゴのタルト、ガナッシュなどなど、いずれもデパチカで売り出せば争奪戦になるほどの味わいでした。
丁寧なエスプレッソでごちそうさまでした。
皿出しが遅かったり、イタリアンとしては高額な部類であることを差し引いても、総体として私はかなり好きなお店です。
広尾アクアパッツァもそうですが、郷土色が薄く日本人向けにアレンジされていて万人受けするスタイル。前衛的では無いけれど外さない。こういうお店は個人的には大事にしたい。また行こうっと。
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十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。