店主はエノテカ黎明期の旗振り役を務め、ブルディガラグループの総支配人として11店舗を統べた方。人望の塊であるためか、お花の数がすごいーぞ。
主力選手は広島大黒神島の生牡蠣たち。単品250円からと親しみやすい値付けが嬉しいですね。仕入先は飲食業界ではとみに有名な所で、管理や開け方、調理法などを認めたお店にしか卸さないという、哲学に溢れた生産者です。「清浄海域で育つ牡蠣なので、あたることは無いですよ」と言い切る姿勢が頼もしい。
もちろん生牡蠣に合わせた白を頂きます。「牡蠣はシャブリに限る」と信じ込むのは中学二年生まで。ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌも魅力的な取り合わせです。フレッシュで爽やか、ミネラリー。ぴったりだ。
1つ1つ丁寧に、という表現では物足りないほど周到に、小さく良くしなるナイフで綿密に開けていきます。フランスの街角のエカイエ(牡蠣むき職人)たちはわりと分厚いナイフでバキッぐるりバシっと手早く開けていき、それはそれでカッチョエエのですが、乱暴に取り扱うと不純物が混入して身や粘膜を洗う必要が生じ、結果として味が落ちてしまうとのこと。
話は少し逸れますが、可愛らしいエプロンとは裏腹にパンプアップされたその身体。ふとエーゲ海あたりのシーフードレストランのおっちゃんを思い出す。
一口でヅュルリ。なるほど旨い。海にキスをするような味わい。そこからはあっという間で6ピースが瞬時に貝殻へ。「ワインも牡蠣も、開けるだけですよ」とはにかむ筋骨隆々の店主。
個人的にはシャルキュトリが外せません。パテドカンパーニュなんてもう最高。一般的なレストランは挽肉を仕入れて作り始めるものですが、当店は肉の塊を挽くところから始めるのです。そうすると肉やレバー、脂の配合、挽き具合などに個性を出すことができるため、つまり、美味しいのだ。粒マスタードがほんのり甘くて心憎い演出です。
「牡蠣とは何の関係もありませんが」と新樽で420日寝かせるシラー。程よいカカオやエスプレッソのニュアンス。シラーのスパイシーなノリよりも説得力のある甘さが目立ち面白かったです。
その後も当店のリニューアルオープンを口を開けて待っていた常連客が続々と。いいなあ、こういうの。若輩者の私が特等席であるカウンターを陣取り続けるのも無粋なので、今夜はサクっと退散します。
次回はみんなでテーブル席を貸しきって宴会だ。牡蠣をたらふく食べましょう。富士山が噴火してポンペイ状態になって後世に貝塚として発掘されるぐらい食べましょう。
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