エレベータのない雑居ビルの狭い階段を4Fまで昇りきる隠れ家感。カウンター数席とテーブル数卓の小さなお店です。
フランチャコルタで喉を潤し逸る気持ちを抑えていると、シェフが直々に今夜の一通りの料理を説明に来てくださいました。これは良い演出。きちんとお客のことを考えながら料理をしている気持ちがはっきりと伝わってきます。
左からキノコをプリンっぽくしたもの、ピクルス、イカのライスコロッケ。プリンっぽいものは全体的には美味しいものの、もう少しキノコの野性味をきかせても良いかもしれません。ピクルスは凡庸。イカのライスコロッケは非常に美味しい。衣を破ると潮の香りが爆発。
スペシャリテのカプレーゼ。トマトのジュレにムース状(?)のモツァレラチーズ。意欲的な試みではあるものの印象には残りづらい。どことなく平板なんですよね。単純なジュレだけでなく、ドライトマトのチップを織り交ぜてアクセントにするとか、モツァレラじゃなくてブッラータで遊んでみるとか、バジルを味の濃いペースト状にするとか、もっとアップダウンに激しい皿であればスペシャリテとして記憶に残りそうです。
パンはいずれも温かく美味しかった。ふたりともおかわりして全て平らげてしまいました。
豊後水道のアジ。魚の美味しさが突出しており文句なしに美味しかったです。私の生魚ラブ素子がビンビンに刺激される。夏みかんのソースの香りも爽やかに心地よい。
会話が弾んで次の料理を撮りわすれました。レンコダイをカダイフで巻いたもの。タイそのものの味が強く歯ごたえもしっかりとあり良かったです。カダイフは割にしっかりと巻かれていたのですが、もう少しふんわりと仕立ててボリューム感があったほうが見た目も食感も楽しめたような気がしました。
干し鱈が練りこまれたニョッキ。鱈の凝縮されたコクとアサリの出汁が結託して海の口にキスをするような味わい。アサリは旨味が抜けきっており、一方で硬さだけが目立ったので、除いてしまっても良いかもしれません。また、ソースは色合いが安っぽく見えるので、サフランを用いる必然性はあまり感じられませんでした。
メインは牛のサンカク?赤身です。ハラミっぽい食感と味わい。残念ながらやや失速。決してまずいわけではないのですが、印象に残りませんでした。肉質を追求したいのか、ソースを見て欲しいのか、ボリュームなどのシズル感で勝負したいのか、シェフの真意を測りかねました。
夏みかんのムースに、練乳のアイス、あと手前はなんだっけ?練乳のアイスがわかり易く美味しく丼で食べたくなりました。
折り目正しいコーヒーで〆。ごちそうさまでした。
食べログの評価や予約の取れなさに納得。良いお店だと思います。これだけの素材と技巧をこの値段で提供する姿勢は尊敬に値します。ただ、やはり価格帯がネックであることは確か。先が読めてしまうんですよね、仕入れ値に引っ張られて。才能の無駄遣い感がある。
個人的には更に高いお金をとって、もっと大きなハコで人も雇って、シェフの技量の最高値を感じてみたいです。アンドセジュールやレネでの印象に近い。ぐっと高みを目指せるはず。乾坤一擲の大移転を期待。
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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。余所者ながら印象に残ったお店は下記の通り。
- スブリデオ レストラーレ ←チーズ好きのカーバ神殿
- ガストロノミー ジョエル ロブション ←やはり最強。季節ごとにお邪魔したい
- ラ ターブル ドゥ ジョエル ロブション ←超高級ファミレス
- ビストロアム ←フレンチの出オチ最強選手
- ユーゴ・デノワイエ ←3,000円切るランチでこのレベルなら大満足
- レストラン間 ←日本で最もカリテプリに優れたお店なんじゃないか
- ビストロエビス ←うちの娘もああいうふうに育つと良いんだけれど
- 恵比寿くろいわ ←料理学校の和食クラスの生徒の料理を食べてるみたいな気分
- 博多もつ鍋 蟻月 ←玉石混交。うまく注文しましょう