ルソイ/目黒

友人のカレーマニア、すなわちカレーのためにインドやスリランカまで遠征し、スパイスを買い付けては夜な夜な香辛料に漬かるという危険ドラッグ的生活を続けている女子から「ルソイのカレーはいいですよ」と太鼓判を押され、自動的に予約の手が伸びてしまう。
最初にパパドが供されます。塩気が強く独特のスパイス香もあり、素敵な始まり方ですね。パパドが乗せられていたお皿はその後そのまま取り分け皿として使い続けるという、理に適った仕組みです。
「あたしが書いたの。あなたにぴったりでしょ?」と、連れに新年のプレゼントとして書画を頂戴します。素晴らしい。我が家のVIP席に飾らねば。
当店のスペシャリテを一通り楽しめるコースもあったのですが、私も連れもインドに行ったことがあり、注文センスは悪くないはずということでアラカルトにチャレンジ。まずはサモサから。
うわお!これ超美味しい!旨味が生き物のように飛び出てくる!今までの人生でサモサは累計50個程食べているはずですが、その中でも突出してレベルが高いです。我が心のサモサランキング1位決定。これは今後の展開を期待せざるを得ない。
タンドリーミックス。ぞ、草履のように大きい。。。しかもそれぞれに刺すような辛さがあり、ハンカチが絞れるほど汗をかきました。真冬だというのにシャツ1枚になってもへいちゃら。左上のタレみたいなのが輪をかけて辛く、血圧急上昇です。なのですが、うまいんだなこれが。辛さの奥底に複雑な香りが広がり肉の味わいを高次元なものに昇華させています。

ちなみに冒頭のカレー女子とBBQやるときは、チキンのヨーグルトやらスパイスやら漬けを持ってきてくれるので、それを焼いて食べるのが最高なの。
豆のカレー。結構な量のお豆さんが入っておりボリューム満点。しかもこれがまた辛く、複雑で、旨い。先ほどのタンドリーミックスと味のベクトルは同じです。
ガーリックナン。バターとニンニクの薫り高い塊を千切って口の中に放り込む。辛さが中和されほっと一息。チキンやカレーの辛さをコントロールするのに最適です。
ルソイバターチキンカレー。店名を冠しているのでさぞや自慢の逸品なんでしょうと口に運ぶと、これがまたコクと旨味に溢れて素晴らしいの一言。しかも甘味と辛味と香りの広がりとバランスが完全無欠。このカレーには無限の味わい、すなわち宇宙がある。本当に美味しかった。
カブリナン。何の中にナッツやドライフルーツ、ココナツやチーズなどが練りこまれているもの。
雪景色のように広がるチーズ。ほんのりと甘く、先述のバターチキンカレーに絶妙にマッチ。いやあ、プレーンのナンだけでなく、こういうお遊び系も試して良かった良かった。

サモサと豆の膨張により胃袋がはち切れそうになり、タンドリーミックスとナンは食べきれず。おそるおそるお店の方に持ち帰れるかと尋ねると「ワカリマシタ!」と快諾。
丁寧に包装して下さり、しかもこんなに立派な紙袋まで。よくよく店内を伺うと、中で食べるだけでなくナンやサモサ、タンドールでの焼き物などをテイクアウトしていく人が結構します。ここまでご近所さんに信用されているのであれば、間違いないですね。

素晴らしいお店でした。首都圏のカレーであれば検見川のシタールが一番と信じていたのに、アクセスの良さや行列のなさを考えれば、当店のほうが使えるかもしれません。

料理人の手際が良すぎるので、注文すると一気に料理が到着してしまうのが玉に瑕。辛い辛いと悶絶しているとあっという間にテーブル上が渋滞してしまうのですが、それは今度から少しづつ注文すれば良いだけの話。ああ、すぐにまた行きたくなってきちゃった。
31日だったので、デザートはバスキンロビンスへ。「あたし、31大好き」。そりゃあ31なんて誰でも好きだよ、と言いかけたところ、ロッキーロードでしょ、ベリーベリーストロベリーでしょ、ポッピングシャワーでしょ、キャラメルリボンでしょ…、とフレーバーをスラスラとそらで述べ始める。「あ、あたし商品券持ってるからごちそうしてあげる!」うむ、キミは確かに本物のバスキンロビンス芸人だ。
わかり易く安心する味わいで心から落ち着けました。ふと店内および行列を眺めると、そこに居るのは大人ばっかり。私の子供の頃って、あんまり大人がスイーツとかに萌えている姿を見た記憶がなかったのですが、最近は大人のほうが熱狂していますよね。全般的に味覚のロリコン化が進んでいるのかもしれません、私を含めて。


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ルソイ
夜総合点★★★☆☆ 3.5
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ワイン会~24歳の新入り~

前回のシャンベルタンとミュジニー会から1ヶ月。新年会です。
来るはずの男性ふたりが急遽欠席することとなり、当初女性4人男性2人、最終的には女性6人男性2人というお花畑のようなワイン会です。
乾杯はこちらの泡。全員が喉カラカラ状態であったため、数秒で空きました。
参加者の女性からタケマシュランへ感謝の気持ちを込めてということで、ジョーマローンのバスオイルを頂きました。おおー、なんて粋なチョイス!何しろ私はロンドンのスローンストリートの旗艦店にまで行ったことがあるほどのジョーマローン好きなのです。少し嘘つきました妻の買い物についていっただけです。
今日もハイアマチュアの私が全ての料理を担当。まずはコブサラダ。菜箸でラインを作って食材を並べていくのがキレイにプレゼンテーションするコツです。
モエシャンはさすが美味しい。2杯ぐらい飲んじゃったかもエヘヘ。
上は牡蠣のオイル漬け。牡蠣とタコを水分がなくなるまで乾煎りしてオイスターソースを絡めて香辛料たっぷりのオリーブオイルに漬け込むだけ。それだけで抜群に美味しい。
ば、番長の持ってくるボトル、デカいから。確かに「ひとり1本以上のワイン」と募集要項に記したが、1本がデカいから。
定番のムール貝の白ワイン蒸し。タマネギのみじん切りをたっぷり使って甘さを強めにしました。
こちらも定番のナニワヤのローストビーフ。うーん、美味しい。みんなで半狂乱で奪い合うほどの味わいです。
番長、だからビンがデカいって。ひとりでマグナム2本と普通サイズ1本とかそもそもすげえ持ってくるの重いし。今夜は帰らない。
ブリのムニエル。小麦粉をかけすぎてしまって唐揚げみたいになってもうた。それでもソースをたっぷり吸うから逆に良かったりもする。
ルロワ様。「ほんとはまだリリースされてないヴィンテージだけど」と裏口入学感満載。ACブルゴーニュでこんなに美味しいのは嬉しいなあ。
グラタンは牡蠣とホウレンソウだけでシンプルに。このホウレンソウが結構美味しくって、ちょっとポパイに食わせてやりたいレベルです。
スペアリブはたっぷりの香辛料をすりこんだ上に、仕上げはローズマリー。料理を美味しくするコツは、高くつくけどスパイスやハーブをケチらないことだと思います。低温で揚げたポテトも甘みに溢れて我ながら美味である。
脂の強い料理にはどっしりした赤を。私のモロタイプの味わいで、こいつが決め手となりここから記憶がありません。
翌朝起きると空になっていたボトル。飲んだ記憶が全くない。
ちなみにこちらを持ってきたのは新入りの24歳で、どんなワインが好きなの?と尋ねると、「ヴォーヌ=ロマネですかねえ」と言い放ち、場の空気が凍りつきました。その若さでそういうことを言うとカタギと思われないからやめたほうが良い、と優しく言い含めておきました。

今夜も楽しかった。かなり早い段階で記憶を失っているので、何か失礼なことはしていないか恐る恐るグループのメッセージを確認したところ、どうやら皆も結構な酔っ払いだったようで、平和にケータイ忘れてる人もいたことですし、まあ、大きな事件は無かったということでいいでしょう。来月の日時も決まったことだし、うん、大丈夫大丈夫。

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私の参加するワイン会は、ヲタクが集まるというよりは、ワイワイふざけながら飲む形式です。全くの素人もウェルカム。ワインはみんなで飲むものだ。下記にテーマ別にまとめておきました。
ワイン会で料理を提供する際に参考としています。ワイン会の主役はワインであり料理は場が華やぐ程度の彩りさえ確保できればOKと割り切る。あえるだけ、焼くだけ、のせるだけ、ちぎるだけ、混ぜるだけなど、とにかく簡単に作れるレシピがたくさん載っています。



威南記海南鶏飯 日本本店/田町

Wee Nam Kee Hainanese Chicken Rice、威南記海南鶏飯、ウィーナムキーハイナンチキンライス、書き方が色々すぎて大変。いずれにせよ、シンガポールナンバーワンのチキンライスブランドらしいです。シンガポール政府が国賓をもてなす際には当店のチキンライスを振る舞うらしいです。
田町のコンクリートジャングルに出現する緑のオアシス。これは素敵なロケーション!
入口ではカッチョエエ看板が出迎えてくれます。
壁は全てガラスであり、外のグリーンが気持ち良い。テラス席もあったので、春秋であれば最高に気持ち良い食事となること間違いなし。
シンガポール名物ホッケンミー。これのどこがホッケンミーなんだ。ホッケンミーの厳密な定義は存じ上げませんが、少なくとも私がシンガポールで食べたどのホッケンミーとも異なります。こんなスープジャブジャブのってあり?麺は象が踏みつけたんじゃないかってぐらフニャフニャで食感が無く、病人の流動食のようです。スープも変に甘ったるく食えたもんじゃない。地獄のランチの始まりだ。
チキンライスについてくるスープは、鶏の旨味にジンジャーがきいて美味しかったです。
チキンライスの蒸し。つ、冷たい。。。さめたどころの騒ぎじゃなくて、根本的に冷たい。わざわざ冷水で締めてあるらしいのですが、あまりに冷たすぎて味わうとかそういう次元に入れない。アナザーディメンションすぎるこのチキンライス。
スープで炊いたライスはスープ同様、良い出来です。ただ、炊きたてアッツアツというわけではなく、妙にぬるい温度。
チリソースにショウガを混ぜ合わせて、
卓上のタレと共にゴハンにぶっかける。実はこれが一番美味しかったりして。しかしこのタレは何かなあ。変に舌がザラつくし、その後も慢性的な喉の渇きが続いて苦しかった。
納得がいかないのでチキンのローストも。ぐぬぬ、冷たい。根本的に冷たい。しかも、見栄えだけはちゃんとしてるものの半分近くが骨で可食部が全然ない。酷い話だ。

また、提供時間も異常に遅いんですよね。十番の海南鶏飯食堂や渋谷のガイトーンなら注文してすぐに提供されるのに、当店は注文から20分近く待たされる。これは別に我々のテーブルだけでなく、どのテーブルも同じであり、食べている客はおらずほとんどが暇そうに待っているんです。何か哲学があってチキンを冷やしているのだとは思いますが、その工程さえ省けば時短になるだろうに。

サービスも昇り階段を降っているような違和感でした。どの店員にも覇気や笑顔がなく、勘の鈍い受け答えしかできない。色々お願いすると舌打ちでもしかねない態度です。料理が出ないから基本的に店員もヒマしてるのに、テーブルウォッチが疎かで、水すら持ってきてくれない。その原因が店員同士でダベったりしてるからで、さすがに腹に据えかねました。

屋台でチキンライスを掻き込む状況であればそのような態度も許容できるのですが、都心の一見オシャレ風な雰囲気の店でかなりの金額を請求しておいてここまでレベルの低いサービスを受けるのは心の底からツラタンです。

ホームページではフランチャイズを大募集しているし、あまり客のことは向いていない、ビジネスライクなレストランなんでしょう。しばらくは話題先行で盛り上がると思いますが、どこかで姿勢を正さないと、東京で長くはやっていけないんじゃないかなあと思いました。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。



威南記海南鶏飯 日本本店
昼総合点★★☆☆☆ 2.0

ワインのばか/西麻布

大手広告代理店の方が大手出版社の大手編集長を大手タケマシュランに紹介したいと、会食をセッティングして下さいました。理由はどうあれ、今夜も宴会である。
国産のクラフトビールと初球から変化球で攻めてきます。ビール出身の私としてはとっても嬉しい。
鏡のように磨かれたピータン。アンモニア臭は一切無く、ブラインドで食べればゼラチンを用いたテリーヌかと思うほど品が良い。先ほどのビールのコクと甘味の意向が合致して楽しめました。
サーモンのリエットを新鮮なパプリカに詰める。優しくエアリーな仕上がりで
トゥーレーヌにぴったり。今夜も長くなりそうです。
牡蠣に黒大根、きんかんに、、、なんだっけ?当店流のポトフです。貝の旨味って創造力抜群ですよね。数粒入れただけで方向性がまとまる便利な食材。個人的にはキンカンが好き。だって味玉のいいとこどりをしているような気持ちに浸ることができるんだもん。
ぺトロール香や酸味が抑えられたリースリング。これいいな。リースリングの美点のみを抽出したような液体。技術力の高い造り手なのでしょう。
オーブンで脂が爆ぜる音を聞きながら、なんやろなと妄想を膨らませていたちょうどその時、登壇した大ぶりの鴨。厚切りで野趣溢れる赤身の味わいが抜群に美味しい。これはDNAレベルで感じるウマさです。
合わせる赤は品の良いバローロ。ギスギスしたタンニンは無く鴨と共に楽しめました。
きゃわたんすぎるビジュアルのパスタ。これはカラスミパスタというかもはやカラスミである。炭水化物ではなく純粋なオツマミである。銀座しまだのカラスミ蕎麦は海よりも深く反省するように。
ふくよかなシェリー香でアモンティリャードと思いきや、イタリアのヴェルナッチャでした。ヘーゼルナッツというか紹興酒というか、面白い。カラスミのパスタにぴったり。このワインの味わいは極めて独特である一方で、食中酒としての活躍の場が意外にありそう。アンキモとかウニとかも合いそうな気がします。
つまみにホタルイカ。このお店のフードのバリエーションは自由奔放すぎる。ワインバーとしてのシンギュラリティは完全に超えており、そこには独自の未来が動いています。
これは濃い。「やたら濃い」と言いそうになりましたが、初対面で駄洒落は失礼にあたると思い直し、ワインと共にその台詞をぐっと飲み下しました。
オレンジワインへ。このオレンジワイン、好きなんですよね。どこか違う世界へ連れて行ってくれそうな新しい味わいに魅了されます。
炭酸水で休憩。塩味のある水で、ニュートラルなお水よりもカラダに染み渡るスピードが速く感じましたポカリスエット的な。
帰宅難民になることを恐れずサントネーへ。今夜も素晴らしきワイン紀行でした。
今シーズン最初の本命チョコを頂きました。リベルターブルのもので、右のイチゴベースのショコラに薔薇のドライフラワー(?)を塗したものが秀逸でした。薔薇がアクセントして活躍中。おすすめです。

いやあ、今夜も楽しかった。何度もご一緒しているというわけではないのにこんなにも楽しく飲めるのはワインという保証人がいるおかげですな。ワイン好きに悪人がいる確率は極めて低い気がする。海外で平和貢献活動に勤しむのも立派なことですが、ワイン好きの輪を広げていくのも自警団としては結構良いものだったりして。


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テイスティングは生まれ持っての繊細な味覚に拠るといったことはなく、地道な練習あるのみです。誰でも最初は「赤ワインなんて全部同じじゃーん」と思うものですが、そのうちコーヒーと紅茶ぐらいの違いに感じるようになります。その特訓記録をまとめました。


ソムリエの筆記試験の勉強方法は千差万別ですが、私は地理から入りました。地図と一緒に対応するアペラシオンなどの表が記載されており、上手に整理されていると思います。白地図もついており、復習し易いです。



ワインのばか

夜総合点★★★☆☆ 3.5
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