やまし田/神田

都内で牛タンと言えば、四ツ谷の「たん焼忍」と双璧をなす当店。
 予約は「たん焼忍」よりも入りやすく、予約をしたのに並ばなければならないという意味不明なルールも無いので、社会常識をわきまえた人であれば、食べる前から当店を気に入ることでしょう。
 異常奇怪な壁の写真たち。なぜ法政大学在学中の江川卓の写真が貼られているのか。手元にメニューはなく、壁にかかったものから選びます。ちなみに今日は「あれ」「あきれす」は未入荷とのこと。「あれ」とは食べログ情報によると胸腺。
 師走の寒さを物ともせず、生ビールで乾杯。
 たん刺。ルイベのように半解凍状態。微動だにせず整列しており思わず見とれてしまうのですが、冷たすぎて味の分別がつきません。
 ゆでたん。8mmほどの厚さの下ごしらえされたタンを、注文が入ると同時に湯に潜らせたもの。
 練りワサビを塗りたくって、半分に折りたたんで、ガブり。噛み締めるほどに笑みがこぼれる。食べ応えも抜群。無限大の満足感。
 スモークたん。上質なハムのような食感と風味。文句なしに美味しいのですが、燻製によってタンのキャラクターが薄れてしまっているため、わざわざタン屋で食べるものでもないかなあ。
 焼きたんを注文。目の前の炭火で手際よく火を入れていきます。ただ、このお店、衛生面に問題があるんですよね。大将は客の目の前でタバコを吸って、そのヤニ臭い手で直接食べ物を触るし、ゴミ箱触ったり洗い物したりした手で塩をつまんだりする。
 しかしこの皿を前にしては取るに足らない問題に感じてきます。バリっと焼いた表面に強めの塩分。アゴが外れるほどの厚みと噛み応え。神田の人間にとって杜の都など不要であろう。
 どて煮。タンの良い部分は刺しや焼きにまわるのですが、切れ端などはコチラに。そこはかとなく臭みが感じられ、見た目ほどには美味しくない。ただ、他の皿に比べて半額ほどの値付けなので文句を言っちゃあいけないのかもしれません。
 たんシチュー。謎の一升瓶赤ワインで豪快に20分ほど煮込みまくった一皿。値段を考えれば悪くはないのですが、どうしても洋食屋のそれと比べてしまい、雨のように退屈な味に感じてしまいます。
とか言いながらも付け合せのオニオンスライスにタレをカラメまくって一滴残らず舐め尽くす。
〆には舌麦じや。牛タンと言えば麦ごはんですが、当店にはそれがなく、代わりにタンスープで優しく包んだ麦おじやがあります。麦は事前に炊いてあるわけではなく、注文が入り次第茹で始めるので、恐ろしく時間を要する〆ですが、待つ甲斐は大いにあり。プツンプツンとした食感にパンチのあるスープが取り入り、あっという間に平らげてしまう逸品。

大満足。「たん焼忍」よりも味は良く、安い。なぜアチラのほうが人気があるのか理解に苦しみます。とは言え衛生面など問題が残るのは事実。全体的に不潔という不都合な真実に目を瞑ることができれば、リーズナブルできちんと美味しい牛タン料理屋であることには間違いありません。また行こう。


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それほど焼肉は好きなジャンルではないのですが、行く機会は多いです。有名店で、良かった順に並べてみました。
そうそう、肉と言えばこの本に焼肉担当として私のコメントが載っています。私はコンテンポラリーフレンチやイノベーティブあたりが得意分野のつもりだったのですが、まあ、自分の評価よりも他人の評価が全てです。お時間のある方はご覧になってみて下さい。


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