L'Assiette Champenoise(レストラン)/ランス

L'Assiette Champenoise(ラシェットシャンプノワーズ)。滞在しているホテルのメインダイニングで、ホテルと同名です。ミシュラン三ツ星。
アルノー・ラルマン。現代フランス料理界における脂がのったスターシェフ。フランス中の有名レストランで薫陶を受けた後に26歳で凱旋帰郷。お父上から一ツ星レストランを継承し13年かけて二ツ星を取得。その後も不断の努力を続け、ついに2013年、三ツ星に昇格です。

人生に1~2度しかお邪魔できないだろうから、スペシャリテ尽くしのコースを選択。
iPadのワインリストでじっくりと選ぶ。1分ぐらいじっくり見ても、スクロールバーの5分の1程しか消化できなかったので、もういいやキリが無いと雑に注文してしまいました。あまりに品揃えが良いのも難しいものですね。
さっそくアミューズが供されるのですが、この量すごくない?チーズ味とトマト味。ひとつづつつまむのか、全部食べて良いのかわかりかねる。恐る恐るもうひとつ食べても怒られないので、あとひとつ、あとひとつ、とビビりながら食べていると、前菜が到着しアミューズは下げられました。なるほど、間をつなぐために好きなだけどうぞ方式なわけですな。
予想していたよりも酸味が強くて破壊力があります。
早速のスペシャリテ。キャベツとベーコンにベーコンの出汁ソース。名刺代わりとしては存在感がすごすぎる。お、美味しい…。ミシュランの星の多寡を基準に物事を語るのは良くないこととはわかっているものの、これを一口食べただけでゆうべのガブリエルと大きな差を感じました。
パンは一種のみ。朴訥で華がなく半分しか食べませんでした。有塩・無塩のバターまで用意してくれたのに申し訳ないっす。
塩とかの用意があったけども使用せず。でもこのお皿かわいい。
色とりどりのトマトづくし。楽しいのですが、トマトはトマトである。Grønbech & Churchillのトマト皿が脳裏をかすめる。悪くはないけれど途中で飽きちゃった。半分でいいや。
トマト水はお見事。一口飲んだだけで青みがかった活き活きとしたトマトの姿が目に浮かぶよう。シモムラのカカオ水は正直よくわからなかったけれど、当店のトマト水は疑う余地もなくトマトである。
キャビアにセロリのムース。キャビアをメインキャストとしてしっかりと食べるのは久々。シャンパーニュと共に至福のひととき。セロリはそれほど好きな食材じゃないけれど、このムースの出来はパーフェクト。
そう、当店はソースを別皿で置いてくれるのです。アジコイメの私にとって粋な計らい。
フォアグラにカツオ節的粉末。フォアグラの旨味が強烈すぎて他の存在はすべてかき消されます。フォアグラ自体は美味しいから問題ないけれど、乱暴なお皿に感じました。
先割れスプーン。昔、給食で出てきたな。正しい使い方を例の小久保にしつこく聞いたら全てシカトされたなあ。
ロブスター。こちらも完全無欠。ゆうべのガブリエルをも凌駕する。日に日にロブスターが美味しくなっていく。痛風幹部候補生。
シーバス、、、って言ってたけど、スズキってこと?むっちりとした歯ごたえにソースの旨さといったらない。ウロコをアクセントに使うセンスも垢抜けています。本日一番のお皿。
追加自由のソース。当店はひたすらにソースが旨い。これぞフレンチの極み。聞いたところによると、シャトーシャロンのヴァンジョーヌを使用しているとのこと。飲んだことが無いワインに料理で出遭うとはね。
仔牛。くどいようですが、ソースが旨い。しかも先ほどの料理とは全く異なるベクトルの味わいを創り出していて、ひょっとしてシェフは二重人格ではあるまいか。穀物?も歯ごたえがよく、食べていて飽きない。連れは「今日こそチーズをちゃんと食べたいから」と半分私に切って寄越す。
いやー美味しかったチーズだチーズだと思いきや、もう一度肉。ワオ、メインディッシュ2回転方式はメイと同じですな。カナールにアーティチョークの肉詰めコロッケ的なもの。鴨は仔牛と軌道が同じで残念ながら飽きちゃいました。
逆にコロッケのほうが面白い。無理に2皿にしないで、肉1種でこのコロッケをガロニで出せばいいのに。「これも半分どうぞ」うむむ、さすがにうんざりしてきたぞ。彼女は私のことをブラックホールか何かにとらえているフシがあって、頼みたいものを好きなだけ注文して、平気で後はよろしくというスタイル。日本の上品な量のレストランなら望むところですが、フルラインナップでこれをやられるとさすがの私の胃もせりあがって来る。
チーズ祭パチパチパチ。シャンパーニュなのでシャウルスとラングルは外せません。
こちらはシェーブル特集。店の下っ端風のねーちゃんは「ゴーダチーズゴーダチーズ」と言っていたけれど、どう見ても違うだろ。あとから考えると、「ゴート」のチーズと言いたかったのでしょうか。いずれにせよ、彼女のおすすめのフレッシュゴーダチーズのにんにく風味を食べたら全然美味しくなかったです。
他には青カビで初めて見たやつなど。連れは相変わらず「おなかいっぱいだから少しだけ。うん、3種類」と一文で矛盾した発言で、店員も「こいつは言い訳Maybeながらもたくさん食べたいんだなわかります」と誤った解釈で、3種類とはいえ結構な厚みでの提供。笑ってはいられない。その半分は私に回ってくるのである。

コンテの36ヶ月熟成はチョコレートみたいで面白かった。まあ、何でもかんでも熟成すればいいってもんじゃないですけど。

ちなみに、こういうお店で料理をシェアするのは格好悪いと眉をひそめる方がいらっしゃるとは思いますが、我々の分かち合い手法には歴史があり、そこらの麻薬密売人よりも巧妙にそして秘密裏に受け渡しを完遂するのでご心配無く。
デセールはベリーのタルト。構成要素ひとつづつは酸味がきいて悪くないのですが、総体としては雑な組み合わせでしっくりこなかったです。
飴もイマイチ。あれれ急失速パターン?
チョコレートは柚子が入っているとのこと。店員が得意気に「ユズ、イェー!ユーノウ?」との問いかけにはただただ苦笑い。俺はお前の100,000倍は柚子を食べている。柚子と漢字で書けるし、夏色だって原音で歌える。
フルーツキャラメル的な何かもペケ。
カヌレもボルドーのチェーン店のほうがレベルは上。当店は甘味について今一度大いなる反省をしたほうが良いと思います。君も人生と向き合う時なんだ。

ちなみに連れはこれらのミニャルディーズにつき、「あたしは今お腹いっぱいだけど、後からどうしても食べたいから、ひとつづつ包んでもらえるかしら?」とワガママ言いたい放題で、店員も一瞬動きが止まり目だけが泳ぐほどでした。
腹十分目となり席を立つ。出入り口付近で支配人がにこやかにお土産のパンを持ってお見送り。気持ちは大変嬉しいが、彼女が求めているのはパンではない、ミニャルディーズである。
レストランを出て庭を散歩していると、先ほどの支配人が飛び出して来て、「忘れてました!今夜のメニューです!」と賞状のような立派なメニュー表を手渡してくれる。嬉しいが、彼女が求めているのはミニャルディーズである。

「パンじゃねーんだよなー、メニューでもねーんだよなー、英語通じなかったかー、外人でもわからんことがあったら適当に話を合わすんだねアハハー」と、部屋に戻るとノック。
これが届きました。お前謝れ。戻って色々謝ってこい。

総括。紛うことなき三ツ星店です。食後感ではロンドンで同じく三ツ星のGordon Ramsayに似ているように思えました。AKELAREARZAKとは方向性が違いすぎるので比べちゃいかんと思いつつも、当店のほうが断然格上に感じたなあ。

基本的にあまり頭を使わないで食べることができる率直な調理で、ときめきや驚きには欠けるかもしれませんが、だがしかし繊細で誰にも真似できず間違いない料理ばかりでした。

また、特に記してはいませんでしたが、サービス陣の動きが完璧。北朝鮮の軍隊のように全く同じ動きで同時に皿を提供し、下げていく。ここまで優雅で統率のとれたレストランは中々ありません。日本だと洞爺湖のブラスぐらいか。

また是非お邪魔したいと思います。さらに、誰かがシャンパーニュに行くと聞けば是非おすすめしたいレストランでもあります。
枕元にはお休みのお菓子が置かれていました。あっという間にスイーツパラダイスな部屋の完成。


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