ジャン・ジョルジュ東京/六本木

アルザス出身。ニューヨークの三ツ星店を始めとして50数件のレストランを率いるジャン・ジョルジュ。満を持しての東京進出。ここまで期待され、そして風当たりも強かった料理人は中々珍しい。様々な料理関係のメディアで酷評の嵐。高すぎる、箱が貧弱、そもそも美味しくないエトセトラエトセトラ。なんだか可哀相なので私は静観していたのですが、「最近思いっきり料金を下げて方向転換したよ。ランチなら悪くない」という情報を得、すぐさま突入。
 1Fはカウンター席のみ。我々は2Fへ。た、確かに箱が貧弱だ。ファミレスみたい。だって元はチョコ屋(辻口博啓のショコラドゥアッシュ)だもんなあ。さすがにここでディナー、食事だけで24,000円税別は納得しない。ちなみに先述の方向転換によって、ディナーは10,000円と20,000円の2コースになったらしいです。
 クロスではなくランチョンマット。4,800円のプリフィクスコースを注文。ワインリストを見たところ、グラスシャンパーニュが2,500円だったのですぐに閉じ、炭酸水をお願いしました。いやあのね、24,000円のディナーに2,500円のグラスならまだわかる。4,800円のコースに2,500円のグラスはムリムリ。私が1兆円持っててもムリ。
 塩とバターを聞かせた熱々のビスケット。店中に漂う心地よい香ばしさはコレだったのですね。すごく美味しい。期待が高まります。
 本マグロのタルタルにアボカド、生姜のソース。マグロは上質。生姜のソースは生姜より生姜ですごい生姜でした。手作りジンジャーエールの濃縮版。人によっては暴力的でミスマッチと捉えるかもしれませんが、私にとっては意欲的で痛快に感じました。
 パン。皿ごとに種類を変え、そのいずれもが上出来。パンの質が良いレストランを私は高く評価するので、悪く無いじゃんジャンジョルジュじゃん。
 連れはホタテとカリフラワーの鉄板焼き。「ニューヨークみたい」とのコメント。語彙の貧弱さに身の縮む思いである。
 私は桜マス。こちらは世間並の焼き魚。魚の旨味は薄いし、かといってソースが凝っているわけではなくビネガー主体のシンプル仕立て。まずくはないが、うまくもない。ホタテとカリフラワーの鉄板焼きにすれば良かったなあと後悔。あ、プリフィクスの場合でもみんなでメニューを合わせたほうが、記憶に残って距離が縮まる食事になるんだって。ウチのおかんが言ってたから間違いない。
 花悠仔豚のコンフィ。こちらはグロテスクな皿でした。まず、漢字が読めない。読めないことがバレないように「豚のコンフィを」と注文しなければならない客の気持ちにもなって欲しい。そして肉。結構なポーションで見た目は喜ばしいのですが、香りと味が内臓臭くて食えたモンじゃない。並みの焼肉屋でもこんな臭いホルモン出しません。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いのか、歯ざわりもシーチキンのようで愉しみに乏しく、ソースは本マグロ時のジンジャーソースに酷似。ガルニチュールも先ほどの桜マスの皿とベクトルが全く同じで飽きが来る。プリフィクスというのは料理そのものを指すのではなく、ソースや調理法を指しているのではないかと穿った見方をしてしまう。
 パンは変わらず美味しく救われました。
 デセールは温かいチョコレートケーキにバニラアイスクリーム。こちらは滅法旨い。普通の皿を普通に出せばさすがの実力を感じてしまう。
 ミニャルディーズも手抜きナシ。八丁味噌を使ったキャラメルやお餅などは意気軒昂たる姿を感じます。
面白い形のカップでコーヒーをゆったりと楽しんでごちそうさまでした。

途中、色々と文句を書いてしまいましたが、全体的にはとても満足しています。これだけ食べて、ガス入りの水とサービス料・税も含めて1人6,000円ですよ六本木ヒルズで。これ以上、企業としての努力は厳しいレベルにまで到達しているのではないでしょうか。「ジャン・ジョルジュ」「NYで三ツ星」「日本では開業9カ月で一ツ星」などの事前情報が無ければ、その費用対効果の高さに快哉を叫びたくなるお店です。

サービススタッフの水準も申し分なし。節度を守った応対。視界には入ってこないけれど、必要な時にはすぐそばにいる。まるでとなりのトトロのような給仕である。

同じカウンターフレンチとしては近所にラトリエ ドゥ ジョエル ロブションがありますが、あちらは既に作品として確立していますので、デートはあっち、グルメ仲間とチャレンジならこっちです。

当店は油断するとすぐに独自の世界を紡ぎ出したがるきらいがありますが、アラカルトでクラシックな皿だけを指定したり、コースであっても「あまり特殊な調理は嫌だ」と臆することなく伝えれば、きちんと満足するものにありつくことができるでしょう。そんなことまでして当店に来る是非は別として。

名を馳せたメジャーリーガーが来日する際はこれぐらいコントラバーシャルであったほうがワクワクする。今後が楽しみです。


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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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