鮨 安吉/博多

「西麻布 拓」佐藤卓也が惚れ込み、「すし匠」中澤圭二に「世界で一番好きな寿司屋」と言わしめた博多のミシュラン2ツ星。辛口評論家の友里征耶まで「何度行っても満足」と公言。数年前から私も何が何でもお邪魔したいと熱望しておりました。

写真NGのお店ですので今回は活字のみ。http://www.con-quest.tv/002/01.php にいくつか写真が掲載されているのでご参考まで。

2回転営業の2回転目、20:30にチェックイン。7席のカウンターは当然に満員御礼。微発泡の日本酒「庭のうぐいす」からスタート。適度に甘く爽やかで思わずガブりと飲み下しそうになるのを我慢。最初のにぎりはヤリイカから。悪くないけれども、シャリとネタがバラバラに感じました。ショウガは細長いものを輪切りにしたもの。フレッシュ。

つまみに富山の白エビ。色気のあるネットリ感。甘い。自然と恵比寿顔。続いてカツオのヅケ。和からしをつけて。序盤にしてはやや重く感じます。和からしも香りが控えめ。お次は〆鯖を藁で燻したもの。チーズを燻製したかのような香ばしさ。「庭のうぐいす」が空っぽに。

カマスの棒鮨。春であり脂はまだまだ。棒鮨の食感もイマイチ。しかしアナゴの炙りで挽回。甘くなく醤油味が前面。慌てて福岡の銘酒「田中六五」を注文。上品。白ワインなら小売で5,000円払えるクオリティ。あわせてアナゴのキモ。上品な鶏のレバーに酷似。官能的。

赤むつ。本日一番のお皿。ぬらぬらと暴れまわる脂、程よい醤油味。カウンター席の全員が唸る。一方で箸休めの水茄子はピンと来ない。あってもなくても同じ。子持ちのシャコはカクカクと歯にまとわり付く食感が最高。鯛の子のめんたいは結構いけるけれども普通の辛子明太子でいいや。蒸アワビも大変美味しいのですが、どうしても水谷のアワビと比べてしまうので、まだまだ。

ホタルイカのさんが焼きには参りました。ホタルイカを叩いて味噌を練りこんで焼いたもの。苦味・旨味・香りが渾然一体となって舌を覆い尽くし、それをお酒で洗い流す。幸せそのもの。下戸は人生損してますな。続くヤリイカはまずまずの出来なのですが、ホタルイカの印象の影に隠れてしまう。イサキも同様印象なし。小鯛は裏ごしした卵の黄身を合えており、センスが感じられます。

おかわりは静岡の「正雪」。コハダはどシンプルで上出来。アジはとにかく魚の質が素晴らしい。驚いたのはマグロのヅケ。マグロは東京と高を括っていたのにお見事。他方、中トロはいわゆる普通の美味しい中トロで苦笑い。唐津の赤うにの握りは色は良くないものの味は確か。エビも小ぶりながらも旨味がたっぷりで上々。軽く煮たホタテはボンヤリとした味付けで、これなら生で口いっぱいに頬張りたかったなあ。

終わりの足音が近づいて来たので宮城の「日高見」。芳醇で終盤に相応しいです。再登場のアナゴは小さめの握りで物足りない。かんぴょうは望外に美味しく、巻物の見方が変わりました。ダシのきいたみそ汁で余韻に浸り、スフレのような見た目&食感の卵焼きで〆。スイーツのような味わいであっぱれじゃ。

お会計は銀座の半額。ミシュラン2ツ星は荷が重いけれども、この費用対効果は魅力的。ただし、地方の名店ランキングという意味では、小倉「天寿司」高松「鮨舳」に後塵を拝するかもしれません。2回転営業で明らかに疲れが見え、7席同時提供で慌しく所作が優雅でない。まだまだ店主はアラサー。将来が楽しみなお店です。3年後、どうなってるかな。また来よう。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。



http://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400101/40001706/