グランクラス/JR東日本

東北での用事を済ませ、東京へ。せっかくの機会なので、「陸の上のファーストクラス」という触れ込みのグランクラスを手配。
 通常の倍の値段。色々と大人の事情があるため、みどりの窓口で領収書分割交渉。きちんとグランクラス分だけわけてもらえました。
 グランクラスの車両は先頭か最後尾車両なので、通路を人が行き交うことは無い。
 3列シートという贅沢な空間使いです。荷物入れは飛行機のようにフタを閉めることができる。ところでいつも思うのですが、新幹線の荷物棚って危なくない?フタしようぜフタ。尖ったものとか重量物を平気で高所に置いて、急ブレーキしたらそれらが弾丸となって飛んでいくんだぜ?
 確かにシートはゆったりしていますが、しょぼいビジネスクラスレベル。そもそも新幹線は飛行機と比べてゆったりした座席設計なので、安い席でも特に不都合しない。したがって、グランクラスであってもそれほど満足度は向上しません。
 特大のポケットがあって乳児ひとりぐらいならおさまるな、と思いきや、ここまで椅子が倒れてきますよという意味でした。危ない危ない。
 乗車してすぐ、アテンダントの方が挨拶とおしぼりを下さいます。
 飲み物のバリエーションは国際線エコノミーと同等。
 まずはシードル。存外に美味。さすがりんごの聖地青森をつなぐライン。
 カクテルテーブルがあります。
 読書灯もあり。しかし飛行機のように照明が切られることはないので使うことも無い。
 椅子の操作盤。フルフラットまでは行かず、マッサージチェアレベル。乗車時間は90分なのでそんなに疲れませんが。
 スリッパ。こちらの仕様は国内線プレミアムクラスと同等。
 謎の雑誌。全然おもしろくない。東海道新幹線のWEDGEにしろ、どうしてこう、鉄道系の雑誌はつまらないのか。日本語らしき文章は書いているのですが、全然頭に入ってこない。
 そうこうしているうちに食事が到着。
 和食を選択。驚くほど低レベル。コンビニ以下。これならキオスクで牛タン弁当買ったほうがマシ。
 白ワインも仰天のマズさ。まず、香りが全くしない。ワインの価値って半分以上は香りじゃないのかね?品種の検討すらつかない。ゲロゲロでした。
 とちおとめのパウンドケーキ。これは結構良かったりする。
 おつまみのおかきも、ビジネスクラスよりも上かもしれん。
 赤は白に比べてマシでした。相対的にマシなだけで全然美味しくないですが。
 こういうこともあろうかと、キオスクで買っていたおつまみが役に立つ。本日一番の皿。
 チーズも上々。お酒が進む。
 日本酒は悪くない。香りも立ち芳醇。
ツマミが切れたので別料金を払って追加。こちらも上々。ってか別料金払った瞬間に美味しいとかどういうこと?

というわけで、ピンときませんでした。まず、風呂敷を広げすぎ。ファーストクラスどころかビジネスひいては国内線プレミアムにすら達していません。次に食事と酒が美味しくない。せめてコンビニやファストフードのレベルには達して欲しいところ。さらにはサービスもイマイチ。個体差はあるかもしれませんが、グランクラスの専属アテンダントは慇懃無礼なだけ。上質なCAとは滲み出る品格が異なる。座席は前述の通り。

そもそも東京仙台間の90分という短い乗車時間では価値を見出しづらいのではないか。4時間は必要かもしれません。企画倒れなんだと思います。食事やアテンダントやシートが犯人なのではなく、「グランクラスやろうぜ」と企画したオッサンどもが諸悪の根源。これなら普通の指定席をくるりんちょして6人コンパートメントで座って1人1万円の食料を持ち込んで大宴会したほうが遥かに楽しいと感じました。そういう意味で、こだまで同じサービスを提供すれば意外とウケるのではないかでしょうか。

とはいえ、陸路と空路を同じ土俵で比べるのも酷かもしれません。空路は数十年間世界を相手に戦ってきて今があるのに対して、陸路は敵がいませんでしたもんね。その中でこのようなサービスを打ち出した勇気は評価できます。一方で、「鉄ヲタ」という独特のマーケットが存在するのも確かであり、それなりの採算が見込めたためにサービスインに踏み切れたのかもしれません。

ともあれ、いずれ消え行くサービスでしょう。そういう意味で、乗るなら今のうちかもしれませんよ。


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