とにかく入り口がわかりづらい。これがドアだと思って引っ張るとミシって言って、ただの壁でした。もうちょい奥ね。
内装はモダンかつシンプル。ナリサワに似ているかも。カトラリーにはお箸が紛れ込んでいます。
ミルクパン。これは唸るほど美味しかった。シンプルなものが旨いってのはホンモノです。3つも食べちゃっただよ。
バターはあるけれどもあんまし使いませんでした。
前菜一品目。連れは生牡蠣をチョイス。私は今シーズン100ダースは牡蠣を食べているのでちっともうらやましくなんかないもんね。
私はニース風サラダ。なんの変哲もないサラダですが、旨いのである。店員の説明も至ってシンプル。「これは○○産の××で~」と滅多矢鱈に食材アピールするお店は二流。一流は黙っていても良い素材を出す。
シーチキンが格別。恐らくちゃんとしたマグロをボイルして丁寧にマリネしたもの。恩着せがましい説明はなくサラリと提供するところが心憎い。
連れはアスパラ。温玉がおいしそうでした。
私はオニオングラタンスープ。アランデュカスの際と同様、素朴な料理の見解を知りたくてオーダー。が、やはりオニオングラタンはこれ以上の発展はないのかもしれない。いや、間違いなく美味しいのですが、想定の範囲内でした。
連れのメインはミックスフライ三種盛。カニクリームコロッケ、カキフライ、エビフライ。「カニクリームコロッケが悶絶」とのこと。すごいなあと思ったのが、食材によって全てパン粉を変えているのですね。薄く油を吸ったり濃く油を吸ったりと。しかもそのパン、このお店で焼いているの。イノベーティブではない分、恐ろしいまでのこだわり。
私のメインはメンチカツ。松阪牛なんですわ。
断面はコチラ。そう、肉汁がこぼれ出ない。絵的には寂しいですが、全ての肉汁および旨味がパン粉におさまるように設計されている証拠。何もつけなくても美味しい。肉がうまい。
出色はタルタルソースとウスターソース。なんだこれ。信じられないほどうまい。特にウスターソース。多彩なフルーツ使いに旨味1,000ベクレル。脇役がうまいんだ脇役が。
スペシャリテのブラックカレー。和牛の脂のコクが凝縮され、果物の甘味で包み込み、スパイスでキリリと〆る。人生で最も美味しいカレーとなりました。というか、これはカレーじゃないな。何か別の食べ物のような気がする。福神漬けも何か特別なひとつの料理として確立する勢い。
一方でハヤシライスは普通。水を使わず野菜の水分のみで頑張ったようですが、インパクトに薄い。あ、説明するまでも無いかもしれませんが、ゴハンがマジうめーっす。宮内庁の献上米とかそんなだったはず。
連れのデザートはキャラメルのムースにナシ。
私はイチゴのミルフィーユ。これは特に印象ナシ。普通です。
いやー、美味しかった。美味しかった。ミスターナリサワのパワーが100として、ナリサワでは独創性に70を振り分けているのに対し、当店は美味しさに90を投資しているように感じました。とにかく美味しい。
ただ、ただですよ。レストランとしての総合力という意味では手放しで褒めることはできませんね。読モを連れてきて口説くとかは絶対にムリ。だって出てくる料理がハンバーグとかメンチカツなんだもん。彼女たちにとっては味そのものよりも、「私は今ココにいる」という非日常感が一丁目一番地であるため、やっぱし見たこと聞いたことのない料理、すなわちドライアイスに醤油をかけて食べるとか、ステーキの中にフォアグラが入っててさらにその中にウニが入ってたけど実はトリュフだったとか、そういうのなんですね。そういう意味で、当店は玄人好みであり一通り食べ歩いてきた人向けだと思いました。
一方、玄人にとってもどうでしょう。そう、洋食の割に高い。どうせ高いならレストラン吾妻のようにチキンカレー5,000円サンドイッチ7,000円みたいに振り切ってくれればワオ!という感じなのですが、うーん、コース食べてひとり10,000円というのは中途半端でリアクションに困る。あと、ワインの値付けが高すぎる。
と、いうわけで、難しいお店です。今のところ新店でナリサワ客が流れているとは思いますが、5年後も勝負し続けることができるのか。応援の意味も込めて、ちょいちょいお邪魔してみようと思います。あ、外人連れてくるのは良いアイデアかも。「洋食」という日本独自料理をどう捉えるのか見物。
Follow @takemachelin
関連記事
「結局、一番良いレストランはどこなの?」と結論を求められた場合は即答でナリサワ!と回答しています。訪れる度に新しい発見がある世界最高のレストラン。
- ナリサワ/青山一丁目 ←和のエスプリが効いた回。
- 東洋軒/赤坂見附 ←ナリサワ監修の洋食屋。
- ナリサワ/青山一丁目 ←ナリサワ・ダイエット・チャレンジの顛末。
- ナリサワ/青山一丁目 ←初夏の宴会「全部くれ」
- ナリサワ/青山一丁目 ←フレンチではなく「ナリサワ料理」
「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。