ル クラヴィエール 有栖川/広尾

カンテサンスのソムリエが開いたお店。料理に合わせてワインを出してくれる、と言うと通りは良いのですが、そうじゃない。ワインに合わせてツマミを出す。しかもその数15~24杯という耐久レース、世界で最もクレイジーなお店。

店の前でピンポンを押してドアを開けてもらう。防音の二重構造になっていて、なんだか秘密結社の秘密基地に秘密をしにきたような気分。
ベヒシュタインのグランドピアノ。なぜかとにかく音響にすごく凝ってます。ここまで音にこだわる飲食店はなかなか無い。そういえば恵比寿のバー、マーサも音が良かったな。
まずはシェリー。焼き鳥屋の継ぎ足しのタレのように、1922年から継ぎ足し熟成系のシェリー。濃厚で複雑で甘みも辛味もありました。
バスク産のサラミ。脂が美味しい。ただ最初にヘヴィな肉と、濃厚なシェリーで色々圧倒されてしまいました。
サクラエビ。
唐突にビール。
スコットランドのIPA。マンゴーのような果実味。すごく好き。
下北半島の海苔。年に3日間しか採れるチャンスが無いものらしいです。海苔というより昆布に近かった。
日本酒登場。濃い口で香ばしい。
このグラスで日本酒ですよ。ステムがガチで細い。
季節感たっぷりのオツマミで。ちょっと油っぽいかも。
こちらはキンキンに冷やした爽やかな飲み口。ガブガブ飲んで潰れる系。
「日本で最高品質」のワサビをサメ皮で丁寧に丁寧にすりおろす。と、白エビ。ワサビがムースのような舌触りで、甘い。
より一層爽やか。クリアな味。水みたい。
シャンパーニュはたっぷりと注いでくれます。第二ラウンド開始。こちらも爽やかでフルーティ。爽やか系が続きます。
蒸したハマグリ。むちゃくちゃデケー!ヌキテパよりデケー!一口で頬張って50回ほど咀嚼してシャンパーニュで流し込む。最高。
白魚。すごく大きい白魚。やはり油っぽかった。さすがに揚げのレベルが天婦羅屋には劣りますね。
ホタルイカ。マスタード味噌がわかりやすい味で美味しい。
このあたりから酔いがまわり始め、すんませんどんなだったか忘れました。イタリアのどこかのです。
大根を炊いたもの。意欲的ではありますが、うーん。。。
コルシカ島のワイン。すっきりとした味わい。大根とは別に捉え、ワインとして好きなタイプでした。
シメサバは適度な酸味でナイス。
こちらも何でしたっけ?忘れちゃった。でも、シメサバにぴったり計算し尽された味でした。
煮アナゴ。やはりベチャっとしてて、寿司屋には劣る。
アルザスワインと合わせるのですが、こちらはピンとこない。
ボラ!カラスミは食べるけれど、本体を食べるのは珍しいですね。皮目がパリっとして塩が効いていて良かった。
ムルソー。しっかりとした熟成。ボラにも良く合っていた。
ウズラ。塩だけでシンプルに。アジコイメで酒と合わせるにはちょうど良い調理。
赤に切り替わる。最初だからか控えめな味。ウズラ味を引き立てる風味。
酒粕入りのミネラルたっぷりな餌で育てた豚。こちらもドシンプルな調理。肉の味がきっちりと口腔内に染み渡る。
こちらもそれほど重くなく、未だスイスイいける。
ラム。脂が美味しく味が深く優しい。本日一番のお皿。
なんとも渋いラベルのワイン。非常に濃厚で複雑な味。ワイン単体だと圧倒されてしまい、決して好きなタイプではありませんが、ラムと合わせると奇跡的な旨さに昇華!このマリアージュはすごい。感激しました。
牛さん。悪くはないのですが、ラムが衝撃的すぎて、牛さん忘れちゃっただよ。
ワインの重さもデクレシェンド。ほどよく余韻が残ります。
茄子!?と思いきや、バナナでした。甘さが強くなく、そのかわりに果実味が強烈。おお、そういえばバナナってフルーツだった、と思い出させてくれる一品。
マスカットのデザートワインで〆。心地よい甘さでもっともっと飲めたかも。
イチゴちゃんでおしまい。

評価が難しい。レストランと扱って良いのかどうか。雰囲気の良い有料試飲会に近いかもしれません。価格に対する質や量も測りかねる。いや間違いなくこれだけイケてる酒を多種類味わえるという意味では極めてリーズナブルなのですが、おなかいっぱい美味しかった!という感情は決して芽生えることはありません。

調理がシンプルすぎるんですよね。手が込んでない。ただし極上の素材なので、それはそれで良いとも考えられる。そしてセンスは抜群に良い。ちゃんとした料理っぽくすると量を摂れなくなるので、やはりこのままで良いのかもしれません。

オーナーおひとりで調理もサービスも全てこなしている点も議論の余地があります。とにかく時間がかかる。開始から終了まで6時間近くかかりました。6時間ですよ6時間!睡眠時間と同等に飲み食い。あと一人スタッフがいれば、、、と何度も考えてしまいました。ただ、ひとりだからこそリーズナブルな価格を提供できるとも考えられるし、そもそものんびり飲み続ける店と割り切れば良いとも思えるし、、、うーん。。。

当然ですが、お酒も強くないとダメ。同伴者も強くないとダメ。かつ、6時間伴走できる親密度合いでないとダメ。ものすごく客を選ぶお店です。

是非はともかく、東京で最も面白いお店です。一生忘れないだろうな。
連れにお土産を頂きました。醤油を燻製にするというコロンブスの卵。銀座にレストランがあるらしいので、今度お邪魔しようと思います。パンも豆が滋味深く美味しかった。連れは世界中を駆け巡るお仕事をされており、行く先々でうまいものを見つけては、お土産として買ってきてくれる。レストランの意見交換についても海外ネタが多く大変参考になります。私は今夏、バスクに行こうと考えており、当然にバルセロナから乗り継ごうと考えていたのですが、「パリから電車がオススメ」となんとも玄人目線のアドバイス。恐れ入りました。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。
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