楽亭/赤坂

ミシュラン一ツ星。カウンターのみの正統派天ぷら屋。我々以外の客はやっぱり外人ばっかし。ほんとにミシュランは外人に信用されています。というかミシュランぐらいしか情報源が無い?

店内は全く油臭くなく清潔の極み。洋食は高級になればなるほど、華美な内装となりますが、和食の場合は、どんどんシンプルになっていきますね。まるで茶室のよう。そしておなじみ、無臭の無音。BGM無しは緊張するんだってば。
天ぷらのコースの前に、おつまみで刺身を注文。『天ぷらがうまい=タネの質が良い=刺身もうまいだろう』、という単純なロジックで追加したのですが、これが大当たり。味が良いのはともかく、量が半端ねぇ。スズキなんてひとりあたり15キレはあったぞ。光の加減であまり良く写真が撮れなかったのが残念。
さて本題の天ぷら。いきなりエビが4本も供されびっくりした。エビ自体の味は大したことなかったのですが、驚いたのはその揚げの技術。これが揚げ物と信じられないほどの軽さ。それでいてタネは適度に瑞々しくプルンプルン。
天ぷらっていうのは、液体である油の中に食材をくぐらせ、食材の中の水分を抜いていくというユニークな調理法。油の温度と水の沸点、食材の温度を見極めながら、音で調理時間を判断し、かつ、味付けで誤魔化すことができないという技術に差が出易い料理。しょっぱなから、その揚げの技術を思い知らされ期待が膨らみます。
稚鮎は適度な苦味が良い。
次のイカにはびっくらこいた。どこでこんなに甘くて柔らかいイカが売ってるんだ。調理技術だけでなく、素材もすんばらしいことを実感。
キス。外はサクっ、中はふっくら蒸した鰻のような歯ざわり。感動感動。
ゆり根と
ギンナン、
谷中ショウガの天ぷらは印象に残らず。箸休めですね。
メインのアナゴは圧巻。ひとり一匹、ドデカイやつ。なのに、ぜーんぜん油っこくなく、それでいて、アナゴ自体の脂の旨味は膨らむかんじ。生臭さは皆無でとても上品。ペロりと平らげてしまいました。
〆は小柱のかきあげで天丼。おいしいんですが、わざわざ天丼にしなくて、揚げたてにかぶりついたほうが良かったかも。隣のオッサンは天茶(天ぷらでお茶漬け)にしてて、それはそれで興味アリ。

とても満足でした。水谷、楽亭と和食が続いたけど、両方とも実においしい。今まで大枚叩くならフレンチにすべきと信じきっていたのですが、考えを改めます。和食の高級店は本当においしい。クセになりそうだ。

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天ぷらって本当に難しい調理ですよね。液体に具材を放り込んで水分を抜いていくという矛盾。料理の中で、最も技量が要求される料理だと思います。
てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。

楽亭

鮨水谷/銀座

ミシュラン三ツ星。ザギンdeシースー代表。クラブが密集するビルの地下にある、カウンター9席のみの小さなお店。華美な調度品など一切無く、これぞ"静謐"。無音、無臭。BGMが全く無く、自分の所作の衣擦れまで聴こえるってのは緊張する。

寿司屋にお決まりの、ペンギンマークが付いたガラスのネタケースは無く、ネタは木箱に並べられているだけ。もちろんお品書きは無く、全てが時価。

客はフランス人が3人、中国人が2人と、私以外全員が外人。すごいぞミシュランの影響力。日本人と外人が真剣に対峙して、黙々と食べ続ける光景はちょっとコミカル。久々人間の声を聞いたかと思うと、フランス人がミョウガを指差し「これは何?」と一生懸命に尋ねていましたが、さすがに店内の誰も答えられていませんでした。さっき調べた所によると、ミョウガは"Japanese ginger"って言うらしいです。ほんまかいな。

写真撮影はNG。外人が窘められてシュンとしていました。極東にまで来てバカ高いお金を払って写真NGはちょっと可哀相。

ヒラメ、コハダ、イカ、赤身、中トロ、大トロ、ミル貝、小柱、赤貝、タイラ貝。美味しいのですが大騒ぎする程でも無いなあ。勝どきの"はし田"のほうがポーション大きくてタイプだなぁ。三ツ星って言ったってこんなもんか、 と、心の中で軽くケチをつける。

んが、次のネタ"煮アワビ"で考えが一変。なんだっ…!これは……っっ!とカイジばりのリアクションで、本当に本当にびっくりし、腰を抜かしました。世の中にはまだこんなにもうまいものがあったのか。こんなにもうまいものが世の中にあって良いのか。食べ物でこんなにも感動し、感激したのは本当に久々。

アワビってのは特に味が無くて、コリコリと歯応えを楽しむだけのもので、私はこれといって好きなネタではなかったんですね。その先入観を完全に覆す、鳥肌が立ち涙が出るほどの美味でした。

そこを起点に感動の連続。

アジ:肉厚。一般的にアジは安魚とされていますが、常識を覆すエレガントな味。

エビ:これも肉厚。歯応えがすごい。そして広がる海老の甘みに絶句。

穴子:口に放り込んだ瞬間にシャリと穴子が渾然一体となって崩れ落ちる。宮島の穴子を超えるものは無いと信じきっていたのに、あっさりと凌駕。

うに:ねっとり濃厚に甘いんですが、すーっと抜けていく。全くしつこくなく、何リットルでも飲みたい程。

玉子:ふわふわしっとり、濃厚な洋菓子のよう。

追加で鉄火巻をお願いして満腹。寿司屋で満腹だなんて、なんて贅沢!お店を出てから近くのバーニーズで買い物しようとしたんですが、寿司の記憶があまりにも鮮烈すぎて、全くお洋服が目に入ってきませんでした。

うおー満足じゃー。また絶対来るぞー!

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。


http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13016524/

富士山

3年前からの悲願、富士登山に挑戦してきました。

私は酷く小心者であるため、装備には5万円以上をかけ完璧。東京駅からの登山ガイド付きバスツアーでまぁ死にはしないだろう(ちなみに前週に落石で1名死亡、前日に遭難で1名死亡、1名行方不明)。

集合場所は06:30に東京駅八重洲口。集合時刻を10分過ぎてもバスは到着せず1アウト。ようやくバスに乗り込んでも、30分以上も出発せず。どうやら遅刻者を待ってるとのこと。2アウト。

途中、談合坂パーキングエリアで休憩。ハーゲンダッツがアイス4個500円キャンペーンやってて即購入。やっぱハーゲンダッツうまい。朝9時にハーゲンダッツを食べたのは生まれて初めてでした。復路の休憩でもおやつにすることを決意。

富士スバルラインを駆け抜け、五合目吉田口に到着。この時点でも標高は2,000mを超えるため、1時間ほど休憩を取り高度順応。まぁそれにしてもすごい人人人。今日は金曜日ですよ。

集合時刻に集合場所に行くと、バスに居たメンバーは全員いるのですが、ガイドだけが不在。10分ほど不安なひと時を過ごしているうちに、目ざとい方が、あそこにバスガイドがいる、と発見し移動。「すいませ~ん。こっちのほうが広いので、ここを集合場所に変えました~」こいつ、正気か?無連絡だぞ?3アウトチェンジ。

さて、ここからは登山ガイドにバトンタッチ。60ぐらいのじいちゃん。筋肉隆々の体躯でヒゲもじゃ。まさに山の男って感じ。「Oだ。今回はこのグループで登る。わかっていると思うが、団体行動だ。勝手に進む者、個人で行動する者は許さん。尚、遅くてついてこれない者は置いていく。ひとりの脱落者の為に全員が待つ必要は無い」こ、こいつはボケているのか本気で言っているのか!?本当に登山ガイドか?参加者全員の不安が最高潮に達したところで出発。点呼など無しのまま。

登山開始数十分は緩やかな登り道。いきなりOがペースアップというかむしろ小走り近くなり、Oと参加者との間に10m近くの差が生まれる。やぱい、あいつは遅いから置いていった→全員リタイア→今日の仕事は終わり、を狙ってるんじゃないか!?ということで、全員猛ダッシュでついていったところ、Oは木陰で立ちションしてました。おお、富士登山ガイドが富士山で立ちションしてる。富士山はゴミが多くて世界遺産登録されないと、どこかで聞いたことがありますが、犯人はOです。ちなみに、目だったゴミなんて落ちていなかったのですが、都市伝説?

六合目までは楽勝。七合目に向かうあたりで完全な火山礫/岩場地帯になってちょっとダルい。「食べる酸素」っていうタブレットを食べながらプラシーボ効果を狙う。八合目あたりになると完全に岩場。プチロッククライミングな場面も。

このあたりで同行者が高山病でエグり始める。真っ青な顔ではぁはぁ休憩してるのに、なんでもないオッサンに「どこから来たの?東京?近くていいなー。おれは宮崎だよ」と話しかけられ、無視するわけにもいかず必死に相手しており可哀相でした。

それにしてもOは酷い。勝手に立ち止まって休憩するし。気が付いたら出発してるし。突然立ち止まったかと思うと、知り合いと談笑し始めるし。よそのツアーの人なんて、「はーい、今から休憩でーす。点呼とりまーす」とか、登山ガイドとして当然のことを当たり前のようにしてるのに。。。

天候は良くない。結構雨が降ってます。"降る"だけでなく、山の下から吹き上げて来る場合も。下からの雨なんて、フォレストガンプのベトナム出征でしか聞いたこと無い。だけれども、ゴアテックス素材のレインウェアを着てるのでへいちゃらで、雨に拠るストレスは全くありませんでした。やはり装備は重要だ。ゴアテックスってのは、外からの水は弾くけど、内側からの汗とかの水蒸気は透過するという不思議な素材。

結構雨が本降りになってきたところで山小屋到着。「ガイド付きツアーとは思えないほど早いペース」と、山小屋スタッフ談。Oはやはり素人無視のスパルタガイド。

布団に案内され一息つくと、「あなたはここの山小屋じゃない」と宣告。枕元にOが立っており、「山小屋を間違えた。すみませんでした」とのまさかの謝罪。いや、ガイドが宿を間違えるとか。

豪雨の中、さらに30分ほど登るとようやく正しい山小屋に到着。スタッフが横柄。大声で、濡れたカバンを拭けだの、奥につめろだの、畳が濡れるからブルーシートから出るなだの、食事は時間通り来いだの、なんでこんなに指図ばっかりされにゃならんわけ?

客はもちろん勝手がわからないからグズグズしてしまって、それに対してスタッフは青筋立てて大声で叱りまくるし。怒鳴ってるヒマがあるならスタッフがカバンをタオルでさっさと拭いて、全部ビニール袋につっこんでいけば良いのに。富士山を食い扶持にしている奴らは性格が悪い。

1つの湿っぽい布団に2人というギュウギュウ詰め状態。高度3,400mだから仕方なし。夕食はうまくもまずくも無いカレーでしたが、量だけは多かった。 なぜならバリバリ高山病で食欲が無い同行者のカレーまでもらったから。

着替えもできず、歯磨きもせず、コンタクトだけ外して18時就寝。就寝って言っても、10分おきぐらいに登山客がチェックインし、そのたびにスタッフが大声で叫びまくるから寝られるわけが無い。結局一睡もできず、深夜0時に出発準備。こんなことなら仮眠なんてしないで、一気に登ってしまえば良かった。

00:30山小屋出発。殆どの登山客がご来光(日の出)を目指してこの時間あたりから登り始めるので、渋滞で中々進めず。なんだけど、Oの異常なペースを考えるとこれぐらいで丁度良い。

ヘッドライトの灯りが霧雨を切り裂いていくのが幻想的。来た道を振り返ると、何十何百というヘッドライトが連なり列を成しているのが思いのほか素敵な光景でした。富士山は24時間誰かしら登ってるんだなぁ。

03:30に無事頂上へ。息もそれほどあがらず、割と楽勝でした。そんなことより、異常に寒い。気温は5℃だったんですが、風が台風のそれみたいに強くて、体感温度はもっともっと低いはず。あんなに寒い思いしたのは人生で初めてかもしれません。

山頂にある山小屋に避難し暖を取りつつご来光を待つ。全てが驚きの価格でしたが、うどんなんてもう、体の芯からあったまって、それはそれは心地好い食べ物でございました。

04:30、空にオレンジ色が広がって来た頃に再度外へ。小雨が降っていたのですが、太陽が顔を見せる瞬間に奇跡的に雨が止み、

雲に隙間ができ、バッチリご来光を拝むことができました。これには感激。自然の風景でこんなに感動したのはナイアガラ以来です。

心はいつまでも見とれていたいのですが、さすがに寒すぎて体が言うこと聞かず、山小屋へ再避難。06:00に下山予定だったのですが、「もうみんな見たか?なら、05:30に変更」と相変わらず専横君主O。

05:10に再びOが「もうみんな大体いるから、出発する」。大体ってあんた、ほんとそんなんで良いの?

下りは思いのほか辛い。心肺機能的には全然へいちゃらなんですけど、太ももを酷使するからだんだん足が震えてくる。それでも500mも下れば気温は上がり、風はおさまり、景色は綺麗と、中々快適な下山道でした。

1時間ほど下ると、「ここからは分岐もなく一本道だ。オレは次の仕事があるから急いで下山する。それでは解散」と、O。

ひととおり呆れきってからの、私の下山は速かったです。なんかこう、まじめに一歩一歩踏みしめて下っちゃだめですね。下山道は砂礫帯なので、ちょっとぐらい滑ったりコケてもいいやぐらいのつもりではい、はい、よっ、ほい、みたいな感じでテキトーに小走りぐらいが丁度良い。1,000人ぐらいごぼう抜きして3時間弱で下山。おお、登りの苦労はなんだったんだ。

08:30にはすっかり着替え終わって超ヒマ人でした。ツアーバスの出発時刻は13:00。ゲーセンやカラオケがあるはずもなく、小説なんかも荷物になるので持ってきていません。例年稀に見るヒマさでした。

ぼーっとしてると憤慨しているグループが。「Oに06:00集合だからってその通りに行ったら誰もいなくて、06:30過ぎまでずっと待ってたのに!!」ああ、やはりいたか被害者が。ほんとに遭難とかしてたらどうするわけなんでしょう。

初日のバスガイドと合流。のはずが、このオバハンも遅刻。バスに到着したら運転手が不在。この時点で皆さんの怒りは富士の山よりも高く。バスが動き出した途端、皆がバスガイドに罵詈雑言を浴びせかけ、それはそれは凄惨な光景でした。まぁこれはもはや個人の問題ではなく、本ツアーを催行した"サンシャインツアー"という会社が悪い。もうこんな会社TTYNです。

総括すると、意外にも富士山はラクチン。あまりにも楽勝だったので、グロッキーな同行者の荷物を少しずつ持ってあげたりしてたのですが、気が付いたら彼女の荷物はカラのリュックひとつとなりました。女性が男性と登る場合は最初から手ぶらをオススメします。

それにしても、やはりあのご来光は感動。皆様にも自信を持ってオススメします。ところで冒頭にも述べた「富士山はゴミだらけで世界遺産登録されない」ですが、最初から最後までゴミなんて全然落ちておらずキレイなもんでした。その代わり、そこで働く人々の心が腐っているので、やはり世界遺産登録はされることは無いと思います。

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国内旅行もすごく大事にしています。なんてったって安い。みんなハワイなんか行くだけでなく、日本の名所と美食を巡る人生の豊かさも知って欲しいな。