都内ではトップクラスに予約困難なイタリア料理店「三和(さんわ)」。食べログではシルバーメダルを受賞し、百名店にも選出されています。店舗はプラチナ通りから一本入った住宅街の一角に位置し、外階段を下りた先には店名を控えめに刻んだ金属製のサインが掲げられるのみ。過度な装飾を排した隠れ家的なファサードです。
インテリアはグレーを基調としたミニマルでシックなカラースキームを採用し、照度を抑えて落ち着きのあるモダンな雰囲気が創出されています(写真は食べログ公式ページより)。オープンキッチンに面したカウンターが特等席ですが、奥の個室風のテーブル席も特別感があって魅力的。
渡邉大祐シェフはピエモンテなどで腕を磨き、帰国後はフレンチの
「シェ・イノ」でも経験を積み、中目黒の炭と薪を使ったイタリアン
「RODEO」の立ち上げから料理長を務めました。
ワインは意外にもフランス産のものが多く、また、カジュアルなラインだと南アフリカ産などを織り交ぜて工夫しています。
ソムリエールは相変わらずチャーミングという言葉がピッタリで、豊臣秀吉に比肩する懐への飛び込み具合です。
まずは冷製仕立てのムース。下層のモッツァレラのミルキーでまろやかなコクを土台に、中間層のバジルが爽やかな清涼感と青々しい香りを添え、上層のモモとトマトが甘酸っぱいフルーティーな余韻で仕上げます。層を崩しながら食べ進めるごとに味わいのグラデーションが変化し、乳製品のクリーミーさとハーブの香り、果実の甘みが口の中で重なり合う、夏らしい涼やかなひと皿です。
泡のツマミ特集。白眉はニョッコフリットで、揚げたての熱を帯びた生地に極薄の生ハムをふわりと乗せ、脂がじんわりと溶け出す変化を楽しみます。こういう料理が常に楽しめる生活を送りたい。
トウモロコシの温かいスープ。青森県産の高糖度品種「嶽きみ」を用いており、余計な調味を排し塩と素材の力だけで引き出された味わいは、まるで蜜のように濃厚でありながら、後味には雑味のない自然な瑞々しさが広がります。
きりりと冷水で締められた細麺パスタ。鮮やかなジェノベーゼソースがしっかりと絡みつつ、ムラサキウニやツブ貝といった魅力的な素材が並びます。ウニの濃厚な甘みとクリーミーな磯の風味に貝のコリコリとした心地よい歯応えが良く響く。
穴子のフリット。外はサクサク、中はふっくらとした穴子のフリットに、白ワインをベースにハーブを効かせたソースの爽やかな酸味と芳香が寄り添います。穴子本来の上品な脂の甘みとソースの軽やかな酸味が調和し、仕上げの山椒がピリッとした刺激と爽快な香りを添えることで全体が引き締まる。白ワインがグイグイ進むひと品です。
グリーンアスパラとパルメザンチーズのリゾット。アスパラの青い甘みが米に染み、チーズは溶けてソースになり、塩気と旨味で野菜の水っぽさを無力化します。リゾット特有のねっとりした乳感はありつつも、グリーンの香りが勝つため重く感じにくいのがいいですね。
お口直しに紫蘇のグラニテ。口に含むとひんやりとした冷たさとともに、ドンパッチのようにパチパチと弾ける食感のサプライズが加わり、味覚だけでなく食感でも楽しませてくれます。
メインはエゾ鹿。炭火の香りが先に立ち、鹿特有の鉄分と赤身の甘みが続きます。噛み締めるほどに鉄分を含んだ赤身のピュアな旨味と澄んだ肉汁が溢れ出す。コースの頂点としてボリュームはありつつも、ソースで塗り込めず焼きそのもので勝負しているひと皿と言えるでしょう。
付け合わせも香ばしく焼き上げられ、肉の野性味に奥行きを添えます。とりわけジャガイモが素晴らしいですね。ホクホクとした食感とともに自然な甘みが際立ち、赤身肉の酸味と素晴らしい対比を見せてくれました。
パスタはフレッシュトマトのピチを選択。トスカーナ伝統の極太手打ちパスタであり、うどんを思わせる力強い弾力と、もちもちとした噛み応えが最大の魅力です。ソースは加熱しすぎないためトマトの青い香りと果肉の水気が残り、瑞々しいという表現がピッタリの味覚です。
デザートは生チョコテリーヌをチョイス。冷製仕立てであるもののナイフで切るとねっとりし、口に含むと体温でとろりと溶け始めます。カカオの苦味が先、乳脂肪の甘みが後から追い、後味もじっくりと長い。コースの締めくくりにふさわしい、濃厚でありながら重すぎない、洗練されたスイーツです。
カモミールティーを楽しんでフィニッシュ。ごちそうさまでした。なるほど変わらず料理が直球勝負で分かり易く、エゾ鹿などは天下一品と評すべきクオリティの高さです。ただ、
前回はもっと飲み食いして3万円と少しに落ち着いたのですが、今回は4万円にも迫る勢いであり、流石にちょっと高いなあという印象を抱きました。味は間違いないので、金払いの良いおぢと共にどうぞ。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。