白金台の「ジョンティ アッシュ(Gentil H)」。ミシュラン1ツ星を獲得しゴ・エ・ミヨ にも掲載されるフランス料理店ですが、
以前お邪魔した際にパっとしなかったので暫く足が遠のいていました。しかしながら、ある筋から「今のシェフは素晴らしい」との情報を得たので10年ぶりにお邪魔します。場所はプラチナ通りから1本入ったところにあるビル2階。白金台駅から歩いて5分ほどでしょうか。
店内は焦げ茶主体のシックなインテリア(写真は食べログ公式ページより)。白いテーブルウェアが映え、程よい緊張感と居心地の良さが共存します。我々はダイニングにお邪魔しましたが、個室もあるようです。
平野敬祐シェフは
恵比寿のロブション出身で、2018年より当店の厨房を預かっているようです。故郷・静岡県の食材を積極的に起用するスタイルで、地元への愛情が溢れ出ています。
当店はワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」の直営であり、ワインのセレクトはお手の物。なのですが、ペアリングだと量が少なそうだったのでやっぱりボトルで注文。フランス産のワインが中心で、最も安価なシャンパーニュが1.8万円と、この手のレストランとしては妥当な値付けかもしれません。
アイスかムースかな、と思いきや、何とコチラ、アオリイカです。中にはサフラン風味の米のサラダが詰まっており、お米のパラッとした食感がアオリイカのねっとりとした食感に良く合う。ソースはイカスミ主体なのですが、どこかお好み焼きソース感のある親しみやすい味わいで、うま確で初手から心を掴まれました。
続いてシマアジ。ロブション出身者らしい華やかなプレゼンテーションであり、脂はバチバチにのっているものの、夏らしい軽やかな調味により洗練された味わいに仕上がっています。枝豆のほか生ハムのブイヨンも用いており、魚・豆・豚の異なる旨みが交差する、複層的な味わいの構成です。
フォアグラ。これがフォアグラかとキュンタヒな盛りつけです。口に含んだ瞬間に体温でなめらかに溶けていくように設計されており、その濃厚でリッチな脂のコクに対してシトラス風味のマンゴーが最高の相棒として添えられています。果実の芳醇な甘みに柑橘のキレのある酸味をプラスすることで、フォワグラの重さを感じさせず、後味を華やかに調和させています。
パンは一切おめかししていない素朴な佇まいですが、穀物の甘みと滋味が凝縮されています。添えられるバターは瞬間的に燻製されており、バター本来のミルクの甘みの奥にスモーキーな香ばしさが重なります。
ハモ。ふっくらとジューシーに蒸し上げており、繊細な食感と滋味を保ちます。とろみのある滑らかなスープは冬瓜を土台としており、干し貝柱による中国料理的な旨味のアクセントも感じられ、日本料理におけるハモ料理とは方向性が大いに異なり興味深い。
スペシャリテの「うなぎパイ」。浜名湖産の鰻を用い、フレンチのパイ包み焼きの技法を適用しています。ザリガニに基づく甲殻類の旨味も派手派手で、トリュフもぶっかけられて口の中が大騒ぎ。それでいて全体としての味わいはキレイに調和しており、鰻料理の未来を見た気がしました。
アイナメ。上品な甘みと身の締まりが自慢のお魚です。お隣は花ズッキーニのファルシであり、魚介の風味がたっぷりと詰まっています。お魚の味わいの良さは当然として、季節感と彩りが備わっているのがいいですね。アイナメの力強い旨味にハーブの爽やかな酸味とレモングラスの清涼感ある香りの泡が重なり、重厚でありながら軽やかな後味へと導く立体的な構成です。
メインはエゾジカ。完璧な火入れのもと、しっとりとした赤身の柔らかさとエゾジカのクリーンで力強い旨味を堪能します。ソースからは柑橘のフレッシュな酸甘さが感じられ、ジュニパーベリーの森を思わせる清々しい香りが鹿肉の自然な風味をさらに引き立てます。何ともモダンで上品な仕上がりのジビエ料理である。
デザートひと皿目はトロピカルフルーツのメリメロ。「メリメロ(méli-mélo)」とは
札幌の予約忘れドタキャンで有名なフランス料理店ではなく、フランス語で「ごちゃ混ぜ」「寄せ集め」の意。旬のトロピカルフルーツを組み合わせ、様々な甘さ・酸味・食感を同時に楽しめる夏らしいデザート。加えてバニラやココナッツの風味がトロピカルな世界観をさらに深め、エキゾチックな余韻を口の中に生み出します。
メインのデザートは葡萄のパヴロワ。ロシアのバレリーナ、アンナ・パヴロワに捧げられた伝統的なデザートであり、外側はサクサク、内側はふわりとしたメレンゲが特徴で、上に盛られた葡萄がジューシーな甘みをもたらします。ベルガモットやラベンダーなど色んな香りがする。視覚的にも美しく、当店のコース料理に相応しいフィナーレです。
お茶菓子もキッチリと用意され、ここまでに提供された数々の素晴らしい料理の余韻を穏やかに長引かせてくれました。
以上の料理が22,000円で、ワインやら水やらサービス料やらでお会計はひとりあたり5万円弱。イマドキのフランス料理の王道ど真ん中であり、このシェフは本物だ。BIG LOVE。サービス陣の立ち振る舞いも素晴らしく、10年前にお邪魔したレストランとは全く別物に感じました。これだからレストラン巡りはやめられない。
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