白金において6年連続で1ツ星を獲得した
「ラ クレリエール(La Clairière)」が約1年間の充電期間を経て南青山の地で再始動。開業後わずかな期間で1ツ星を獲得(継承?)し話題となりました。店名はフランス語の「marge(余白・額縁)」と英語の「merge(融合)」を組み合わせた造語だそうです。
洞窟のようなエントランスを抜けダイニングに入ると直線を排し曲線を多用したレイアウトが広がります(写真は食べログ公式ページより)。グレーを基調とし落ち着いた雰囲気。意外とこぢんまりとした規模であり、5つの円卓に個室がひとつでしょうか。
アミューズから凝っていて、今後の展開に期待を持たせてくれます。ゲストの到着に合わせてアツアツのひと品を用意してくれるお店にハズレはありません。
「キャレドブール」といって、バターをたっぷりと含んだ立方体のパンに味覚を重ねていきます。7種のトッピングから好きなものを選ぶのですが、こちらは全部盛り。キャビアが盛り盛りであり気分は上々です。
フランには蕎麦の風味をきかせており、ぷっくりと太った牡蠣を合わせます。お出汁(?)には和のニュアンスをきかせており、牡蠣蕎麦を食べているかのような錯覚に陥ります。
白子のムニエル。バターをたっぷり用いて焼き付けており、表面のカリッとした香ばしい歯ざわりを楽しみつつ、熱々で濃厚なクリームも堪能します。ソース(?)の土台はトマトであり、穏やかな酸味と白子特有のミルキーな甘みとの対比を楽しみます。
パンは3種の用意であり、お料理に合わせてお出し頂けます。
ロブションのような派手派手な味覚ではなく、いずれも料理を邪魔しない素朴な構成でした。
鰻はキュウリとゴハンと共に海苔巻きで頂きます。普通に美味しいのですが、モダンなフランス料理店でウナキュウ巻きを食べる必然性は感じられませんでした。お皿に盛りつけるのでなく鮨屋のように手渡しされるのも抵抗がある。
鰻に湯葉、白トリュフ。器がブルゴーニュグラスのように大きく膨らんでおり、白トリュフの豊潤な香りを堪能できるよう食体験が設計されています。鰻のリッチな風味に白いダイヤの官能的な香りが良く合う。湯葉のシルキーで優しい大豆の中和機能も見事です。
ボタン海老はシェリー酒に漬け込み当店流の酔っ払い海老に。ねっとりと舌に絡みつくボタン海老の甘味にシェリー特有のナッツのような熟成香と深みが染み渡り、海老の風味を立体的に引き立てます。強いコシと滑らかな喉越しを持つ素麺との組み合わせも興味深い。ウニもタップリと組み込まれており、何とも贅沢なひと品です。
甘鯛は鱗焼きで楽しみます。高温の油で立たせた甘鯛の鱗はサクサクと軽快に砕けて香ばしく、その下の身はふっくらと繊細な甘みを湛えています。ソースにはカリフラワーとカチョカバロを用いており、カリフラワーの土っぽく滋味深い甘みとチーズの凝縮されたコクと塩気が溶け合ったソースが濃厚オブ濃厚。本日一番のお皿でした。
グラニテは柿をベースとしており、その繊細な口どけはカキ氷専門店としてスピンアウトさせたいほどの完成度。ガリガリ君みたいな氷菓を出す雑なフランス料理店は反省するように。
メインは米麹で熟成させたジャージー牛。隠し包丁(?)が入っており、また酵素で分解されているのか繊維もほどけて柔らかく、赤身ながらシットリと柔らかな口当たり。濃厚な鉄っぽい風味と麹由来のふくよかな甘みとナッツのような深みが良く合う。薪火由来のスモーキーな香りも食欲を掻き立てます。
添えられたサラダも目を瞠る質の高さ。葉野菜が持つシャキシャキとした食感と特有のほろ苦さが心地よく、肉料理の長い余韻を潔くリセットし、次のひと口をより鮮烈に感じさせる機能を果たします。
小さなデザートは杉の香りが漂うひと品。先のグラニテもそうですが、当店はこういった冷たい系のデザートの取り扱いが上手く感じます。
一方で、メインのデザートはボリューム感に乏しく、やはり
ロブションのような派手派手な芸風とは距離があります。私はフランス料理ではカロリーの半分はデザートで摂りたい派なので、まあ、このあたりの好みはひとそれぞれかもしれません。
お茶菓子のクオリティも素晴らしく、やはりスイーツの専門店としてデビューしても成功を収めそうな気配を感じました。
料理のレベルの高さはもちろんのこと、サービススタッフも歴戦の勇者たちが勢ぞろいしており、レアルマドリードのような層の厚さを感じます。客層も実にヘヴィであり、若いカップルが事情を知らずに予約を入れると圧倒されるかもしれません。もちろん支払金額にも圧倒されます。
(ホテルを除いては)久しぶりにゴリゴリのグランメゾンが登場し、2025-2026年にかけての注目度ナンバーワンは間違いなし。今後の展開が楽しみです。
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