高級レストラン"また行きたい"偏差値【2026年最新版】

  • フレンチ イタリアン 中韓焼肉 和食 その他 
  • 私の主観的な"また行きたい"偏差値です。味や店の優劣ではありません。


高級レストランでナメられないためのマナー集

高級レストランには一種独特の雰囲気があります。「なんだか店に値踏みされているようで居心地が悪い」と感じる方が多いかもしれませんが、その通り、店は客のことを値踏みしています。

「お客様は平等に扱う」なんてのは大ウソです。レストラン業界には『ソワニエ(大切におもてなしするべき客)』という言葉があるくらいであり、一流の客や金払いの良い常連・重い客に対しては恭しく接し、どう見ても場慣れしていない一見客に対しては、人間だもの、おざなりな対応になるものです。

そこで、「高級レストランにあまり行ったことは無いが、ナメられたくはない」と考えるワガママな貴方のために、高級レストランにおけるマナーを整理しました。結構な長文となってしまったので是非ブックマークして頂き、必要に応じて読み返して頂けると幸いです。

祇園 川上(ぎおん かわかみ)/祇園(京都市)

1960年創業の「祇園 川上(ぎおん かわかみ)」。花見小路から一筋西の西花見小路に位置する築100年以上の町家を改装した店舗であり、歴史的な趣きを感じさせる世界観。ミシュランでは1ツ星を獲得しています。
お店は結構大きくて、10席のカウンターのほか、本館・別館に合計7つの個室が用意されており、30名近い宴会にも対応可能とのこと(写真は公式ウェブサイトより)。歴史ある高級店ですがゲストに緊張を強いることなく、アットホームでリラックスできる接客です。
お酒はそこまで高くなく、日本酒で1合2千円弱といったところでしょう(原則的に220ミリリットルでの提供)。お店の方に相談すれば、料理に合う飲み物をご提案して下さいます。
「コノワタの茶碗蒸し」で幕開け。滑らかで上品な出汁の効いた玉地にコノワタの凝縮された塩味と独特の風味が加わります。熱々の温度帯が珍味特有のクセを心地よい旨味へと変え、単なる茶碗蒸しでなく酒を呼ぶ逸品へと昇華されています。
アワビのお寿司。シャリは肝のソースと和えられることでリゾットのようなねっとりとした食感と濃厚なコクを纏っています。その上に鎮座するアワビは水のように柔らかく、噛みしめるたびに深海のような旨味が溢れ出します。和食の枠を超えたクリーミーな余韻が長く続き、冷酒はもちろん重めの白ワインとも合わせたくなるような力強い味わいです。
季節の移ろいを盆上に映したかのような華やかな八寸。中でも特筆すべきはアンキモ。濃厚でクリーミーなアンキモのペーストに刻んだ奈良漬けを混ぜ込むことで、奈良漬け特有の酒粕の香りとカリッとした食感が加わり、アンキモの脂っぽさを絶妙に中和させています。まさに酒泥棒と呼ぶにふさわしい味わい。手前の但馬牛は噛むほどに上質な脂の甘みが広がり、冷めてもなお柔らかく、肉本来の力強い旨味が繊細な京料理の中で確かな存在感を放っています。

続いてフグぶつ(写真撮り忘れ)。薄造りとは異なる筋肉質な弾力があり、そこにゼラチン質の皮のコリコリとした食感が重なります。味わいの核となるのは全体に絡められた白子のペーストで、そこへポン酢餡の爽やかな酸味が加わることで、濃厚でありながらも後味はキレ良く仕上がっています。
お造り。近海物を思わせる鯛は程よく角が取れ、滑らかな舌触りと共に上品な甘みが広がります。イカは甘味たっぷりで口の中でとろけるよう。寒ブリは冬の王様らしく脂の乗りが抜群で、醤油を弾くほどの濃厚さがありながら決して重たく感じさせない鮮度の良さがあります。ホッキ貝は特有のシコシコとした食感と共に、磯の香りと強い甘みが噛むほどに滲み出る。
お椀は京都の冬を象徴する白味噌仕立てですが、その濃度は特筆もの。まるで上質なコーンポタージュのようなクリーミーさと濃厚な甘みを湛えており、具材の淀大根は箸がすっと入るほど柔らかく煮含められ、大黒しめじの食感がリズムを生みます。主役のクエは、脂の乗ったゼラチン質が熱々の汁に溶け出し、汁のコクをさらに深めています。
サワラのかけじょうゆ焼き。ふっくらと焼き上げられたサワラは、身の中に水分と脂が閉じ込められており、箸を入れるとほろりと崩れます。香ばしい醤油の焦げた香りが食欲をそそり、淡白ながらも脂の乗ったサワラの旨味をシンプルに引き立てています。付け合わせのサツマイモにはブランデーがきいており、洋菓子のような芳醇で大人びた甘みに仕上がっています。
ブラウンマッシュルームのすり流し。意表を突くほどに濃厚な大地の香りが濃厚で、和風出汁ベースでありながらまるでフランス料理のよう。余計な具材を入れず、マッシュルームの滋味だけをストレートに味わう構成です。
蕪蒸し。すりおろされた蕪はふわふわの食感で、甘みとわずかな苦味が心地よい。その中には穴子や百合根、キクラゲに生麩が組み込まれており、宝探しのように多様な食感と味が隠れています。全体をまとめる餡の優しいとろみが、これらの具材を包み込み、口の中で一体化させます。
津居山のカニ。言わずと知れた松葉ガニの最高級ブランドのひとつです。繊維の一本一本がしっかりとしており、口に入れると瑞々しいジュースと共にカニ特有の上品かつ濃厚な甘みが溢れ出します。身の締まりと解け具合が絶妙だ。
〆のお食事は卵かけごはん。シンプルながら贅沢を感じさせるセットであり、炊き立ての艶やかな白米ひと粒ひと粒に、濃厚な卵液が絡みつきます。お椀もお漬物も上質で、和食っていいなと再認識させてくれる締めくくりです。
お腹に余裕があれば、とのことでイクラごはんをお出し頂けました。宝石のように輝くイクラがたっぷりと乗せられたご飯は見た目にも華やか。口の中でプチッと弾けると同時に、濃厚な魚卵の旨味と漬け地の風味が広がります。そこに合わせられた海苔の佃煮が秀逸で、磯の香りを凝縮したような黒いペーストが、イクラの塩気とは異なるベクトルでご飯のお供としての深みを加えています。
水菓子に柿、いちご、紅まどんな。季節の果実たちが食事の余韻を綺麗に整えてくれました。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり4万円ほど。中々のお値段ですが、祇園のど真ん中で旬の高級食材をしっかり食べてこの支払金額であれば妥当でしょう。ランチは1万円を切るお弁当やコースも用意されているようなので、次回は季節を変えて、そちらを試してみたいと思います。

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ここ数年で滞在した高級・有名とされているホテルを一覧化し◎〇△×と記した

年間を通じて外泊が多いので、ここ数年で滞在した高級・有名とされているホテルを一覧化しました。

◎〇△×と記していますが、これは私が滞在した時点における感想であり、価格や為替の変動、混雑度合い、当時のスタッフの対応など偶然に因る部分も多いので、話半分に捉えてください。また、ハイアットやヒルトンは最上級会員であり、ひらまつは株主なので、素で予約する場合とは対応が異なるかもしれません。

費用対効果も重要視しています。お金に糸目をつけないお金持ちの方々とは観点が異なることをご承知おきください。

ところで、私は子連れ客とそれをコントロールできない宿泊施設を憎んでおり、そういった客層が支配的なホテルは自然と△や×が多くなります。しかしながら、これは見方を変えれば家族旅行に向いたホテルを選ぶ指標となり得るかもしれません。


【ハイアット】
<北海道>

<関東>
△:ハイアットリージェンシー東京ベイ

コムトゥヴ(Comme tu veux)/学芸大学

フランス語で「あなたの好きなように」を意味する店名の「コムトゥヴ(Comme tu veux)」。その名の通り完全オーダーメイドのコース料理が最大の特徴であり、予約の数日前にカウンセリングシートへの記入が求められ、好きな食材や料理、苦手なもの、思い出の料理やテーマなどの情報を事前にお伝えしするシステムです。

ただ、私は自分の好みよりも旬の食材をシェフのセンスで表現してもらうことを楽しみたいので、おまかせのコース料理が提供されるランチタイムにお邪魔しました。
テーブル3卓のみの小さなお店。食べログ公式ページにはカッコイイ内装の写真が載っていたのですが、実際は手作り(?)の冊子やチラシなどが多く並ぶ雑然とした雰囲気で、料理好きの専業主婦の家に遊びに来た気分です。もちろんコンセプトを勘案すれば、それはそれで正しいのかもしれません。ちなみにディナータイムは2組限定で、4名以上であれば貸切にも応じてくれるそうです。
ワインリストは滅茶苦茶ですねえ。Overtureが8万円と常軌を逸した価格設定である一方、同じナパのケイマス カベルネ・ソーヴィニヨンは2.2万円と謎にお値打ち。また、酒屋で千円かそこらのコート・マス・カリニャンが9千円と、とりとめがありません。とは言えお店側に悪意は無く、ただ単にワインに興味が無いだけだと思いました。仕方なしに3杯4,500円のペアリングに逃げます。
アミューズは実に凝っています。とりわけフロマージュブランのキャビア量は目を瞠るものがあり、爽やかな酸味と乳脂肪のリッチなコクに海の塩気と旨味が良く合う。
店名とファミチキを掛けた「コムチキ」。パッケージの見た目はファミチキそのものですが、鶏肉そのものの質は極めて高い。「レフェルヴェソンス」のアップルパイを想起させる遊び心ですが、個人的には別にこんなオヤジギャグは要らないと思います。普通に滑ってる。
前菜はサーモンのマリネ。脂がたっぷりとのっており、ねっとりとした舌触りを楽しみます。そこへ春菊という和のハーブが持つ独特の苦味と青い香りが加わり、サーモンの強い脂を巧みに切り、味わいに奥行きを与えます。アクセントの柚子の香りも心地よい。
ただし楽しい時間も今日はこれまで。あわせる飲み物はワインではなくグランマルニエ主体の甘ったるいカクテルで、これがサーモンに全く合わない。加えて3杯のペアリングのうちの1杯がコレだということで、敷金を取り戻せなかったぐらいに悔しい。こんなことならウサギと太陽の絵が書かれたビオワインでも飲んでいたほうがまだマシである。
パンは何故かドデカイ鍋に入ってやってきます。シェフは「フランスのミシュラン1ツ星に居た時に毎日焼いていた」と大いばりなのですが、そういうことは自分からいちいち客に言わなくてよろしい。「私は東大卒ですが、当時は毎日勉強していました」とか自己紹介するのは変でしょうに。そんな気分で食べるパンの味わいなど中くらいである。
お魚料理は金目鯛のポワレ。皮目はウロコを立ててパリっと香ばしく仕上げています。ソースはシャンパーニュとバター、生クリームを用いているようで、芳醇な香りと微かな酸味を含んでおり、金目鯛の脂と混ざり合うことで濃厚なコクを生み出します。付け合わせの冬野菜の甘味とも良く合う。ただし量が少なく、3口ぐらいで食べ終わります。
メインはイノシシのロティなのですが、目を瞠るポーションの小ささです。焼肉屋の2切れぐらいしかない。もちろん味は悪くないのですが、量も味のうちだと私は思う。ちなみにソースはペリグーでトリュフを用いたクラシックなソースなのですが、「トリュフは1キロ25万円です!」と、そういうことは自分からいちいち客に言わなくてよろしい。ちなみに東大卒の平均生涯年収は約5億円だそうです。
一輪のバラが咲いたような視覚的にも美しいデザート。薄くスライスされたリンゴは生姜の風味がきいており、シャキッとした食感とともにピリッとしたスパイシーな風味が広がります。これが土台となるホワイトチョコとバニラのガトーのまったりとした甘さを上手く引き締めています。見た目はもちろん、味覚についてもセンスの良いひと品に感じました。ただし量は少ない。
紅茶と小菓子で腹三分目でフィニッシュし、ランチですが二次会へと向かいます。コース7,500円にペアリングが4,500円で、ひとりあたりの合計額は12,000円。用いている素材などを考えれば悪くない価格なはずなのですが、謎カクテルと量の少なさで心は完全に閉じてしまいました。小食で酒を飲まないママ友グループで集まるには良いかもしれませんが、きちんとしたフランス料理とフランスワインを楽しみに来るには全く不向きに思えました。

ディナーはコース19,800円とのことですが、やはり「カウンセリング」と称してゲストに下駄を預けている職業意識が気に食わないですね。センスは悪くないのだから、素人の言うことなんかに迎合してないで、「オレが一番正しい」と自分自身の世界観で客を圧倒して欲しいものです。現状は才能の浪費であり、それはもはや社会的損失とさえ言える。一方で、より規模の大きな箱で優秀なソムリエとタッグを組めば、劇的な進化を遂げるポテンシャルも秘めているようにも感じています。

「フランスのミシュラン1ツ星に居ました」と過去のブランドに頼るのではなく、「私はミシュランスターシェフです」と胸を張る日が訪れることを切に願います。

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Bamboo Garden(バンブー ガーデン)/ルアンパバーン(ラオス)

ルアンパバーンの観光のメインエリアから少し入った路地にある「Bamboo Garden(バンブー ガーデン)」。主にラオス料理とタイ料理を提供しており、欧米人の旅行者から評判を集めています。ワット ヴィスンナラート(すいか寺)のすぐ近くです。
ホテルのコンシェルジュ経由で予約を試みたのですが、お店からは「そんなことしなくても大丈夫」の一点張り。仕方なく予約ナシで訪れるのですが、なんやかんやで常に7-8割は埋まっていたので、全ては運次第ということでしょう。

店名の通り竹をあしらった内装や植物に囲まれたガーデンスタイル。豪華なレストランではなく、素朴で家庭的な食堂に近いカジュアルな雰囲気です。ベジタリアンやビーガン対応にも慣れており、これが欧米人ゲストが多くなる理由かもしれません。
フローズンスムージーはミルク不使用で果実そのままなのですが、ストローが紙製であり、やはり欧米人意識高い系に向いた店舗運営に感じました。ちなみにアルコール類もたっぷり用意されており、ビールなどいずれも1本200-300円といったところです。
タム マック フン。青パパイヤのサラダであり、ラオス風ソムタムとも言えます。スライスした青パパイヤを中心にトマトや唐辛子、魚醤やライムで味を調えており、シャキシャキとした食感が楽しく、食欲を増進させるサラダです。
サイ ウア。ルアンパバーン名物の豚肉ソーセージであり、挽肉の中に、レモングラスやこぶみかんの葉などの刻んだハーブ、ニンニク、唐辛子がたっぷりと練り込まれています。バリッと香ばしく焼かれた皮と、噛むと広がるハーブの香り、そしてジューシーな脂の旨味が特長的。ラオスビール(ビアラオ)のおつまみとしても最高のひと品です。
鶏肉とハーブのラオス風シチュー。鶏肉をメインに、茄子、レモングラス、バジル、ディル、ネギなどが一緒に煮込まれています。ココナッツミルクを使うタイのカレーとは異なり、とろみのあるスープにハーブの香りを移した、滋味深く優しい味わいが印象的。
コイ パー。川魚であるティラピアを細かく刻み、ミント、パクチー、レモングラス、こぶみかんの葉、エシャロットといった多種類のハーブが大量に用いられています。これにより川魚特有の臭みが消え、爽やかな風味が支配的に。内陸国ラオスならではの香り高い魚料理です。
カオニャオ(蒸したもち米)の用意は無いとのことだったので、炭水化物としてパッタイを注文。ジャンルとしてはタイ料理ですが、タイで食べるそれとはまた違った味わいであり、旅行者向けにアレンジされているのかもしれません。どこか日本の焼きそばをも思わせる調味であり、たっぷりの海老と野菜に囲まれ恵比須顔。ルアンパバーンの料理ではないとは思いますが、多くのゲストが注文していたので、純粋に美味しいことは間違いなさそうです。
以上を2人で食べ、軽く飲んでお会計は総額で5千円弱。毎度毎度ラオスでの食事における費用対効果の高さは目を瞠るものがある。旅行者に向いたレストランであり、全般的に辛さは控えめ。ラオス料理特有の発酵臭も抑えているため、尖った料理が苦手な旅行者にとっては安全な選択肢と言えるでしょう。

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Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)/石川(うるま市)

うるま市は石川の住宅街にある「Mauvaise herbe (モヴェズ エルブ)」。フランス語で「雑草」を意味する店名のように、沖縄の在来食材や通常食用にされない野生の素材を活用し、独自のテロワールを追求した料理を提供しています。レストランの正確な住所は公開されておらず、予約完了時にのみ通知される仕組み。Googleマップにも登録がなく、何ともミステリアスな存在です。
店内はカウンター席が中心でこぢんまりとしており、シェフが料理からサーブまでワンオペで対応します。小島圭史シェフは東京、パリ、マルセイユで経験を積み沖縄へ移住。出張料理「名前のない料理店」を運営したのち当店を開業。ゴ・エ・ミヨにも載る、今や沖縄を代表する料理人のひとりでしょう。
飲み物はアルコールもノンアルコールも同料金の1.1万円。私はアルコールでお願いし、東欧を中心とした独特のセレクションを楽しみました。連れは運転があるのでノンアルコールなのですが、これが抽出や発酵を駆使しており、ドリンクというよりもスープに近い手の込みよう。アルコールを飲まない客層に対しても、料理と同等の深度を持つペアリング体験を提供しています。栓を開けるだけのワインよりも、手がかかっているという意味でノンアルコールのほうがお値打ちかもしれません。
まずは「根」。色んな植物の根から抽出したスープであり、複雑な苦味と深みのある土の香りを纏っており、まさに滋味深い味わい。ポタージュのような分かりやすい美味しさとは一線を画し、漢方や胃薬を思わせるような薬膳的なニュアンスが強く感じられます。
シェフ自らが摘んできた野草を主役にしたアミューズ。繊細でパリッとした食感の筒状の生地の中には、滑らかで酸味のあるフロマージュブランが詰められています。そこに合わせられた野草の鮮烈な青い香りとほろ苦さが、チーズのコクを軽やかに切り裂きます。野草は決して添え物ではなく、その生命力あふれる香気が鼻腔を抜けていき、食欲を心地よく刺激します。
じっくりと熱を入れた玉ねぎ。野菜という枠を超え、まるでフルーツのような濃厚な甘みとねっとりとした食感を獲得しています。中にはチーズが潜んでおり、玉ねぎの甘みに動物性のコクと塩気が重なります。黒いパウダーは食べられるように処理した土であり、玉ねぎが育った土壌そのものを一緒に味わうような、根源的かつ哲学的なひと皿です。
沖縄のヒージャー(山羊)をフランス料理の技法で再構築した意欲作。タルタルは新鮮な赤身の旨味をダイレクトに感じさせつつ、特有のクセをハーブやスパイスで巧みにマスキングし、クリアな味わいに昇華させています。一方のブーダンは沖縄の伝統料理「チーイリチー」を彷彿とさせるひと品。山羊の血を用いた濃厚で鉄分を含んだコクと、ねっとりとした舌触りが特長的。
マングローブ蟹。泥地に生息する甲殻類特有の力強い旨味と香りを放っています。付け合わせにはカブを起用し蟹の強烈な個性の緩衝材に。優しく慈悲深い甘みが、蟹の野性的な風味を包み込み、口の中で調和をもたらしています。
マベ。本来は食用として流通することが稀な貝であり、通常であればエグ味や雑味となり得る要素を丁寧な下処理で取り除き、貝本来が持つ強い磯の香りと旨味の芯だけを残しています。これをサクサクのパイ生地で包み焼き上げ、貝の出汁をパイが吸い込み、濃厚な一体感を生み出しています。
パスタ風の沖縄そば。伝統的な木灰(もっかい)そばの製法で作られた麺は独特のコシと小麦の風味が際立ち、パスタとして見事な適応を見せています。ソースにはヨモギやモリンガといった薬草が用いられ、鮮やかな緑色と共に爽やかな苦味と青い香りが全体を支配します。トッピングされた「ガンガゼ」は、一般的なウニよりも甘みが控えめで、むしろ磯の塩気や独特の苦味を持つ食材。玄妙にして複雑な海と森のパスタです。
沖縄近海で獲れた「かりゆしキンメ」は、身質がふっくらとしており、皮目の脂の甘みが上品。スープはキンメダイの骨やアラから丁寧に抽出し純粋な旨味が凝縮。また、添えられたハーブが魚の脂っぽさを切り、清涼感のある香りのレイヤーをプラスします。本日一番のお皿でした。
自家製パン。派手な主張こそありませんが、手に取ると温かく、鼻を近づければ焼きたての香ばしさと共に穀物本来の力強い香りがふわりと立ち上ります。噛みしめるほどに小麦の甘みと酵母の自然な酸味が滲み出し、まさに「しみじみ」という表現が最適解だと感じさせる味わいです。
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イラブーのスープ。琉球王朝時代からの宮廷料理であり、鰹出汁とは異なる独特の深いコクが特長的。見た目はグロテスクなイメージがあるイラブーですが、味は極めて上品で滋養強壮の塊のような味わいです。
デザートにクレームキャラメル。黒糖を贅沢に使用しており、スプーンを入れると適度な弾力が感じられ、口に含むと黒糖特有のミネラル感を含んだコクのある甘みとホロ苦さが広がります。卵の風味もしっかりと感じられる、奇をてらわない直球の味覚です。
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〆のハーブティーとカヌレ。カヌレが傑作。通常のカヌレとは異なり全体的にフルフルと柔らかい食感が印象的で、トップにはアオカビのソースが置かれており、強烈な塩気と刺激的な香りが重なり妖艶な味わいを生み出しています。

以上のコース料理が2.2万円にドリンクが1.1万円でひとりあたりの合計は3.3万円。沖縄においてはトップクラスに高価な食事ですが、シェフが環境そのものへ能動的に介入し、これまで見過ごされ、あるいは害とされてきた生命(外来種、害獣、路傍の草)に新たなガストロノミー的価値を見出すことに挑戦していることを考えると、妥当な価格設定と言えるでしょう。

分かり易く美味しい料理ではなく、ある意味ではストーリー性重視のディナーショウ。市場価値の高い高級食材(フォアグラ、トリュフ、キャビアなど)を偏重する商業的な美食へのアンチテーゼ。こういったストーリー性や哲学をきちんと理解した上で訪れましょう。

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