赤と黒が基調の怪しげな店内。女子率高め。女の子って、スパイシーな食べ物好きですよね。従業員のほとんどは外国人なのですが、言葉はカタコトながら皆、非常に親切かつキビキビとしています。サービスレベルに人種は関係無いのだ。
今夜はフリーランスのデザイナーとの密会。私の友人はテクノクラートやヤッピーな左脳バリバリ系人種ばかりであり、今夜のような、そっち系の人と交わる機会が殆どないので興味深々。過去実績を聞くと、ある分野で日本を代表するサイトやアプリのデザインを多数手がけていました。
「右脳系?そんなんじゃないから。よく誤解されているんだけど、デザイナーってロジカルじゃないといけないのよ」
お通しはパクチーと唐辛子。パクチーをそのままお通しにしてしまうとは横暴を通り越して爽快感すら感じます。おかわりOKなのですが、1杯目から特大サイズで出てくるので、普通の人であれば1杯目のみで充分でしょう。
唐辛子は見た目とは裏腹に全然辛くない。所々混じるピーナッツとともにポリポリとクセになる味わい。
前菜によだれ鶏を注文。一般的なそれと異なり、一枚肉というかなんというか、肉がとにかく厚く大きい。一口目はそれほど辛くは感じないのですが、食べ進めていくうちに止まらない汗。ネギもたっぷりであり、ネギマシュランには堪らない一皿。
海老の水餃子。プリップリのエビがギッチギチに詰め込まれており、エビマシュランの私としては至福のひと時。タレも普通の日本人であれば演出できない独特の風味があり、なるほどさすがはナポレオンフィッシュやアパッペマヤジフを手がけるイイコグループである。
「『デザイン』を辞書で引いてみなよ。『設計』とか『立案』でしょ?クールでカッコイイとか、そんなのとはまるで関係の無い分野だから。アートとごっちゃにしないで」そうなんだ。私はこの手の分野の議論に疎く色素の欠落した人間なので、デザインもアートも似たようなものと捉えていました。
スペシャリテの麻辣火鍋を注文。供されたのは山盛りのコラーゲン。総州地鶏と烏骨鶏のスープを用いているとのことですが、我々が注文したのは火鍋ではなかったか。
鍋が温まり始めると、ゴボゴボと鍋の底から湧き上がる唐辛子の山。控えめに言って地獄。うーん、動画で撮るべきでした。この不気味さ、異様さは動きが無いと伝わらない。
「『アート』っていうのは、100%感性。感情や感覚とも言える。一番の目的は表現すること。見た人から特定の結果を求める必要なんて全くない。そうしないと気が済まないから表現するだけで、それが人に理解されるかどうかなんてどうでもいいの」
マーラーハイボール 。マーラーとは麻辣のことであり、唐辛子の舌がヒリヒリするような辛さである「辣味」(らつみ、ラーウェイ)と、花椒の舌が痺れるような辛さである「麻味」(まみ、マーウェイ)の2種類の異なった「辛さ」により構成されるハイボールです。個人的には遠慮したい味だったのですが、彼女は美味しい美味しいと3杯も飲んでいたので、好みはひとそれぞれ。
火鍋が完成しました。 漢方やスパイスをふんだんに使った究極の薬膳鍋。まずは10種以上の旬野菜の素揚げを食す。滋味溢れる野菜たちをスパイスが包囲し、辛さの奥に旨味を感じる複雑な味覚。美容と健康を刺激する至高のデトックス。
ごまだれを加えて味変することも可能。スープが途端にマイルドな味わいとなり、上質な担々麺の味わいに生まれ変わります。
「『デザイン』の目的は問題解決。それを見た人とか、使う人を意図した通りに動かさないといけないの。伝わらなかったり誤解されたりするのであれば、そのデザインは成功したとは言えない。アートと違って客観性が大事。良いか悪いかを判定することも可能」
肉は豚肉と羊肉をチョイス。これらは中くらいですね。スープの強烈な味覚に肉の味わいが追いついていません。
それじゃあ、パリコレとかのファッションショーに出てくるヘンテコな服あるじゃん?例えば○○○○○みたいなハイブランドの。ああいう衣装をつくる人たちって『デザイナー』って呼ばれているけど、実際のところ、どうなの?アートなんじゃないの?
質問には答えず、ひきつった表情を見せる彼女。へ?僕、何かヘンなこと言ったっけ?「どうして○○○○○を例に出したの?」万引き犯を取り調べする店長のように私のことを睨め付ける彼女。いや、別に理由なんてなくて、ただ単にパっと頭に浮かんだだけだけど。
「あたしの父は、日本の○○○○○のトップなの。世間には伏せてるのに、どうして知ってるの?って、びっくりしちゃった。あたしの早とちりね。気にしないで」気にするがな。
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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。余所者ながら印象に残ったお店は下記の通り。
- スブリデオ レストラーレ ←チーズ好きのカーバ神殿
- ガストロノミー ジョエル ロブション ←やはり最強。季節ごとにお邪魔したい
- ラ ターブル ドゥ ジョエル ロブション ←超高級ファミレス
- ビストロアム ←フレンチの出オチ最強選手
- ユーゴ・デノワイエ ←3,000円切るランチでこのレベルなら大満足
- レストラン間 ←日本で最もカリテプリに優れたお店なんじゃないか
- ビストロエビス ←うちの娘もああいうふうに育つと良いんだけれど
- 恵比寿くろいわ ←料理学校の和食クラスの生徒の料理を食べてるみたいな気分
- 博多もつ鍋 蟻月 ←玉石混交。うまく注文しましょう