L'arabesque/MSC Preziosa

チェックイン後、一旦レストランに出向いてメートルに食事時間をリクエストする仕組みです。我々は18:00〜の1st Sheetingに決定。
18:10頃にレストランに到着すると、私の苦手な相席方式でした。年に数回しか見せない愛想笑いを浮かべて席に着くと、狭い。小さな楕円形テーブルに無理やり8席をつくりゲストを押し込むシステム。そのくせゲストは我々含めて4名しか来なかったので、狭苦しいわりに余白は多いというイマイチな空間設計です。
担当するウェイターはキビキビと動き、要領を得た接客なのですが、いかんせん守備範囲が広く独りで20席以上を持たされており、人間が処理できる仕事量を超えています。そのため飲み物と食事を注文するだけで30〜40分を要しました。
他のクルーズ船と大きく異なる点は、必ず飲み物を注文しなければならない点。水すら有料です。これが陸の上のきちんとしたレストランであれば納得感があるのですが、ファミレスと大差ない雰囲気でこのシステムは納得がいかない。
メニューはきちんとした冊子に印刷されており、固定されている仕組み。つまり、料理のバリエーションならびに組み合わせに乏しいことに他なりません。

注文を済ませてからは早い。スープ、前菜、メインへと、流れるように処理が進みます。数百席を短時間で相手にするためある程度の作り置きは仕方ありませんが、まさに盛り付けただけ感が強く、露骨です。
カリフラワーのスープ。素材の風味が感じられず、その代わりに小麦粉のツナギ感が支配的で不味かった。
ムール貝は長く冷凍されていたものを雑に調理したものであり、とにかく臭みが強い。
生ハムメロンは調理に工夫を要しないという点で悪くなかったです。
トスカーナ風カンネローニ。パスタは船内で手作りされたものです。が、やはり調理に難あり。インサイドのスイスチャードはポパイの缶詰のようにグダグダであり、リコッタチーズの新鮮さも影を潜めている。肝心のパスタは火入れの頂点を過ぎており、出来損ないの水餃子のような食感です。
オーブンでローストした牛肉。肉に臭みこそはないものの、ビュッフェレストランの作り置きをそのまま盛り付けたような味覚。ソースはやはり小麦粉によるツナギ感が強く、これなら塩コショウで食べたほうがマシではないか。付け合せのジャガイモもベーコンもマッシュルームもバラバラに置かれたといった風情であり、料理としての一体感がまるでありませんでした。
予想通りというべきか、デザートも全く美味しくありません。シロップ漬けの果物に砂糖をふりかけたような甘さであり、ジャムを生のままで食べるような激しさがありました。
イタリア船だからといって、食事に妙な期待をもった私が間違いでした。ノルウェイジャンのハワイ航路のほうがパスタが旨いってどういうこっちゃ。

もちろん他のクルーズ船も似たような食事レベルではあるのですが、もう少しメニューの幅が広く、困ったときはシュリンプ・カクテルとシーザー・サラダとステーキに逃げる、といった積極的退却という選択肢もあります。有料レストランも豊富なことが多い。

他方、当船はメニューに多様性が乏しく、有料レストランも無いに等しいため、逃げ場が無いんですよね。今後1週間、この食生活に付き合わないといけないのか。暗い気分になった最初のディナーでした。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

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