石垣島の中心地730交差点からの公共交通機関は無く、徒歩だと30分ほどかかります。観光客はレンタカーで訪れるのが一般的のようですが、宿に貸自転車などがあればそれで向かうのも一案。途中、悪路を通るのでパンクにはご注意を。
タクシーで向かうのも悪くはないのですが、東京の感覚でタクシーを拾うことができないのが石垣島。したがってタクシー会社に電話をして迎えに来てもらう必要があるのですが、豆腐屋に行くためにタクシーをわざわざ呼び、軒先まで乗り付けるには心理的抵抗がある。
私は結局、太陽と気温が昇る前の早朝だったので、徒歩で向かいました。ネット上の情報では「徒歩ではキツイ」「徒歩では無理」のような否定的な推測が多いですが、「徒歩ではキツかった」「徒歩では無理でした」のような実体験に基づいた情報はゼロであり、実際のところは全然歩けました。地図を読めることと実際に歩いたことは本質が異なる。
1957年創業の老舗。元々は物販のみの豆腐屋さんだったそうですが、作りたての豆腐をイートインしたいという声が大きくなり、工房に飲食店を併設する形として現在の形となったようです。もちろん現在でもテイクアウトは可能。豆乳をグイっとコップ1杯飲み干してパック詰めの豆腐を買っていく地元民多数。
メニュー構成はこの通り。「お年寄ゆし豆腐セット」が色々ついてお得であり、年寄りでなくても注文可能とのことですが、私は地元民の勧めにしたがって「ぶっかけゆし豆腐」を注文。加えてサイドメニューとして「ざくざく豆腐」も。お店のおばちゃんからは「ひとりで2つも食べるの!?」と聞き返され、「ひとつは朝食で、もうひとつは昼食です」と笑顔で返す。
ちなみに「ゆし豆腐」とは沖縄の郷土料理で、豆乳ににがりを入れただけで枠に入れて固める前のやわらかいおぼろ状の豆腐を指します。「ゆし豆腐」を腐を型に入れて固めたものが「島豆腐」。
沖縄の豆腐が本州のそれに比べて特別視されているのは、その製法が原因。一般的な豆腐は大豆を水に浸けてふやかし、すりつぶし、煮て絞る。他方、沖縄の豆腐はすりつぶす工程までが同じであり、その後、絞ってから煮るそうな。
「ぶっかけゆし豆腐」が到着。平日07:07に店に到着し行列に並び始め、着席したのが07:48、料理が供されたのが08:00とかなりの待ち時間。「豆腐だから回転が早いだろう」と甘く見てはなりません。
ほんのりと温かい豆乳。豆の味が相当濃く、美味しいは美味しいのですがそのまま飲みきるには厳しい。加えて私は2人目2セットである。スタバとコラボして欲しいところ。お漬物は既製品。
オマケでソバっぽいものがついてくるのですが、これは全然美味しくないですね。味の薄いスープにフニャフニャの麺。おそらく「ゆし豆腐そば」にはこの麺にゆし豆腐が加えられるのでしょうが、私の好みからは大きくかけ離れていたことでしょう。
さて本題。「ぶっかけゆし豆腐」です。白米の上にトロロを注ぎ、さらにゆし豆腐をぶっかけ、卵黄を載せる。なるほど豆腐の甘味がゴハンに広がり、二日酔いに優しそうな味わいです。トロロの量は期待していたよりも少なく影が薄い。イメージとしては湯豆腐の〆の玉子雑炊といったところ。
「ざくざく豆腐」。こちらにはライスが付帯しておらず、豆腐のみです。
ゆし豆腐との違いはたっぷりの味付けのりに少々の味のついたスープ、それに明太子ソース的なものがかかっています。豆腐そのものは悪くないのですが、明太子ソースがイマイチですね。どうにも色が不自然であり人工的な調味も気になる。どう見ても企画モノであり、やはり本来の味わいを楽しむのであればプレーンな「ゆし豆腐」が一番でしょう。
卓上には味噌や醤油、コーレーグースー、ヒバーチ、塩などがあります。色々とかけると結局何か良くわからなくなってしまうので、やはりプレーンなままで食べるのが一番に感じました。
08:30に退店後もひっきりなしに「わ」ナンバーが駐車場に訪れ、次々と観光客が吸い込まれていきます。なるほど豆腐料理としては非常に美味しく、それが郷土料理ともなれば観光客に人気が出るのも良くわかりました。
ただ、やはり豆腐は豆腐であって、タクシーで訪れたり、30分かけて歩いて行くほどの店かというと、ちょっと違うような気がします。レンタカーを借りている人向けのお店。でもその秘境感が何とも言えないスパイスになっているのでしょう。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。
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