レストラン・ランス・ヤナギダテ(Restaurant REIMS YANAGIDATE)/表参道

AOの裏手にある路地にググっと入ると目に入るクールなエクステリア(写真は公式ウェブサイトより)。店名にある「ランス」とはシャンパーニュ地方への玄関口であり、シャンパーニュの名だたるメゾンやレストランが立ち並ぶ小さな街の名前。柳舘功シェフはその街にある3ツ星レストラン「ボワイエ」出身。
レストランウェディングにも耐えうる広々としたバンケットルーム。大きな窓から差し込む陽光とグリーンが心地よい。サービス陣の動きも洗練されており、この地で21年営業を続ける実力が滲み出ています。
玉ねぎのスープ。素材の甘味と旨味が上手く引き出されており奥ゆかしい味わいです。

ちなみにワインはシャンパーニュではなくアルザスのピノ・ブランをグラスで頂いたのですが、これが実にバランスの良い1杯で美味しかった。エチケットを撮り忘れたのが悔やまれます。
アミューズ第2弾は三層構造。上から完熟トマト、カニ&アボカド、ニンジン&オレンジです。そのまま食べても美味しいし、混ぜ合わせても新たな味覚。カニの身が気前良く入っており、甲殻の風味が支配的。

この前「あらいかわ」に行ったんだけど、すごく良かったよ。近々予約の取れないお店になること間違いなし、と、興奮気味に連れに説明する私。「ふうん、そうなんだ。あ、ごめん、ちょっと1本電話してきていい?」
パンは複数ありましたがフレーバータイプのものはなく、いずれもシンプルな仕立てでした。

数分後に戻って来た連れに、大丈夫?と、マナーとして声をかける。「ううん、その『あらいかわ』ってとこに電話してきたの。でも、さすがに明後日の予約はムリみたい」なんと行動力に溢れた乙女。でも、安くない店なのに、一緒に行く相手と相談もナシにキミが勝手に予約していいの?
前菜はタスマニアサーモン。美味しいのですが、回転寿司のサーモンぐらいのポーションしかなく食べ応えがありません。他方、4種のトマトやオリーブは存在感のある味わいであり、主役よりも脇役のほうがレベルが高く感じてしまう、フルメタルジャケットのような一皿です。

彼女は何事も無かったかのように優しく微笑み、特に何か答えるわけでもない。これは何か裏があると思い、誰と行くつもりなんだ、と意地悪にも追い討ちをかけてみる。「グルメ仲間よ」と軽く肩をすくめる連れ。「30~40歳は年上で、健全な関係だから安心して」
メインはホウボウ、牛、鴨、豚の4種からのチョイスだったので、私は鴨のコンフィを選択。これが大正解。特大サイズの鴨のモモが丸々一本です。丁寧に火を入れつつも頂点は過ぎていないという見事な仕上がりであり、ガルニチュールを含めシンプルな味付けながら確実に美味。本日一番のお皿です。

一般的な感覚では、30~40歳も年上の異性と定期的に会って、毎回何万円もする食事をご馳走になっていて、挙句の果てに奢られる側から何万円もするお店を指定するようになるってのは、健全な関係とは言えないと思うのだけれど、と、私の見解を示す。そういうことをしてるけど健全な関係だって、親兄弟に理路整然と説明できるかい?同僚や学生時代の友達恩師に胸を張って話せるかい?結婚してもそういう関係を続けて、自分の子供にもきちんと説明できるのかい?

「うるさいなあ、あんただって奥さん以外の女の子としょっちゅう遊びに行ってるじゃない」と面倒くさそうに答える連れ。彼女たちはあくまで友人だ。同世代だし、支払いはワリカンの対等な関係だ。妻にもきちんと話しているし、インターネットを通じて全世界にも公開している。論点をすり替えないでくれないかな。張りつめた雰囲気が最大級に高まる。私だって言う時は言うのである。
デザートは北海道の濃厚な牛乳を用いたアイスクリームにフロマージュ・ブラン。カンテサンスのメレンゲのアイスクリームに迫り来るほどの味覚であり、素朴ではありつつも極めて高次元な一皿です。

僕、パパがいるような女の子、苦手なんだけど、と、直截に言う。「その人はパパなんかじゃないし」と彼女は食いつかんばかりの顔で私を見つめる。ああそうかい、これは最初で最後の忠告だけど、健全な関係の「グルメ仲間」に、何の躊躇いもなく客単価が何万円もする店をオゴリ前提でキミの方から予約するのは、はっきり言ってズレてるよ。パパがいると思われても仕方が無いと思うけどね。ちなみに参考までに言っとくけど、僕は30~40歳も年が離れた異性とオゴリ前提で食事に行くことなんて、これまでも、これからも、絶対にないからね。
ワインを1杯飲んで、お会計はひとりあたり7千円強。うーん、ちょっと高いなあ。ゴージャスなハコや外さないサービス、料理の正統的な味わいとポーションなど、体験に文句は何一つないのですが、値段だけが高い。夜だともうちょっと印象が違うのかな。

いまデートしている男の目の前で、他の男とのデートの店を予約するなど何てデリカシーの無い女だとむかっ腹が立ったのは私が狭量なだけかもしれませんが、やはりこれまでの彼女の発言を総合するに、不穏な関係の男の影が見え隠れするのは間違いなさそうです。そんなオッサンどもと私が一緒くたにされ、ワンオブゼムと捉えられるだなんて真っ平御免。私には私なりの矜持があるのだ。

私は「自分が食べた分は自分で払うの、当たり前でしょ?」という、自立した女の子が好きだ。また、美食とは自腹で食べてこそ美食であり、自らの懐を痛めずして語る批評ほど上滑りするものはない。理屈抜きでこういう価値観には悪感情を抱く。このような常識的な感覚の欠落はいずれ冷たい骸と化し、後世に厄災をもたらすことであろう。


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