お店の名前もドラクエ世代には堪らないネーミング。ちなみにキメラ(キマイラ)とは、ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を有し、強靭な肉体を持ち、口からは火炎を吐くという特徴てんこ盛りの怪物です。転じて生物学におけるキメラとは、同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっていること、またそのような状態の個体のことを指します。どうでもいいですかそうですか。
外観は趣のある京都の町家ですが、店内はシンプルでモダンな空間設計。大きな窓から入り込む陽光とグリーンの輝きがマイナスイオンです。
連日の暴飲暴食で内臓が悲鳴をあげはじめ、かつ、今夜も予定が入っているためアルコールは1回休み。ミネラルウォーターはひとりあたり500円とリーズナブル。
ホタルイカのフリットと桜鯛の昆布マリネ。ホタルイカをフリットにするのは、ありそうでない技法。旨味の強いホタルイカがさらに凝縮されグッド。桜鯛も肉厚でゴロゴロとした食感。昆布風味もハッキリしており美味しゅうございました。
自家製フォカッチャのレベルが高い。ハーブや塩の風味がビビッドであり、私好みのベクトルです。
春キャベツのスープ。前夜の春キャベツのスープよりもキャベツの風味が濃密で旨い。生ハムやフォアグラのテリーヌ、芽キャベツも良いアクセントとなっており、ボヤっとしがちなスープ料理に輪郭を与えていました。
クッキーのような形のパンに上質な桜えびがこれでもかとのせられています。見た目通りの美味しさであり、三田のコートドールであればアミューズとして出されるレベルです。このような食べ物がコース料理の脇役に徹しているとは。当店の底知れぬレベルを感じた瞬間でした。
琵琶湖産氷魚と九条葱のリングイネ。サービスの方が目の前で炙りボッタルガ(カラスミ)をたっぷりと削ってくれます。麺の量こそ一口サイズであるものの、氷魚とカラスミ、ネギの量が尋常ではなく、これはパスタ料理というよりも酒のツマミに近い魅力があります。
氷魚(ひうお)とは鮎の子供であり、祇園にしでも頂きましたがやはり地の利を活かした食材なのでしょう。
2枚目のパスタ。ガルガネッリ(ペンネのような形状の卵入りの生パスタ)をカルボナーラソースで頂きます。コッテリとした味わいで万人受けする味わい。具材は沖シジミ、カルドンチェッリ(プーリア州名物のキノコ)、イベリコ豚のチョリソーなど百花繚乱。味覚が賑やかなカルボナーラでした。
メインはオランダ産仔牛のリブロースのインパデッラ(フライパン焼き)。うーん、突然イマイチです。牛肉は豚肉のような味わいで、オランダ産に拘った意図もよくわからない。それでもオランダ産の食材を食べたのは、チーズとアスパラを除いては初めてだったので、良い経験にはなりました。ちなみにオランダには山が無く、死因の4%は安楽死です。これ豆な。
デザートは選択制。私はゴールデンパイナップルのローストにヨーグルトアイスを選択しました。こちらもメインディッシュと同様にパっとしない1皿です。シューには竹炭が練り込まれており、中にはピスタチオクリームが詰まっているのですが、目を閉じて食べればどうということのない小菓子です。
お茶菓子はシンプルかつ少量。
芯のあるエスプレッソを飲んでごちそうさまでした。
立地も内外装も良く、序盤の料理の構成も好みのタイプでありあげぽよだったのですが、メインから急失速した印象です。夜のもっと長いコースであれば盛り返すチャンスはあると思うので、次回はディナーでシェフのフルパワーを味わってみたいと思いました。
気になったのはサービス。ソツ無くこなし失点は何もないのですが、どうも温かみに欠けており機械的に感じてしまいました。言葉使いは丁寧だが心はこもっていない。六本木スピローズとまでは言いませんが、もう少し心なごむ対応があれば、超一流レストランに一歩近づくような気がします。
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