HAL PINOT/麻布十番

ハルピノ。チョウザメの養殖を手がけている会社が経営しているという、一風変わったコンセプトです。シェフは銀座ARMANIリストランテのスーシェフを経て、ハインツベックの立ち上げにも携わった模様。
ドアを開くと猫娘の巨大な絵がお出迎え。これはすごい。都内でもトップクラスに印象的なエントランスです。この絵を前に、深夜の時間帯にひとりで仕事をするのは正直怖いことでしょう。
店内は赤系で統一されており、先の絵と同じ画家の絵が掲げられています。なんともエロティック。初デートでここに連れて来られたらドン引き間違いなし。
シャンパーニュで乾杯。ボリューム感があり余韻も長め。食前酒ではなく、温度を上げて後述の魚と一緒に頂いても良かったかもしれません。素敵な食中酒。
ガスパチョ。味の濃いトマトの風味が上手く引き出されています。ただ、液体でない部分、すなわちゴロっとした野菜たちとの調和は物足りない。構成要素がバラバラで、これなら液体部分をジュルっと飲んだだけのほうが記憶に残ったかもしれません。
チョウザメ、ホタテの生姜香るホワイトバルサミコのマリネ。あれれ?キャビアが見当たらない。なるほどこれはチョウザメ自体を食べる料理であり、キャビアを食わせるとは一言もいってないのですね。

でもなあ、ホームページや食べログの公式情報では散々にキャビア推しなので、シェフおすすめの一番高いコースを注文したら当然にキャビアが入っていると思い込むのが人情。私を含め4人共が「あれ?キャビアは?」という反応でした。もちろん客側の誤認であることは間違いないのですが、何かしっくりこない。

チョウザメは丁寧にマリネされ透明感のある味わい。ホタテも同様に綺麗なものであり、濃厚なウニの味わいを引きたてます。それでも先ほどの思い違いが胸に残ったままでの食事なので、全体的な美味しさは中くらいである。
スタッフが妙に馴れ馴れしく発言が空虚であり、ワイン選びに説得力を感じられなかったため自力でワインを選びます。白身魚のマリネ→ラグーのパスタ→白身魚→牛肉という流れ。魚・肉・魚・肉とややこしくワイン選びが難しかった。無難に食事を邪魔しないシンプルなものを1本。
尾崎牛のラグーのパスタ。旨い。絶妙な茹で加減に麺1本1本に的確に絡められた味付け。さらには牛肉のコクがボリューム感を演出し、見事な一皿でした。
鯛の炭火焼き、山梨県産トウモロコシ「キミヒメ」のソース。肉厚で弾力のある元気一杯の鯛。炭火でバコーンと香りが添加され絶頂に達します。ただ、ソースは甘ったるくて倒錯気味。鯛そのものの素晴らしい味わいを阻害しているように感じました。
ワインリストを読み込みやっとの思いで選んだ1本は「品切れでーす」の刑でした。「似たような味わいのコチラを同じ値段でお出しします」ということでしたが、熟慮に熟慮を重ね悩み抜いた上の結論がこれでは美味しさも中くらいである。
尾崎牛シンタマの炭火焼き、茄子のピュレ、季節の野菜。猛々しく艶っぽい見栄えであり食欲をそそります。が、臭みがある割に深みに乏しい軽率な肉質でした。私の思い違いかと焼肉夫妻に意見を求めると、首を傾げたままで美味しいの一言を引き出すことはできません。また付け合せにつき、季節の野菜という割には元気いっぱいな夏の味わいは私の舌には届いて来ない。
ここに来てようやく初登場のパン。え?パン無いの?と、ずっと戸惑いながら食事を進めており、最後の最後とホイっと出されても美味しさは中くらいである。
デザートはイチヂクとモモのコンポートにヨーグルトのアイス。ヨーグルトの酸味と甘味のバランスが良かったです。
小菓子は4人に対し、トリュフのマカロンが2つ、ピスタチオのマカロンが1つ、抹茶のマカロンが1つ、フィナンシェが4つ、アンリジロー(シャンパーニュの銘柄)入りのチョコが2つ、薔薇(だっけ?)風味のチョコが2つです。うーん、これはジャンケン必至です。普通に均等に行き渡るようにすればいいのにな。
コーヒーは高潔な味わいでレベルが高かったです。ごちそうさまでした。
色々とチグハグな店でした。個人的にはシェフの料理はすごく好き。ただ、店のコンセプトや方針につき、理解はできるけれども同意できない部分が多かったです。

やはりキャビアのくだりがひっかかってしょうがない。チョウザメから離れて、もっと普通な空間で、シェフの得意料理だけを真っ向から食べたいな。そんな思いが残るお店でした。



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麻布十番はイタリア料理屋も多い。ただし、おっ、と思えるお店は少数です。個人のお店のランチが狙い目ですね。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。


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