カーンケバブビリヤニ/銀座


「明日の夜あいてる?あたし、ドタキャンくらっちゃってさ。22時からは別の男の子と飲みに行く予定だからそれまでどう?」とのお誘い。素直に喜べないちょっぴり嫉妬深い僕。私は身体からマイナスイオンが出ているほどの癒し系なので、このようなお誘いをたまに頂きます。
鶏肉が食べたい!とのリクエストだったので、鶏肉を多用する南インド料理屋をチョイス。「鶏肉リクエストに対するプロポーザルがこうくるのがさすが!」とお褒めの言葉を頂いたのですが、いや、ただ単に私が前日に焼鳥を食べたばかりなので、違う鶏料理を求めただけだよ、とは言わないでおきました。
アラカルトであったとしても大した飲み物は無かったので(失礼)、飲み放題プランを選択。飲み放題で小ぶりなグラスは嬉しいですね。泡が消える前に飲みきることができ、ビールを美味しく頂けます。
サラダ。これは明らかに手抜き。妙に店員の数が多い店であり、割とみんなヒマそうにしてたので、もう少し手間隙をかけても良いと思いますこのサラダには。
マサラパパド。インド風のマメせんべい。香ばしい食感と独特のスパイス。酒宴の導入部分として最適です。

「酷い話なの。いい人紹介してくれるってことで約束して、他の誘いがあっても断ってたのに、ドタキャン。今さら他の誘いに『やっぱり行けるようになった』なんて言えないし」大丈夫、世界には愛しかない。誠実に生きていれば私のようなセーフティーネットがきちんと機能する。
パコラ(インド風天ぷら)。左がナスで、右が豆。「ナスはサルビスだヨォォウ!」と、店員が無償の愛を提供してくださいました。お盆のヘンな時期だったためか、店内はガラガラであり、ニコニコと美味しそうに飲み食いする我々に愛着をもってくれたのでしょう。ありがとナス!と調子良く感謝の意を伝えると、ニッコリとした笑顔が返ってくる。いい店である。
カジキマグロのフィッシュティッカ。魚を切り分けてスパイスに漬け込み、釜で焼き上げた逸品。これは脳天に一撃食らった心地。刺すようなスパイスとクリーミーなマグロの身。本日一番のお皿です。
白ワインを注文すると、グラスが男性用と女性用で分けられていました。工夫は認めるのですが、これではただのトイレ、もっと言うと検尿である。
カバブ(インド風釜焼きソーセージ)。フレッシュハーブとスパイスが大量に練りこまれており、見た目以上に辛い。ふたりで顔を真っ赤にし、辛い辛いと検尿ワインを流し込み、仄かに酔いを感じ始める。

「もう、エリートとか疲れちゃった。気難しくて。ギラギラした男たちに追い掛け回されるのもウンザリ。もっと普通の、ごくごく一般的な人とお付き合いしたいわ」彼女は絵に描いたエリートとの交際を解消したばかり。当然にイイ女なので、独り身となるやいなや、世のハンターたちはノーマークの埋蔵金が発見されたとばかりに、彼女に狙いを定めるのです。
カリフラワーの釜焼き。1度酢漬けにしているのか、独特の酸味に強烈なスパイスが纏わり付き、初めて体験する味わいでした。そんな好きじゃないけど。

「もう、普通の人でいいの」と繰り返す彼女。そうだね、それもいいかもね。公務員とか、悪く無いかもね、と一辺倒の提案を試みると「公務員だけは絶対に無理」と、彼女の普通にも色々あるようです。

一般論として、「普通でいい」という発言があった場合、それは極めて高次元における「普通」なのであって、結局は最低でも3高を満たした上での「普通」なのでしょう。高身長・高学歴・高見盛。この3つを充足した男のみがイイ女と付き合える。
本命のタンドリーチキン。ヨーグルトスパイスにじっくりと漬け込まれており、肉の奥底まで真っ赤です。ここからは辛さが前面に出てくるであろうと予測し、再びビールに回帰します。ふたたびーる。
ビリヤニ。バスマティライスに多種多様なスパイスとハーブで調理したドライカレーのようなものです。ここでも彼女のリクエスト通りにたっぷりの鶏肉を。

事件発生。ピーマンと思ってバクバク食べたものが絶望的な青唐辛子の塊であり、その後10分ほど私は何の役にも立ちませんでした。味覚の激辛麻婆豆腐と同等かそれ以上の苦しみ。身体中の穴という穴からヘンな液体が漏れてきそうです。
ライタ。野菜やフルーツをプレーンヨーグルトと混ぜ合わせた箸休め。しかしこれをもってしても先の青唐辛子には太刀打ちできず、というかスパイスが妙に増幅される感があって辛いよう辛いよう。仮に両手両足を現役レースクイーンに抱きつかれたとしても、全く相手にしてられないほどの爆発的な辛さが継続する。
茄子のカレー。真っ黒でマトンなのかなあ身構えたのですが、鶏の挽肉でした。黒さの正体は山盛りのスパイス。先の青唐辛子は極端としても、このカレーもしっかりと辛い。汗が止まらない。

店員に暑いと告げると扇風機をスイッチオン。辛いと告げると羽を固定。なんとも原始的な対処法である。
「コレハ、サルビス、ドゥエース」と、魚のカレー。トマトがベースになっているのか、適度な酸味が印象的でした。魚もクセがなくマイルドを体現しており、辛さが苦手な方でも楽しめるものでしょう。
「コレモ、サルビス!インドノビール!」綿菓子のようにハッキリとした甘味が感じられる面白いビール。度数を確認すると驚きの8%。なるほどこの甘さはアルコール由来だったのか。しかし辛さで悶絶する私に度数の高いビールを一気飲みさせるなど、奴らは私を持ち帰るつもりなのかもしれません。
パラタ。チャパティ(小麦粉のクレープ)にバターオイルを塗り、それらを何枚も層状に折り重ねたパンのようなもの。コクがありこれ単品で美味しいのですが、カレーと合わせるには存在感がありすぎるかもしれません。腹も膨れる。
ナン。こちらはプレーンで一般的なもの。それにしてもビリヤニで山ほどの米を食わせた挙句山盛りの小麦粉を2皿とは我々の肥大化が泊まらない。
バターチキンカレー。バターの甘味がどこまでも優しく、アレフガルドに平和を取り戻す一皿。刺激を取っ払って素直に旨いカレーを楽しむという意味ではコレが一番なのかもしれません。
デザートはノスタルジックなイチゴミルク味のアイス。既製品感が絶大であり、一口食べて殆どを残してしまいましたゴメンナサイ。
たっぷりのチャイを飲んでごちそうさまでした。

私は愛嬌の塊であり店員に好かれることがままあるのですが、今夜は閑古鳥が鳴いている状況も相俟ってか、むちゃくちゃサービスしてもらえました。飲んで食べてひとり4,000円。最高か。もちろん、サービスが無かったとしても当店の費用対効果は素晴らしいと思います。また来よう。

時間は22時を疾うに過ぎています。そういえば「22時からは別の男の子と飲みに行く予定」は?と訊ねると、「ああ!じゃあ、一緒に行こう!」と、「じゃあ」の接続詞は明らかに誤りだし、大体その男子は君とふたりで飲むことを楽しみにしてるから悪いよ、と遠慮する。
しかしその10分後、私はレモンサワー片手にオジー自慢のオリオンビールを熱唱していました。連れられた先は雑居ビル地下にある怪しげなカラオケバー。なるほど確かにこの店であれば私は邪魔者扱いされないでしょう。というか、店内は皆、初対面の親友で、肩を組んで歌います。
連れが浜崎あゆみのBLUE BIRDを歌ったのですが、映像が本人のMVで、ああ、この頃のあゆみちゃんは心から可愛かったなあ。どうして途中からマイケル・ジャクソンみたいになっちゃったんだろ。ある意味、西野カナもベクトルが同じような気するので、彼女の動向を注視し、そのような兆候があった場合は声がけしたいと思います。



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