鏞記酒家(Yung Kee Restaurant)/中環

創業70年。ガチョウのローストで一世を風靡した世界的に有名な広東料理レストラン。元々は屋台だったらしいのですが、いつのまにか中環(セントラル)の一等地に巨大なビルを構えるまでになりました。
ここからは穏やかでないのですが、創業者が他界してから兄弟が勝手に独立したり、親族間で持ち株比率がどうのこうのと揉めまくり、ついには裁判沙汰に。さらには節税だか何だか、誰かの入れ知恵で会社の登記がヴァージン諸島にあったりして話がとにかくややこしい。結局、近々このレストランは閉鎖するとかしないとか。こういうの、何だかなあ。創業者のじいちゃんが可哀相や。
ともあれ、当店は香港の名店中の名店であり、閉店しもう二度とここの味を楽しめない恐れもあるので、2度しかない貴重な夕食のうちの1つに選定されました。
スペシャリテのガチョウのローストは例によって日本から予約の時点で取り置きしておいたのですが、その他のメニューにつき何も予習していなかったのが失敗でした。百近くあるんじゃないかというアラカルトの数々。連れの「私の知り合いが『鏞記のピータンが絶品』って言ってたけど、あたしピータン食べたことない」という情報を頼りに、半ば当てずっぽうで注文です。
皮蛋酸薑(ピータンしょうが)。アヒルの卵を石灰や木炭を混ぜた粘土を卵に塗りつけて数ヶ月眠らせるという大珍味。アルカリというかアンモニアが主張する非常にクセのある食品で賛否両論なのですが、私は好きでも嫌いでもないという対象。当店のそれもピータンにしては香りが穏やかで臭みも少なく食べやすいとは思いますが、ラーメン屋の味玉とどっちが好きかと問われれば言わずもがな。

「あたしの初ピータンはタケマシュランなのね」と物憂げな表情を浮かべるソムリエール。言っておくが、彼女はシラフである。
金牌焼鵝(ガチョウのロースト)。スペシャリテであり、1日に300羽がそれこそ飛ぶように売れるらしいです。ガチョウはベジタリアンなので臭みが少なくキレイな味わいという触れ込み。なるほど確かに透き通るような肉質で品の良い鶏肉を食べているかのよう。しかし特筆すべきは皮と焼き目とゼラチン質。バリっとした香ばしい皮と、トロトロと流れるような脂身。上質な北京ダックを肉ごと食べているかのようで美味しかった。

私は今回の旅行を通して最も満足した皿は、前夜の蟹味噌あんかけ麺だったのですが、美女ふたりはガチョウのローストとのこと。それほどレベルが高く、日本では味わい辛い方向性の料理です。
ゆうべの蟹味噌あんかけ麺が忘れられず、当店においても蟹系の麺を注文。350gはありそうな麺の量。麺1本1本の隙間に蟹の肉が紛れ込んでいるのが愛らしい。しかし当店においても麺というものにコシは無く、夏祭りの夜店の焼きそばに蟹がチョイチョイと入っている程度の味わい。それなりに美味しくはありますが、大騒ぎするほどのものでもありませんでした。
メニューにオススメマークが付いていたため安直に注文したイカの天ぷら(?)。これも普通に美味しくはあるものの、香港に来てまで食べる必要性は全くありません。チェーンの居酒屋のイカの揚げ物のと大差なし。それでも「ねえ、こういうのだとさ、ビール飲みたくなるよね」という発言に触発され、
ビールを注文してしまう意志の弱さ。悔しいが、旨い。それにしても缶ビールを丸ごと手渡されるとはなあ。ゆうべもそうですが、中華系のレストランって、高級店であったとしてもおもてなしが弱いですよね。

店員のおばちゃんにはノルマが課されているのか、この皿も注文したほうが良いあの料理も最高だと、オススメを通り越して押し売りレベルなのも面倒臭い。その押しの強さに負けた隣のテーブルの欧米人は、どうみても不味そうな冬瓜丸ごとの雑なスープを食べるハメになっていました。

気の弱い方はお気をつけて。当店はガチョウだけで充分ですよ。

今回の香港旅行を時系列にまとめました。下から上に向かってます。

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