香港vol.1~成田第3ターミナルという秘境~

先日のピクニックにおいて、「ねえねえ、香港一緒に行こうよ!」と、スタバでも誘うかのように海外旅行への同行を美女ふたりに熱望され、生来の好フットワーク芸人として乗らないわけにはいきません。

彼女たちが予約している「バニラエア」のwebサイトを開き、同様の便を選択すると片道3万円。思っていたよりも安い。また彼女たちと同じホテルを検索すると小奇麗な割に1万円と少し。なんだ、たった7万円で非現実的な週末を手に入れることができるんじゃないかと賢者モードに入り、自分でも驚くほどの速度で全ての手配が完了しました。

予定が何もなかったのが良いですね。7月末のチーズプロフェッショナル試験に向け、自分からは誘わず勉強に集中し誘われた場合にのみ応じる、というモードに突入しており、たまたまその週末にお誘いが何もなかったのが幸いしました。
行くと決めればエンジンは最大出力。六本木ツタヤにひきこもり、ありとあらゆる香港本を読み漁る。また、香港で働いている友人、香港に最近まで住んでいた友人などあらゆる人脈を駆使し、行くべきスポットに目星を付ける。
変わったところだと、この本が面白かったです。高城剛の独特の感性から導き出される香港ガイド。いわゆる正統的なガイドブックとは目の付け所が全く異なり、生々しい香港の色気が伝わってきます。一般的な旅行本は備えた上での2冊目としてオススメです。
前夜はオステリア・オリエーラでワインを浴びるように飲み、続いてワインバーでもう1本空けた後に十番に戻りおにまるへ。シイタケ嫌いがハワイから戻ったばかりだったので、お貸ししていたwifiルータとグルメ本を、利息のピーナッツバターと共にお返し頂けました。
その後、店内は顔見知りしか存在しないという危険な状態へと突入し、結局帰宅したのは4時過ぎ。起きなければならない時刻は5時半だったので、寝たら死ぬぞと腹を決めてそのまま気合と根性で起き続ける。
二日酔いというか、酔っ払ったままバスに乗り成田第3ターミナルへ。バニラエアは正真正銘のLCCであり、使用するターミナルも当然にLCC専用の第3ターミナルです。電車は開通しておらず、第2ターミナル駅から死ぬほど歩くかバスで乗り付けるしか手段はありません。なのですが、バス利用だと銀座からわずか1,000円90分で到着することを考えれば、第1第2ターミナルよりも安くまた便利かもしれないという意外な一面もあります。
第3ターミナルはさすがの安物コストを意識したターミナルであり、港湾地帯の倉庫を想起させる趣きがあります。
貧乏な徹底的に経費を削減した施設であるため、ディスプレイなどは極小化され、陸上競技トラックのように、地面に直接「あっち」「こっち」と表示が記されています。
ターミナルが赤貧低コストを綿密に意識しているのに倣ってか、SIMカードまでMVNO(格安SIM)。ちなみに橋本環奈は顔面ばかり注目されていますが、かわいいだけでなく相当踊れるしY字バランスなんて余裕というスペックの高さは意外にも知られていません。
ローソンの品揃えは街中のそれと大差ないのですが、内装が何とも安普請。
本屋もあります。旅行系の本多し。
外貨両替ショップは2つありました。なのですが、各々でびっくりするほどレートが異なります。たった数十メートルしか離れていないので、両替する前には比較検討したほうが良いでしょう。

ちなみに第3ターミナルにラウンジはありません。航空会社のラウンジはもとより、カード会社の共有ラウンジでさえありません。何もかもがない。私はスターアライアンスゴールド、スカイチームゴールドさらにはプライオリティパス、という割と最強に近い旅人だと自負していたのですが、そのいずれのステータスが無用の長物でした。
したがって、空いた時間はフードコートでつぶすのみ。屋根が剥き出しで圧倒的なコストコ感。

と、この時、今回の旅の友、美人ソムリエールふたりと合流。「キャー!タケマシュラン、お酒くさーい!」。ふたりの意見が「絶対来てくれないと思ってた」「絶対来てくれると思ってた」に真っ二つに分かれていたのが印象的でした。
フードコートのラインナップは、外国人旅行者が喜びそうなお店が多く、このあたりはきちんと考えられているんだなあと感心。
美女ふたりは朝ごはんに寿司を選択。僕は朝ごはん食べない主義だから、と小さな嘘をつき、店員さんにお茶だけ頂きました。
さてチェックイン。これまでのLCC経験と言えばパリ→イビサのイージージェット航空イビサ→ビルバオ(バスク)およびビルバオ→バルセロナのヴエリング航空の計3回。日本発のLCCは初めてです。

自動チェックイン機にパスポートを読み込ませるだけで搭乗券が発行されました。ちなみにトランクなどの預け入れ手荷物は別料金。ITリテラシがそれなりにあり自立している人間にとっては手軽に利用できる一方で、職員に色々お願いしなければならない情弱は金額が跳ね上がり時間もかかるという仕組みです。マイレージだのポイントだのも無くわかり易い料金体系。非常にフェアですね。本来の目的である移動に特化した飛行機、それがLCC。
それにしても設備の貧弱さ洗いざらい無駄を削ぎ落とすスタンスには舌を巻く。エスカレーターやエレベーターは見当たらず、全て階段で上り下り。バリアフリーとかハァ?というスタンスです。トイレや自動販売機、イスまでが少なく、地べたに座り込む若者が続出。ここまで体脂肪が低いと爽快感すら感じます。保安検査ひいては入国管理官まで冷淡で無機質に思えてくる。
当然にPBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ。建物から延びている可動式の空中廊下みたいなやつ)などは無く、機体近くまで歩き、タラップを昇る必要があります。車椅子の人とかどうするんだろ。
荷物は預け入れると別料金であるため、いきおい乗客は可能な限り手荷物にする傾向があります。したがって、網棚(?)はすぐにパンパンとなり、チンタラと乗り込んだ私のスペースはどこにも見当たらず、仕方なしに足下に置くことに。
見よこの狭さ。路線バスよりも窮屈です。幅は割と普通ですが奥行きが皆無。奥の席の客がトイレに立とうものなら全員が巻き添えで立ち上がる必要があります。もちろん個々人にディスプレイなど絶対にありません。これでスタッガード配列のビジネスクラスと同じ乗り物と名乗るだなんて。
食事が有料なのは覚悟していましたが、
飲み物ひいては水までお金が必要だなんて、行き過ぎた資本主義を垣間見ました。「エコノミー症候群を予防するために水分をたくさん摂りましょう」という格言の効能は小銭と引き換えになります。一方で、皆、飲み食いをすることが少なくなるため必然的にトイレの回数が減るのは怪我の功名。用を足すために列に並ぶ、などということはありません。
こういうことは言いたくないのですが、客のレベルは非常に低いです。飛行中に意味も無くウロチョロと歩き回るのは可愛いもので、クリティカル・イレブン・ミニッツ(離陸後3分/着陸前8分の航空機事故が集中する魔の時間帯)であってもお構いなしに立ち上がり荷物を開け閉めします。マナーが悪いを通り過ぎてフリーダム。CAたちは鬼の形相で「おすわりくださいー!!」と叫び出す。この緊張感がコックピットに伝わって何かのミスに繋がったら嫌だなあと肝を冷やしました。
ちなみに私の体調はフライト中、一貫して最悪でした。ご丁寧に気流が悪く長時間に渡って揺れ続け、シートベルト着用サインが点きっ放しでトイレにも行けない。止まらない冷や汗。生まれて初めてエチケット袋の世話になるかと覚悟を決めたその時、隣のオッサンがおもむろに「にゅうめん すまし柚子」を注文し、勢いを立てて啜り始めたので殺意を覚えました。

今回の香港旅行を時系列にまとめました。下から上に向かってます。

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