オステリア・オリエーラ/新宿三丁目


レストラン不毛の地、新宿において、食べログ4.23とダントツの高得点を叩き出す当店。当然に予約は取り辛く、1ヶ月以上前から手配してようやく席を確保することができました。店内は調理場をぐるりと取り囲むカウンターが中心なのですが、テーブル席もいくつか用意されています。我々はボックスシートに通され半個室状態。居心地良く開宴。
13,000円の食事とワインペアリングのコースを事前注文。食前酒にとフランチャコルタを勢い良く注いでくれます。クドくなくスッキリと爽やか。温度も低めに設定されており、今日の気温にぴったりでした。
尖兵はグリッシーニとパン(?)。
パンの中にはハムと溶けたチーズ。懐古的で解かり易い味わい。日本人であれば、皆好きな味でしょう。他方、グリッシーニは普通です。
我々があっという間に泡を飲みきったのを見かねてか、「もう少しお飲みになりますか~?」注ぎ足し。うーん、なんて酒飲みに優しいスタンス。実質飲み放題か参ったなあ。
前菜はアジ、タラ、イワシ、ヒラメ。アジは品質が素晴らしく健全。タラは手間がかかっているのは理解できるのですが、上品すぎてパンチがありません。もっと塩抜きをいい加減にして暴力的な塩味があってもいいのだけれど。一方で、イワシは酢の締め方に思い切りがあってよかったです。皿全体を通して見た際のアクセントとしてグッド。ただし幸か不幸か突出した存在でもあったため、ワインとのバランスは良くはありません。ヒラメは全方位的に綺麗な味わいでした。
続いてカツオ。夏の味に鉄分も感じられ力強い。トマトの爽やかさにカポナータの涼風も加わり、湿度の高い初夏にぴったりです。
カツオにはロゼ。カベルネとシラーでスパイシーな面白い組み合わせ。イタリアのロゼって、私のライフスタイルでは殆ど出遭うことがないので新鮮に感じました。
スズキ。ふっくらと炊いてあるかのような食感。フワフワで和みます癒されます。夏野菜と共にソースも軽やかで文句なし。本日一番のお皿でした。
ワインもソースと同系統でしっくりきます。グレープフルーツ香が強く、樽の使ってないシャルドネのような味わい。最早「もう少しお飲みになりますか~?」とは聞かれることはなく、自動的に我々のテーブルは2杯注ぎが暗黙の了解のようになりました。
パンはシンプル。ソースを受け止めるには適任。
鹿肉ラグーのソース。味は濃厚ながら内蔵に負担をかける程の存在感ではありません。麺は自家製で冷麦のような幅でやや薄い。噛みごたえに乏しいのが残念だけど、それはこのパスタの個性とも捉えることができるでしょう。何より当店は量がたっぷりなのが嬉しいですね。コースのパスタは私にとって量が少なすぎ、ストレスになることが多いので。
割と濃い目の赤で勝負。鹿肉の程よい野性味と重厚な赤が相俟って素晴らしい調和を見せてくれました。パスタで赤を飲むことは私の経験上少なかったのですが、アリですなあ。
タイプの異なるパンを出してくれる。先ほどと同様に素朴な仕上がり。
牛は神聖なピンク色の火入れ。嫌な脂分などは一切なく、肉好きが赤味を味わうに最適な調理です。量もしっかりであり文句なし。
赤は特濃。カカオ、チョコレートの芳醇な香り。コッテリとしたトロトロの液体が赤身肉を包み込む。
ビスコッティで一休み。
ドルチェには甘く熟成の進んだワイン。度数が高く酔ってしまいます。この値段でデザートワインまで出してくれるのは大変に有り難い。
ドルチェにはアイス(忘れた)、プリン、ティラミス。王道中の王道で素直に美味しかった。個人的にはもう少し女子力高く派手な皿でも良いかなと思いました。
エスプレッソで〆てごちそうさま。

なるほど評判に違わず良い店でした。支払額が読めて、しかも実質飲み放題。しっかりと酔えるのに支払額が読めるという意味で非常に使いやすいお店です。雰囲気も隠れ家感があり、新規の女の子と初めての食事にはうってつけかもしれません。

ただ、唯一無二のスペシャリテが見当たらないのが気になりました。客を楽しませる心意気とベーシックな調理技術には認めます。後はもう少し色気を出して、独創性のある個性が強烈な何かで勝負してくれれば、もう一歩高みを目指せるのかもしれません。そういう意味で、食べログ4.23というのは過大評価かもしれません。

いずれにせよ、「お手並み拝見」ではないけれど、ものすごく期待しながら、ややもすると懐疑的に臨んだのに、これだけ期待に応えてくれたのは天晴れです。さらなる挑戦が楽しみです。

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