Sein/Zürich

チューリッヒ中央駅すぐ近く、日本人オーナーシェフのお店。一昨日のAfter Seven昨日のCapriに1ミリも満足できず、ビバンダムならびにスイスでの食事が嫌になりつつあったので、最後のチャンスです。
なのですが、お店がファミレス風というか、ガラス張りの外から丸見えスタイルのお店で入店前から黄色信号が点灯。

お店に入るまでのアプローチが変わっていて、マンションの裏口のようなドアから建物に入り、廊下にある白い扉を開けるといきなりダイニングが広がります。レセプションやウェイティングスペースは無く、ダイニングのど真ん中でコートを脱いだり荷物を預けたりするのは極めて違和感。
食前酒はシャンパーニュのブラン・ド・ブランかロゼのいずれかと問われ、前者をお願いしたのですが、後からワインリストを見たところ、5種程のグラスの泡が掲載されていることに気付きました。店員が勧めてきた2種は、最高値の1杯3,000円超。金額以上に気分を害すのでこういうことはやめて欲しいです。

外から丸見えということは、当然に中から外も良く見える。通行人と何度も何度も目が合いました。もちろん道行く人々に私たちを覗き込もうという意思は無く、自然と目がこちらに向いているだけなのでしょうが、食事姿を公衆の面前に晒すのはストレスでしかありません。
隣のバーが禁煙のようで、愛煙家が入れ替わり立ち替わり外に出て、酔いに任せて大声で騒ぎながら紫煙をくゆらせる。我々と彼らはガラス1枚隔てているだけなので、バカ騒ぎの声が聞こえるわ、無遠慮に視線を投げつけられるわで最悪の席でした。

レストランとして最低限の居心地の良さが感じられないお店に見るべきものは何も無いと判断し、コースはやめにしてアラカルトで各人2皿のみを注文。そういえば、食前酒を楽しんでいる間にアミューズが提供されることはなく、ちょっと寂しかったです。
私は前菜にホタテとオレンジのタリオリーニを選択。オレンジの風味がどぎつく下品。ゆうべのトマトスープを彷彿とさせます。こういう味の付け方をスイス人は好むのかなあ。
ワインは地元チューリヒのピノを選択。当店で最も安い(それでも1万円超)ものですが、ヴィンテージの割に熟成感や複雑味に富んでおり、びっくりするほど美味しかったです。スイスのピノはノーマークでしたが、いやはや結構イケるもんですな。
妻の前菜はマグロのタルタルにガーリックトースト添え。「美味しいけれど、大した料理じゃないわ。ハワイのロイズみたい」。
パンは結構良かったです。何個も食べちゃった。
メインはラム。切り分け前の肉塊をプレゼンテーションしてくださいます。
メニューには「たっぷりの秋野菜と共に」と記載されていたのですが、今は秋ではなく春だし、結局これって秋野菜じゃないし、と突っ込みどころ満載の皿でした。

添えられたニンニクについては「英語で何て言うか知りませんが、すごい特別なニンニクです」とのこと。

肉自体はまあまあ美味しい。量が多いので胃袋は満たされ満足できました。レベルとしてはクルーズ船における有料レストランぐらいでしょうか。クルーズ船は基本的にオールインクルーシブなのですが、少しだけ良い物を食べたり、静かに雰囲気を味わいたい場合は1人あたり20ドル程のカバーチャージで、有料レストランへ入ることができるのです。
テーブルウォッチングが全くなっておらず、ワインは原則手酌です。
デザートもコーヒーも全てパスし、お茶菓子だけ口に放り込み、さっさと退店。

冒頭の読み通り、東京やフランスのミシュラン1ツ星とは意味の異なるお店でした。アラカルトにして本当に良かった。行きづらいお店にお邪魔した際はシェフのスペシャリテが詰まったコース(一番高い場合が多い)を無条件に注文しがちですが、ある程度経験を積んだのであれば、「この店はヤバイかも」というゴーストの囁きを直感的に信じるほうが良いなと学んだ一夜でした。

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Sein
夜総合点★★☆☆☆ 2.0
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