ロオジエ/銀座

改装後は予約が1ミリも取ることができず完全に諦めていたのですが、「改装からしばらく時間経ったし、ミシュラン三ツ星から二ツ星に下がったしで、最近は予約取りやすい」との情報を得、お邪魔することに。

改装前は高級ファミレスというかなんというか、あまり特長を見出すことができなかっただけに、今回はある意味とても楽しみにしていました。そう、世間の評判と自分の評価があまりにも乖離している場合には、確認作業として必ず2度訪れるようにしているのです。

朝からコーヒーしか口にせず体調を万全に整えての入店。「あたしも食事抜いてたんだけど、もう我慢できなくなって、14時頃にスープだけ飲んじゃったわ」。ふたりとも気合の入れようが尋常じゃない。

2016年最初のグランメゾンでの食事だったので、気合を入れておめかし。連れのワンピースも鮮やかな色合いで美しく、すごく素敵だ似合っているよ、と素直な感想を述べると、「台本棒読み、とんだ大根役者ね、全く心がこもってないわ」と一蹴されました。

ところで、私の見える範囲で客はすべて男女のカップルであり、女性陣の全員が例外なく美しい。いいなあ、生まれかわることがあるのであれば、美女に生まれてみたいなあ。

ゴッセで乾杯。ランスのParcで飲んで良い印象だったので、かつ日本でロゼの泡を飲む機会はあまりないので飛びついてしまいました。ロゼらしくない鋭い味わいでやっぱ美味しい。

ダイニングでの写真撮影はNG。しかし、「カメラを預けてくれれば、バックヤードで料理の写真を全て撮っておきますよ」との申し出。なんてイマドキなサービス。
アミューズはチーズを焼いたやつ、おかず系マカロン、パテドカンパーニュ、カブ(だっけ?)。いずれも程よい塩気が食欲をそそり、今後の期待感を増幅させてくれます。あっという間に泡が立ち消えサンセールに突入。
サーモンのミキュイにポワロー葱のクリームに山盛りのキャビア。ウホホなんじゃこのキャビアたち。大粒かつ大胆な盛り付け。旨くないわけがないズルすぎるこの手口。他方、後がけでシャンパーニュからつくられたソースもあったのですが、アルコールが悪い意味でしっかりと残っておりイマイチでした。
ハマグリにホタテや赤貝など様々な貝類を取り合わせた一品。バターやクリームのポッテリとしたコクと貝類のエキスが仲良しこよし。ワインはピュリニーモンラッシェの1級に突入。こちらも樽がたっぷりときいた壮大な白ワインであり、バターやハチミツのニュアンスが芳醇に雪崩れ込んできます。ワインと料理の完璧なマリアージュでした。
オマール・ブルーに冗談みたいに大きなトリュフ。非常にわかり易い味で、私はコチラのシェフと仲良くなれそうです。グレーププルーツのソースも秀逸。苦味と甘味が陽光のシャワーのように降り注ぎ、思わず唸ってしまいました。ソースで真剣勝負を臨んでくるのですが、極めて軽やかなの。
甘鯛のうろこ焼き。甘鯛に根元的な美味しさは当然あるものの印象は薄かった。一方で、敷かれたエシャロットのフォンダンが感動的に美味しい。甘く、優しい。この皿の上では鯛とエシャロットがふたつでひとつの人生なのでしょう。ただしエシャロット以外のガルニチュールは意味不明。味も歯ごたえも無く、見栄えも微妙です。
写真からはお伝えできないかもしれませんが、見事なフューシャピンクを湛えた熊本産あか牛。神経質なほどにぴったりとしたカットが芸術的。しかし味わいと言う意味では失速気味。付け合せの野菜たちも悪くはないのですが印象に乏しい。敷かれた黒いびよーんとしたやつも、意匠としては面白いのですが、若干食欲が失せる色合いです。

あわせたワインはブラネールデュクリュの95。自らボルドーを指定しておいてなんですが、エスプレッソ的な重みのある偉大なワインであり、肉の味わいを無力化してしまいアンバランスでした。単品であればそれはそれは素晴らしいワインなのですが。
ワインのボトル、ならびにエチケットの写真もきちんとおさめてくれています。
デセール1皿目は青リンゴ。まずくはないですが、平板で記憶に残りません。
ミニャルディーズはかなり手が込んでいます。マカロンのクリームの濃さと緩さが特徴的で美味しかった。
デセール2皿目はイチゴ祭。キューブ状のアイスクリームは面白い試みなのですが、もう少し量が欲しい。色々と構成要素が多い割に総体的なメッセージに乏しく、砂漠に水を撒いたような既視感を覚えます。美味しいのだけれども無味乾燥。
ご丁寧にフリヤンディーズのワゴンまでお撮り頂けてました。まだまだ胃袋に余裕があったので、好戦的なドラえもんのように「全部ヨロシク」とお願いしたのですが、思いのほか種類が豊富、かつ小麦粉主体の焼き菓子が結構多く、途中でビビって「あ、やっぱそのへんでいいっす」とヘタれてしまいました。味わいは前回よりも格段に良くなっており、特にショコラとギモーブがオススメです。

さてどうでしょう。印象としては近所のエスキスシャンパーニュのラシェットシャンプノワーズレクレイエールのように、コンテンポラリーフレンチの王道といったところ。流れゆくコースとしては整合性があり組曲のようで満足できるのですが、あまり昂揚感はなく淡々と納得しながら食べ進んでいく感覚。同等の料理を日本で食べることは極めて限られる一方で、どこかで食べたことがあるような、想定の範囲内の料理が続きました。

あと、せっかくだからと1番高いシェフのおまかせコース38,000円(税8%とサービス12%は別)をお願いしたのですが、これはちょっとやりすぎたかもしれません。もちろん山ほどのキャビアやオマール・ブルーなど説得力のある食材のオンパレードであり値段相応なのですが、うーん、正直オマール・ブルーの価値とか素人の僕にはようわからんしなあ。真ん中のコース28,000円で良かったかな。それならフロマージュもあってデセールは1皿ながらもアラカルトメニューから好きなものをひとつお願いできる。トリュフを用いたスフレなど魅力的な皿があったので惜しいことをしました。もっと言えば、アラカルトで前菜とメインを1皿づつオーダーし、酒はシャンパーニュ1本で通してサクっと帰る、こういう使い方が一番クールな気がします。

改善すべきはサービス。一点の曇りもない完全無欠のサービス陣なのですが、どことなく事務的というか温かみに欠ける。アピシウスでの居心地の良さを味わってすぐのことだったので、否が応でも対比してしまいます。

改装で天井が高くなり格段に魅力的な空間に生まれかわったのは確かですが、最も変えねばならなかったのはハードではなくソフトであったのかもしれません。1滴でもいいからドンチッチョのようなノリの良さをエッセンスとして取り入れて欲しいなあ。


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