ワインをめぐる冒険 vol.5~メドック格付けシャトー巡り①~

残念ながら雨。旅の良否を決する重要な構成要素のひとつは天候だと考えているのでやや残念。しかしボルドーはこのところ日照り続きでぶどうの生育が心配されている状況であり、恵みの雨と捉えれば私個人の旅行の楽しみなんてどうでもイーグルス。
大劇場前。パリのオペラ座はこちらを参考に作られたらしいです。
薄いけど立体的に見える不思議な像。面白いなあと眺めていると、私から8メートルの距離でオッサンが派手にすっ転ぶ。濡れた石畳に革靴でハイドロプレーニングしてしまったようなのですが、すぐに周囲の通行人数名が「大丈夫か?」と駆け寄ったのです。東京だとどうか。色々考えさせられました。

そう、フランスの人々は基本的に他人に対して優しい。お年寄りに対しては極めて親切に接するし、大きな荷物を抱えている女性を見かければ他意無く手伝う。妊婦優先席およびベビーカー論争はフランスでは生じないんだろうなあ。

ちなみにキスをする際にメガネを外すか外さないか論争において、フランス人が平然と「彼女のメガネを外すところからキスが始まるんだけど」と即答し、思わず唸ってしまいました。
ちょうど雨が止んだころに本日のガイドと合流。メドック方面へプライベートツアーです。
まずはマルゴーで記念写真。日本人の機微を正確に捉えているガイドです。
ラトゥール。すごいなあ。本当に実在してたんだなあ。
シャトー見学第一弾はポンテカネ。ボルドーでは珍しくビオデナミ一本槍なワイナリー。ビオデナミとは自然派とかそんな感じ。ワインに限らず食品や医学においても自然派はスピリチュアル寄りに捉えられる向きが多いので誤解を解くのが大変そう。
エリカ様というシャトーの従業員の方がカートでぶどう畑を案内してくださいます。ちょっとしたディズニー感が出て楽しい。
畝の突き当たりにバラを植えるのは、ぶどうとバラは似たような育ち方をするけどバラのほうがナイーブらしく、バラがヘバって来たら近々ぶどうもやべーぞ、というサインに利用するらしいです。
さらに、当シャトーでは馬とロバを飼っており、馬を用いて作業をしているとのこと。農耕機械だと重すぎて地面が固められちゃうから、昔に立ち戻って馬なんですと。ここまではわかる。しかし、ロバについては特に仕事をさせるわけではなく、ただそこに居れば良いんですって。その理由は「ロバは良いエネルギーを発散しているので、ぶどうの負のエネルギーを調和させるのにちょうどいいの」だと。申し訳ありませんが、これはさすがにオカルトに感じてしまいます。
通常、ぶどうを栽培する際にはツルを切りそろえて角刈りにするのですが、ビオデナミにおいてはぶどうに余計な負担を与えることはご法度なので、伸ばし放題。その代わりにツルを丸めて下に向けると栄養が行き届くとか何とか言ってましたが正直良くわからんかった。
収穫は機械を用いずに手摘み。なんですが、摘んだ後の除梗や選果には機械をバリバリに使う。うーん、どうせ機械で選別するなら収穫も機械で摘んでいいじゃんと素朴に感じてしまう。歩留まりの問題なんでしょうか。いずれにせよ、効果の真偽が今ひとつ不明ながらも徹底的にやり込む姿勢には敬服します。
整然と並ぶコンクリートタンク。コンクリートは自然の産物なのでタンクとして問題ないとのこと。内部には温度調整のために水または湯を流すパイプがコイル状に通されています。
木樽のお腹をそのままにするか、赤く塗るか、黒く塗るかは醸造者の好みとのこと。継ぎ足しの際にどうせこぼすから最初から塗りつぶしてしまえという大胆な発想。風味をつけるために樽の内部をローストするのですが、ロースト具合はひとつづつ異なり、また、樽の製造元も複数社にわたる。リスク分散とな。
アンフォラ。土の壺。木樽で寝かされるものもあれば、こちらで寝かされるものもある。さらに、それぞれのアンフォラはそれぞれの土壌が育った土で作られているとのこと。すなわち、カベルネが育った土を用いて壺をつくりそこにカベルネを寝かせる、メルロならメルロ。で、最後にブレンドしてその年の味わいを決定するんだと。そこまでするか。
地下のお宝ゾーン。1945年以前のものはナチス進軍時にほとんど飲まれてしまって悔しいとのこと。その気持ちすごくわかるわー。

私は前妻と離縁する際に財産分与の一環として「家の中の好きなもの持ってっていいよ」と伝えたのは確かですが、彼女の母親が何を勘違いしたのか『無料で全部もらえるキャンペーン』と捉えてしまい、ペンペン草も生えぬほどの略奪の限りを尽くされたのを思い出しました。いや、プラズマテレビとかはわかるけどさ、お風呂の椅子とか台所の三角コーナーまで持っていくって逆に嫌じゃないか水気があってさ。
本論に戻しましょう。試飲です。思いのほか美味しかった。ぶどうジュースのようにスルスルと喉の奥を通っていく。良い意味でボルドーっぽくないなと感じました。

ワインを知らない場合『メドック5級』とか言われると大したことないじゃん俺だって英検5級だぜ、的な笑い話となりかねないですが、とんでもない。格が付いているだけでもものすごく尊敬されることなのですねこの土地では。
ポンテカネでの試飲を終え、食事に向かう途中にも写真を撮るために有名どころを周ってくれます。こちらはラフィット。ラベルそのまんま。
コス。こちらもラベルの角度でパシャリ。映画のロケ地巡りをしているかのようである。
5級シャトーのランシュバージュが開発している街へ。過疎化を防ぐプロジェクトとして、色んなお店を誘致して頑張っているとのこと。ワイン関係の雑貨屋にパン屋、肉屋、自転車屋がありました。なぜ唐突に自転車屋?
せっかくなのでパン屋でボルドー名物カヌレを買う。赤ワインをづくりにおいて清澄という工程があり、卵白やゼラチンを用いてワインをクリアにするんですね。で、卵黄だけが余るので副産物としてカヌレもついでに作っちゃうのです。
ランチはランシュバージュ経営のブラッスリーへ。人気店で開店と共に満席。ガイドが事前に予約を入れておいてくれて助かりました。詳細はまた明日。

「ワインをめぐる冒険」シリーズ目次

このシリーズは間違いなく名著。一般的なガイドブックと全く観点が異なり、完璧にワインラヴァーを向いています。ワインがテーマのフランス旅行においては必携!


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