ハジメ/肥後橋

関西ミシュラン発表時にいきなり三ツ星で話題に。当時を知る関西のグルメ仲間からは「全く予約が取れない」と聞いていたので、しばらく放置。今年は二ツ星に陥落したことですし、もうそろそろ大丈夫だろうと一カ月前に連絡したところすんなり予約OKでした。

シェフは元リーマンで料理人に転身し、フランスでの修業後は洞爺湖のブラス。なんだか今風な経歴です。

席に着くと「写真はNGです」との注意書き。たまにこういうレストランあるけどなぜ?フラッシュとか音が鳴るカメラとかがNGなのはとてもよく理解できる。でも、コンパクトカメラで撮る分には誰にも迷惑はかからないと思うのですけれど。

メニューには海やら空やら地球やら、料理名ではなくコンセプトだけを示した単語の羅列。なんだかこの手法も今風。主要な素材だけを羅列して、食べ手の想像力を掻き立てるのが狙いなのかもしれませんが、「地球」に至っては100近くの素材が書かれており、しかもブラス出身ときたらガルグイユしかないでしょう。

最初にスッポンのラビオリを浮かべたコンソメスープ。説明を受けないとスッポンか何かは正直わからないと思います。一方でスープの味はどぎつく、あまり上品さを感じられず。

白子を揚げたものはマヨネーズ?みたいなソースの味が強烈。白子の味わいが完全に打ち消されている。

タイ料理屋ででるようなエビせんべいを極限まで薄くしたものに、小さな小さな甘エビをのせたもの。食べづらい。そしてこちらもマヨネーズ?みたいなソースがたっぷりで、ソースの味しかしません。

牡蠣にはヨーグルトソース。何度も何度も同じことを書いて恐縮ですが、ソースの味がキツ過ぎてもう無理。牡蠣の味が全然しません。

ムール貝は細かくカットしたキュウリやらラッキョウやらで、オリーブオイルでまとめあげ、イタリアンのような味わい。悪くないのですが、家庭料理の延長です。

ウニは美味しい。ただし、ポーションが小さい。さっきから文句ばっかりですねスミマセン。でも正直な感想なんです。

サバは適度な火入れで美味しかった。しかしながら周りに散りばめられているソースが美味しくない。八丁味噌のビスケットみたいなものが添えられていて、サバ味噌的なシャレは結構好き。ただ、そればっかしに意識が向かってしまい、肝心のサバが目立たない。

100種類近くの野菜やハーブを使用したサラダは、貝のダシでとったふわふわソースがのせられているものの、ブラスのガルグイユそのまんま。この葉っぱは何だ?この花は何だ?この根菜は?という具合に、色々と考えながら食べ進めていくので非常に頭を使う。食べ疲れました。

アンコウはめっちゃくちゃぶ美味しかったです。プッリプリの歯ごたえが堪らない。魚の味もきちんとする。タピオカに少しだけ着色してイクラっぽく見せるのも面白かった。

続いて手長海老、キャビアやセップ茸、蝦夷鮑など高級食材オールスターズの皿。これはバランバランになるんじゃないかと心配したのですが、大麦のリゾットによって全体がまとめられており、本日一番の素晴らしい皿となりました。

フォアグラはキンキンに冷やして少しだけ甘いパリパリで包まれていて、手づかみで食べる。ハーゲンダッツのクリスピーサンドに似た味わいですが、カセントのほうが上ですね。

肉の前に口直しで松のグラニテ。本当に松。クリスマスツリーを食べてるような気になりましたが、あれはモミだし、そもそもクリスマスツリーを食べたことがありません。

メインはエゾジカ。火入れは完璧。ソースも最高。抜群に美味しいお皿。黒トリュフがふんだんにまぶされていましたが、あまり香りが感じられなかったのがやや心残り。

「空(鴨、蕎麦、葉山葵、黄柚子)」とだけメニューに記載されており、「まさか鴨南蛮!?」とドキドキしていましたが、鴨を角切りにして火を通したものに、蕎麦で作られたドロドロした何かをぶっかけるという、鴨南蛮を再構築したような皿で楽しかったです。しかし美味しくはない。

自家製の、今まさにこの時に向かって熟成を進めていたチーズ。フレッシュでねっとりしていてミルクを感じることができる素晴らしいチーズです。柿のソースみたいなのをぶっかけられてすごく素材を邪魔された感があるのが残念。

パンは皿にあわせて4種を頂きましたがどれも印象に残らない。バターとオリーブオイル、青海苔のクリームあえ(?)みたいなものをつけて食べるのですが、青海苔が特徴的でお気に入り。

デセール1皿目は栗のアイスに栗の何か。悪くはありませんが、印象なし。

デセール2皿目はブラスのスペシャリテ、クーランへのオマージュなのでしょうか、バニラアイスを球体状に成形し、中の空洞にアツアツのイチゴを一気に流し込む。溶けるか溶けないかのギリギリで一気に食べきってしまう。慌ただしくはあるものの、非常に面白く、美味しいものでした。

デセール3皿目はハチミツのアイスにキンカン。キンカンは温かくねっとりとした味わいに仕上げられており、一口でビビビと旨みが伝わるものでした。お遊びでドンパッチ(口の中でパチパチ弾けるアメ)が入っています。

ミニャルディーズにはワタアメ、ポップコーンのブランマンジェ、紅茶のチョコ、唇形のグミ、抹茶のチョコ、リンゴ形のチョコ。ワタアメなんて食べるの超久しぶり。高校1年生の文化祭以来かもしれない。ポップコーンのブランマンジェは本当にポップコーンの味がする。面白い。ポップコーンってトウモロコシなはずなのに、とてもポップコーン独特の味が残されています。どうやって作るんだ。

総括。前衛的でどの皿もそれなりに美味しいのですが、どこかで食べたことがあるような皿ばかり。それでもなんとか差別化を試みて、イマイチなソースをぶっかけてせっかくの素材を台無しにしていることが多い。残念です。

一方で、サービスは完璧。練達のメートルがいるというわけではなく若者が頑張っているのですが、どれも心地よくスマートなサービスで気持ちの良い時間を過ごすことができました。

しかし、お会計で鼻血でそうになりました。むっちゃくっちゃたっけえええええええうごおおおお!!予想していたよりも倍ぐらい高いんですけどおおぅおおおなっしぃいいい!!

しかしその場ではポーカーフェイスでなんとか支払を乗り切りました。その後webページで確認したところ、年末年始特別メニューとやらでバブバブしてたらしいです。いやー、強気ですね。美味しいけれども、この値付けは全く納得がいきません。全然ダメ。半額だったとしてもまだ納得いかない。一見客が一回転したらもう終わりなんじゃないかなあ。
お土産に頂いたプリン。プリン自体は美味しいのですが、ワイン風味のソースが心の底からイマイチでした。お願いだから余計なことはしないで欲しい。ソース使いが下手すぎです。

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